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19話 魚釣島の清明 9/16

 島の小さな入り江に入ると、山の中腹の生い茂った緑の中に、巨石が二枚支え合うようにそびえ立っているのが見えた。


 「メイシア、もうすぐだよ。船酔フニユい……気分悪くなってない?」

 「うん。大丈夫だよ。……。」

 ナギィが、大丈夫と言いながら遠くを見つめるメイシアの目線を追った。


 「あ、あれ? 」

 「うん。大きな岩だね。」


 「あれは、御嶽ウタキさぁ。」

 「ウタキ……?」


 「お祈りをする場所。オバア達が、一生懸命祈っているんだよ。」

 「何のお祈りをしているの?」


 「それは、赤星島アカブシジマのね、……あっ!」

 急にナギィが何かを見つけたようだ。


 「どうしたの?」

 「オバアがいる!迎えにきてくれたんだ!……おーーーい!オバア、来たよーーーーー!」


 ナギィの視線の先を見ると、小さいながらも何艘なんそうか停泊している船着き場があり、そこに一人の老婆が立っていた。


 「オバアーーーーー!」

 さっきまで静かだった森榮しんえいも、その姿を見たとたん大声を出し、しきりに手を振り始めた。


 「あの人が……」


 「そうさぁ!私達ワッターのオバア。オバアは不思議な力を持っていて、きっとワーがここに来るのもわかっていたんだよ。メイシアが十六夜の日に、やって来るって言うのも教えてくれていたの。」

 「私が……?」


 「うん。この前、オバアが御嶽ウタキに戻る前にね、十六夜イザヨイに……十六夜っていうのは満月の次の夜のことなんだけど……その夜に、大切なお客様が海に現れるって。だから、その夜は海辺をくまなく探しなさいって。信じていなかったわけじゃないけど、半信半疑で海に行ったら、メイシアを見つけたの。オバア、すごいよね!」


 そんな話をしている間に、船は桟橋に付いた。


 「森榮、なに、ぼんやりして(トゥルバイカーバイ)チナ投げて! 」

 慌てて森榮が船首に移動し、床に転がっていたロープを老婆に投げた。

 老婆はそれを受け取ると、手慣れた手つきで係船柱けいせんちゅうにかけた。


 「よぉ来たさぁ。ナギィ、森榮。」

 そういうと、老婆は船首にいる森榮に手を伸ばした。


 「オバア、ワンが来るの知ってたさぁ?」

 森榮は嬉しそうにそういいながら、老婆の手をとって桟橋に飛び移った。


 「そうさぁ。ちゃーんと、わかってたさぁ。」

 「オバア、すっげぇ!」


 「……ウンジュが、十六夜の君ねぇ。」

 老婆がメイシアを見据えた。


 一瞬鋭い視線に感じたのだが、すぐに優しい目に変わり、メイシアに手を伸ばした。

 「ワシはカマディ。この子供達ワラビンチャーのオバアさぁ。こっちに渡れるかい?」


 メイシアは、カマディーの手を掴み、昨日の二の舞にならぬよう、一気に桟橋に飛び移っった。

 「ありがとうございます。……はじめまして。私はメイシアと言います。」


 「これは、ナギィがちょっと前まで着ていたかすりだね。メイシア、似合っているさぁ。」

 カマディはにこにこと、メイシアを見た。


 「ちょっと、オバア。ちょっと前って言っても、もう何年も前のことさぁ。」

 と少し笑いながら、ナギィも桟橋へ飛び移った。


 「そうだったかね、もうワシくらいの歳になると、時が流れるのなんてあっという間さぁ。はははは」


 カマディと名乗った老婆の装束は、ナギィや森榮とは少し違っていた。

 上に羽織った白い丈が長めの着物の中は、これまた白い着物と下は青色の袴。

 首から勾玉をさげ、頭に幅の広いハチマキを巻き、額まですっぽりと覆っている。

 そしてそのハチマキの上から、何かの植物の葉で編んだ冠をしていた。


 「森榮なんて、先月産まれたようなもんさぁ。ははははは」

 「もぉ、オバア、ワンはもう赤坊アカングヮじゃないさぁ!」

 森榮が、カマディの袖を引っ張った。


 「おーおー、そうじゃったな。すまんすまん。」

 そういって、カマディは森榮の頭を撫で、森榮が可愛くて仕方がないというような表情になった。


 「さぁさ、ここで長話もなんだから、ヤーに行こうかね。」






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