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69話 楽園 29/33

 「チビラーサン!チムドンドンねぇ!ほんと、ネーネーたちには驚かされてばかりやっさぁ!」

 ユウナが目を真ん丸にした。


 何が起こったのか、一番混乱しているのはストローだった。


 アレハンドラから、初めてトーラを渡されたあの時も、実際には使い方も知らないままで、そして、自分でも何が起こったのか理解できないまま使用していた。

 今、目の当たりにした、何もない場所から簡単には取りに行けない場所にあるはずのトーラが出現するなんて現象。言い換えれば「奇跡」だ。

 ストローは、トーラが生み出す奇跡を目の当たりにしたのは、初めてといってもいい。


 なんだかんだと、みんながトーラには不思議な力が宿ると言ってはいたが、信じ切れていない部分も多少はあったのだ。

 【大切にすべき本】くらいのカテゴライズだったことは、否めない。


 ストローはソーラの言葉を思い出していた。


 『肯定的な出来事に対して否定的な感情を持っておると、奇跡は起こらなくなるぞ。』


 都合のいいところで、都合よく起こり、都合よく幕引きをする「奇跡」を眉唾物だと思っていた節がどこかにあって、それをきっと見透かされての言葉だった。


 しかし今「奇跡」を体験し、ソーラの言葉の温度を感じ取れたような気がした。


 (今まで、メリーや、ローニーさんの戦車や、死神や、太陽の神の光の柱だって、ウッジの力だって、メイシアの達成の鍵だって、全部奇跡だったのに、オラは何を見ていたんだろう…… )


 「ストロー、すごい! どうやってトーラを呼び寄せたの……?って今は、それはいいわ。早くペンタクルのあの時みたいに、本を開いて何か道具を出してよ!」

 メイシアが、トーラを見ながら物思いにふけるストローの腕を掴んでゆすった。


 「あ、ああ、うん。やってみる。」


 今、ストローは何かがわかりかけていた。

 世界の道理のようなもの。

 今なら、何かできそうな気がすると、ストローは思った。


 あの時、ペンタクルの神殿の上でトーラを使った時。あの時、どうやって使っただろう? と思い出す。


 「……あれ?これってどうやって使うんだっけ?」


 「もー!しっかりしろよ、ストロー!」

 ウッジが不満げにつっこむが、仕方がないのだ。


 なんたって、あの時は、ストローの意識して起こした奇跡ではないのだから。

 無意識だったのだ。記憶すらない。


 ウッジとストローが口げんかになったのを、メイシアが止めに入った時に、達成の鍵が光った。そして、その光がストローを無意識にさせたのだ。

 しかしそんな事、誰も、本人すらきちんと覚えてはいない。



 「ストロー、とりあえず、パラパラーっとトーラをめくってみたら?この前は、その本が開いて、中から弓と矢が出てきたんだから…… 」

 メイシアが、握りこぶしを作って必死に助言をする。


 「そ、そうだね、」

 ストローが言われとおり、パラパラとトーラをめくってみる。


 ──── ペラペラペラ……パカ。


 ……もう一度。


 ──── パタッ、パタッ、ペラペラペラ……パカ。



 「………。」


 何も起こらない。

 本がめくれる乾いた音が、あたりに小さく響くだけだった。


 「なんで?なんで、何も起こってくれないの?」

 ストローは焦った。


 今、ここにいる全員が、これしか方法はないと思っているのだ。

 希望はこれだけだと、期待されているのに、何も起こらない。


 「なんで?もしかしたオラが正しい心の持ち主じゃないから?ねぇ、お願いだから、何か出してよ!カマディさんを助けたいんだよ!」

 ストローがたまたま開いていたページに向かって、悲痛に訴えた。


 その時。

 その開いていたページがふわっと光った。



 「ぅわっ!」


 驚いたストローが、トーラを落としそうになった。


 ストローの手からバランスを崩したトーラだったが、なんとか落下させることなく手の中にとどまった。

 しかし、何かが地面に落ちた。


 ──── コトッ


 軽い、地面との接地音。

 地面には柔らかい草が生えていて、音がほとんど鳴らない。


 「高サンネーネー、ウトゥシムン。」

 森榮がそれを拾い、ストローに渡した。


 手のひらにすっぽりと入る大きさのものだ。


 細長い形状をしている。


 「あ、ありがと。」

 ストローが握った手のひらを開いた。


 「ストロー見せて。」

 メイシアを初め、その場にいた面々が、ストローの手のひらを覗き込んだ。


 「…………?」

 「なんだ、コレ。」


 覗き込んだ面々が首をひねった。











チビラーサン / びっくりした 素晴らしい

チムドンドン / 胸がどきどき

ウトゥシムン / 落とし物

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