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第53話 chairman

 ◆


 夏休みが終わって2学期が始まったある日の昼のこと。


「桃子、ちょっと放課後時間ある? 手伝ってほしいことがあるんだけど……」


 午前中の授業が終わって解放的な雰囲気になった教室で桃子に話しかけてきたのはクラスの学級委員長だった。普段から桃子と一緒に昼ご飯を食べる仲である学級委員長はどうしても手に負えないことがあるようで、猫の手ならぬ桃子の手を借りにやってきた。


「――いいわよ。どうせまた私以外に頼める人がいないんでしょ?」


「大当たり。いつもいつもゴメンね、今回はちょっと大掛かりになりそうでさ……」


 学級委員長は申し訳なさそうに手を合わせて桃子を拝んだ。桃子の言う通りこの会話の流れというのは今に始まったことではなく、入学当初からこんな感じである。

 出会いは高校に入ってすぐ、単純に同じクラスの隣の席になったというだけの理由で2人は仲良くなった。あまり他人と馴れ合うことを好まず普段からひとりでいることが多い桃子なのだが、この学級委員長だけは馬が合うのかおおよそ親友と呼べる間柄になっている。


「大掛かりって……、またあんたは面倒事に首でも突っ込んだの?懲りないわねえ」


「面倒事なんてとんでもない。ただの学園祭の実行委員だよ」


「それが面倒事じゃなくて何だって言うのよ。――まあいいわ、そんなの今に始まった事じゃないし」


「ありがとう桃子、 やっぱり持つべきものは親友だね!」


 学級委員長は屈託のない笑顔を浮かべると、それを見た桃子はやれやれと言う感じで半分呆れたような反応をする。しかしながら桃子には嫌がる素振りなど全くなく、むしろ心地よさすら感じているようだった。


「それで?具体的に何の仕事を押し付けられたわけ?」


「ふふふ……、実はねぇ……」


 大きな声では話せない内容なのか、学級委員長はニヤニヤしながら桃子に耳打ちした。すると、その内容を聴いた桃子は少し表情が引き締まった。


「――とまあ、こんな感じなんだよね」


「……なかなか面白そうなことをやるじゃない」


「でしょ?結構うちの学園も思い切ったことをやってくれるなって思ったんだよね。――それで、桃子にもぜひ協力してほしいなって」


 桃子は喜んで首を縦に振った。普段なら学級委員の事務仕事や雑用を頼まれることばかりなので、今回の学園祭の実行委員の仕事は新鮮味がある。しかも、学級委員長の言うことが本当ならばそれはそれは面白いイベントになるだろうと桃子は確信しているだけに、既にうずうずする気持ちを止められないでいた。


「じゃあ、今日の放課後お願いね。一応ジャージに着替えておいた方がいいかもだからそこんとこよろしく」


「わかったわ。それじゃあまた後で」


 学級委員長は昼休みもなにかしらやることがあるのか、桃子が軽く手を振って見送るなりまたどこかへ行ってしまった。忙しくしている学級委員長は大変なのだろうなと思っているが、その忙しいところがどこか楽しそうにも見えて桃子は少し頬が緩んだ。

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