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みんなに感謝しちゃいます!
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明くる朝、オレは王都メアルマーニの南門にきている。ちなみに、この王都は北門か南門しかない。すでに、イルム達は来ており、そこには昨日はいなかった20代くらいの男性の騎士がもう1人いた。
彼はヨーナスといって、モンジュラ領の騎士の1人だ。ルドルフと懇意にしていて、今回の旅に同行してもらえるように頼まれたらしい。そして、話を聞くとルドルフは元はモンジュラの騎士団長であったが、辺境伯にお願いされ執事へと転職した。
その時のことを話すルドルフは、作法を覚えるのが大変でしたと笑っていた。ヨーナスとも自己紹介を終えてオレ達は、アクトアリーズン迷宮へ向けて歩き出した。アクトアリーズン迷宮は、王都から歩いて1時間程の距離にある。
1時間といってもこの世界に時計はないので、オレ基準なわけだが・・・。
道中オレ達は、お互いアクトアリーズン迷宮について調べたことを教え合った。イルム達は主に魔物について調べていたらしい。アクトアリーズン迷宮は、現在38階まで確認されていて、階層主は15階のジェイクスパイダーしかいない。その為、迷宮攻略を進めようにも15階から始める為、思うように攻略が進まないのが現状だ。ただ、40階層に階層主か迷宮主がいるのではないかと言われている。
そんな事を話しているとアクトアリーズン迷宮の入り口が見えてきた。その入り口は小さな神殿のようなものが建っていて、その前に見張りが2人いる。オレ達はそこへ近づくと、迷宮へ入る為に身分を証明するものを求められた。イルム達は貴族の家紋を見せ、オレは組合員証を見せる。すると、見張りがオレの年齢表記を見て驚きの声をあげ、それに反応したイルム達3人もオレの年齢を見て驚く。
特にイルムは、父より年上・・・と放心するほどだった。
そんな一幕があり、オレ達は無事にアクトアリーズン迷宮へと入ることができた。
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アクトアリーズン迷宮は石のレンガを天井や壁に積み上げたような作りになっていて、罠が配置されているうえ迷路のようになっている。そして、途中には開けた場所がいくつもあり、その場所には必ず魔物が配置されている。
とはいえ、その開けた場所の魔物は、先に誰かが倒していれば再度魔物が配置されるまで時間があるので、何もいなかったりするわけだが。
「じゃあ、オレが先頭を行かせていただきますね」
「はい。よろしくお願いします」
オレはイルムに話しかけると彼女が返事をしてくれる。そして、オレは空属性の新たに開発した魔法を発動する。オレを中心に魔素を放ち丸いボールのような空間をつくり、この空間に入ったものがわかるというものだ。
ふふ、オレはこれを【把握】と名付けたよ。
生活魔法(極)の風系統だと、罠の感知ができないので新たに魔法を作ったのだ。これならば空間内の詳細がわかるので罠の感知もできるというわけだ。ただ、アクトアリーズン迷宮の1階に罠はないのだが・・・。
オレがしばらく先頭を歩いていると、魔物の存在を感知したので、イルム達へ声をかける。
「前から魔物がきます。数は2匹」
その声にイルム達は即座に戦闘態勢を取り、イルムがオレに返事をする。
「私達に行かせてもらえますか?」
「わかりました」
オレはイルム達に道を譲り壁際へ体をずらした。すると、奥からジュフィーラットというデブネズミが2匹前後に並んでやってきた。即座にイルム達が迎撃のために動き出す。イルム達の装備は3人とも鎧を着込んでおり、イルムはショートソード、ルドルフとヨーナスがロングソードを持っている。
まずは、イルムが真向斬りで最初のジュフィーラットを真っ二つにする。すかさず、ルドルフがイルムの前で剣を構え、ヨーナスがもう1匹のジュフィーラットへ右下からの切り上げの一撃を加える。ヨーナスが切ったジュフィーラットはまだ息があったので、ルドルフが前にでて止めをさした。
ほどなくして、ジュフィーラット達は黒い煙となって後には魔石が残ったので、それをイルムが拾ってオレに渡してくれた。
「どうも」
「私達はどうでしたか?」
「さすがモンジュラ領で魔物の討伐をしていただけありますね。お三方の連携の練度も高かったです」
オレの言葉を聞いて満更でもない顔をするイルム。
「では、進んでいきましょうか」
オレは再び先頭に立って歩き出す。ちなみに、オレが先導しているが、イルム達が15階までの地図を買ってくれていたので、その指示通りに歩いている。地図には下の階段までの道が描かれているが、罠の位置は一定の時間が経つと再配置されるため地図には載っていない。その為、斥候の役割が重要となる。
しかしまあ、迷路に魔物、罠と普通に考えたら、この迷宮は難易度が高い迷宮と言えるだろう。それを長い棒でつついて行こうとしていたイルムの考え方には狂気を感じるな。というのも、迷宮に入る前の話だが。
「そういえば、イルム様。この迷宮には罠もありますけど、どうやって進むつもりだったんですか?」
「長い棒か何かでつつきながら歩けばいいじゃないですか」
オレはその一言を聞いて絶句してしまい、思わずルドルフの顔を見てしまう。すると、ルドルフは哀愁を漂わせながら笑った。
「貴方も苦労してるんだな・・・」
「察していただけますか・・・」
オレの一言を聞いて、ん?と笑顔で首を可愛く傾げるイルムだった。
その後は問題なく1階を進み、2階への階段へたどり着くのだった。




