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9話 十六夜の島 9/10

 「ちょっと待ってください……?国王の次席ということは、国王の次に偉いって事でしょ?ということは……王子……さま、なんですか?」

 ストローが、考えがまとまらないのか混乱して、誰に質問をしているのかよくわからない疑問を漏らした。


 「いやいや、天加那志ティンヂャナシにはご子息はいらっしゃらない。自分はしがない田舎侍だ。

 そもそも親軍おやいくさというものは、世襲制ではないのでな。

 たまたまえにしあって自分にお役目が回って来ただけの事。

 自分の息子も田舎で、のんきにヤナワラバーをしておるし。」


 あっけらかんと、話す海榮かいえいに思っていたほど緊張しなくても大丈夫なのでは……?と胸を降ろしかけた時、すかさずチルーが補足をした。


 「そんなご謙遜を。

 ……皆さま、海榮さまはこのように申しておいでですが、この赤星島あかぶしじまが平和なのは海榮さまのご尽力の賜物でございます。

 海榮さまは親軍でも在らせられますが、同時に司官でも在らせられます。

 摂政シッシーが不在の現状において、司官はこの島のまつりごとを行う最高位でございます。

 この島で暮らす天加那志のご加護の頂く民は皆、海榮親軍さまをご敬愛申し上げております。」


 チルーの説明に海榮が、困ったなぁ、という顔をした。


 「はぁ……つまり、王様の次にめちゃくちゃ偉い人って事、ですよね?」

 ストローとウッジが考えれば考えるほど結論のゴールが、会話をしてはいけない身分の人と口をきいてしまっているのではないかと向かってしまう。


 「そんなに恐縮しないでくれ。……まぁ、厄介ごとを押し付けられているだけだ。そうなったのも、本当にたまたまなんだ。中身はいたって田舎のオヤジだ。」

 海榮は苦笑いをした。


 「ところで、赤星島には一体どのような用件でいらっしゃったのか。昨晩、ストロー殿からは人を仲間を探していると伺ったが……」

 話題を変えるためか、海榮が切り出す。


 「そうだった!メイシア!ちょっと、ストロー青ざめてないでちゃんと説明してよ!」

 魂の抜けたストローの肩をウッジが揺らした。


 「でも……オラ、こんな偉い人と口を利けるほど学もないし……」

 「何言ってんの、今まで領主さまだとか神さまだとか……ロードさまにだってちゃんと会話してきたじゃない、何を今さらっ」

 なんとなく、それは聞かれてはまずいのかもしれないと小声になってしまう。


 「あぁ……そうだったね……」とストローが少し自分を取り戻したように頷いた。


 「か、海榮……さま、」


 「ほらー! チルーが自分を神輿に乗せるようなことを吹き込むからぁ……。ストロー殿、海榮でもオヤジでも何でも好きなように呼んでくれよ。」

 海榮は、ちょっと寂しそうに笑った。


 「いやいや、呼び捨てなんて無理ですよっ!……じゃぁ、海榮さんで……。」

 「オヤジとか、オヤジ殿とかでも良いのだぞ……」


 「無理です。海榮さんでお願いします。」

 「ストロー殿は、結構頑固者なんだの。」

 海榮が拗ねたような口ぶりでこそっとチルーに告げ愚痴っぽくつぶやいた。


 全く小声にはなっていないので、それを聞いたウッジがフフッと笑った。


 「どうせオラは、学もない頑固者です。……って、それは、どうでも良いんです。本題ですが……どこから話せばいいのか、躊躇してしますが、取り急ぎ解決したいのは、昨日お話した行方不明の女の子の件です。一緒に旅をしていたのですが、ここに向かう船から落ちてしまい、はぐれてしまったのです。」


 「ちょっと待って!船から落ちたって、初耳なんだけど!ストロー、どうして、その時すぐに……」

 「あぁ、ごめん、オラ目覚めた時、気が動転して、ちゃんと説明できていなかったね。」


 「船から落ちたという事は、まだそのメイシア殿は海を漂っている可能性が?」

 船から転落と聞いて、さすがの海榮も顔色に焦りがでいる。


 「……。理解していただくのがとても難しいのですが、オラたちが乗ってきた船は、多分……ですが、海を行く船ではないのです。」

 

 正しい事を話しているのだが、口に出しながらそんな事ありえないよなぁ、と思う。

 海榮の顔にも「?」と浮かび上がっていた。

 

 「海に浮かぶ船でないとすれば、一体どのような?そんなものが存在するのか?」

 「はい。オラたちは、ある使命を受け、虹の国からロードさまの力によってここへ遣わされたのです。ですので、おそらくはその船は空を行く船。」


 「なんと……。空を行く船があるというだけでもお伽噺の様なのに、虹の国からの使者であると……?容易には信じがたい話ではあるが……」

 海榮が、組んでいた腕をほどくと、顎のあたりに手をやり少し考えるようなしぐさをした。


 「真実なんです!……でも、オラたちには、何も証明するものが……」

 海榮の表情が曇り、ストローもウッジも心で焦りだした。


 もしここにメイシアが居たのなら、達成の鍵を見せることができたのかもしれない。

 それで少しは信用を勝ち得たのかもしれない。

 しかし、そのメイシアはここにはいない。


 それどころか、虹の国から持ち出したものも一つも無い。

 どうやったら、自分たちの経験してきたことが本当の事だと信じてもらえるのか、その術がないのだ。


 「……。」


 「話は最後まで聞くものだぞ、ストロー殿。確かに、信じがたい話ではあるが、自分は一度貴殿らを信じると決めたのだ。だから、信じる!自分で出来ることなら、力になろう。」


 「本当ですか!海榮さん、ありがとうございます!」

 「よかったね、ストロー!」



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