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70話 楽園 30/33

 視線がストローの持っている謎の「何か」に集まる。


 「……これ、スポイトじゃないかな?」

 ストローがつぶやいた。


 「スポイト? ……って何?」

 聞いたことが無い名称に、メイシアが首を傾げた。


 「んと……、液体を取り出すための物だよ。ここの柔らかいところをつまんで液体を吸い上げるの。この大きさだと、本当に少量だよね……。」

 ストローが説明しながら、スポイトのゴム球の部分をつまんだ。


 「へぇー……。でもなんで?」

 「……さぁ?」


 「チャーも!チャーも触ってみたい!」

 チャルカが、ストローの手のひらに乗ったそれを見たくてジャンプした。


 「もー、チャルカはいいの。大人しくしてて。……でもコレ、今、トーラから出てきたんだよね?」

 オズから何も持ってこなかったのだ。


 もちろん、このスポイトだって、自分たちの持ち物でないことは確実だった。

 トーラから出てきたという考えようが無かった。


 という事は、トーラが今、事態を解決するためにはこれが必要だと判断した…… 奇跡だということになる。


 「うん……、オラ、スポイトなんて持ち歩いていないから、きっとそうだよね…… 」

 「液体を吸い出すものなんだろ?ここにそんな水とか、そーゆーのあるの?誰か、なんか持っているとか…… 」


 ウッジが周りを見渡した。


 面々が首を横に振った。


 その中にあって、メイシアだけが、とある方向を指さした。

 「水ならあそこに…… 」



 全員が、メイシアの指さす方に目を移した。

 そこには、二本の鍾乳石の下に配置された二個の水瓶があった。


 「メイシアさん……、あれはシキヨダユルとアマダユルの壺。あの中に溜まった聖水は、薬にも毒にもなるのです。私たち清明シーミーでも、むやみに触る事、覗き込むことすら禁止されています。触らない方が……、」


 「いや、マチュンさぁ。」

 マタラの言葉をユウナが遮った。


 「メイシアグワァ。……確かにそうさぁ。よーく考えたら、それしか手はないねぇ。ウンジュは、その着物チンの下に、デージ不思議イーフなーお守りを持っているさぁ。さっき、ウンジュのマブイを探していた時に気が付いたさぁ。」

 メイシアが、達成の鍵をぎゅっと握った。


 どうしてだか、秘密にしていないといけないような気になっていたからだ。

 恐る恐る、肯定の返事をする。


 「……はい、」


 「ワーには、それが一体何かはわからない。ヤシガ、そんなに力のある特別なものを持っているイナグングヮ。そーそー他にはいない。ウンジュなら、きっと、あのミジ使チカユン事が出来る。カマディが特別だとユン イナグングヮ。アンヤクトゥ、確かにアランないさぁ。メイシアグワァはフームチやっさぁ。」


 「フームチ……?」


 「運を持っている人って感じかな?……そうだね、うん。きっとそうだよ、メイシア! メイシアは幸運を持っているんだよ。だから、その力でオバアを助けて!お願い!」

 ナギィが、メイシアの手を握った。


 「うん、ナギィ。……私が幸運を持っているかどうかはわからないけど、でも、絶対におばあちゃんを助ける!待っててね。」

 メイシアもナギィの手を握り返した。


 「ユウナさん、私、どうしたらいいんですか?どうしたらおばあちゃんを助けられるんですか?助けられるんだっら、どんなことでもします!」


 ユウナは、じっとメイシアの瞳を見つめた。


 「……あの瓶の中の聖水を一滴、額に落とせばいい。」


 「え?それだけ?」

 「それだけやさ。ヤシガ、それだけでは無いよ。それからは、誰もウンジュを助けることができない。そこから、自分で切り抜けないといけないよ。」


 「…… 何が起こるんですか?」

 ユウナが、強張るメイシアの肩をさすった。


 「なぁに、脅かしてワッサイビーン。ワーにも、そこからはわからんさぁ。そこからは、御水ウビを使える者にしかわからない事。残念ながら、ワーはそっち側の役目の者では無かったという事やっさー。」


 「ユウナさん、それって危険なん事なんじゃないの? メイシアは大丈夫なの?」

 ナギィが不安げにユウナに問う。


 「ナギィ、大丈夫。私、何となくだけど、こういう事に慣れているの。変な言い方だけど…… 自信あるよ。へへへ、」

 メイシアがヘラヘラっと笑って見せた。


 そんなメイシアを見つめながら、ナギィは決意した。


 「ユウナさん、ワーもする!」

 「え!だ、大丈夫だよ、私一人で!」


 「ダメ。ユクシムニー。顔に書いてある!」

 「ゆ、ゆくし……?」


 「ねぇ、いいでしょ、ユウナさん。もしユウナさんがダメって言ってもワーは、絶対そうする!」

 「……仕方ないねぇ。本当は、ナギィにはカマディがするつもりだったのだろうけれど、仕方ないさぁ。ナギィもきっとあっち側の者。二人で行って来るさぁ。」


 「そうと決まったら、さぁ、早くしよう! ごめん、貸してね。」

 ナギィが、ストローの手からスポイトを取った。


 そして、水瓶のあるところにメイシアを引っ張って歩き出す。

 「ちょっと、ナギィ……!」




 「あっち側とか、そっち側とか、行って来るとか……、一体なんなんだろうね、ストロー。」

 ウッジが、ストローに声をかけるが、ストローは考え事をしているのか聞こえていない様子だった。


 「もー、ストロー、聞こえてるの?」

 「あぁ、うん。ごめん。なんか、嫌な予感しかしないんだけど…… 本当に大丈夫なんだろうか?」


 「なんでそう思うんだよ。」

 「…… 何かが、引っかかって、」


 「あ、行かなきゃ!メイシアたち、寝転んでるよ。始まっちゃう! 早く行こ!」

 「チャーも、行く!」


 ウッジとチャルカが、水瓶のあるところまで駆け出した。

 ストローも、モヤモヤする思考を中断させて、走り出した。






デージ / とても

イナグングヮ / 女の子

ウンジュ / あなた

ヤシガ / しかし

アンヤクトゥ / そうだから

アラン / 違う

ワッサイビーン / ごめんなさい

ユクシムニー / 嘘を言っている、それは嘘だろう

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