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これはこれは、またお会いしましたな。

よろしければ、ごゆるりと過ごしてくだされば幸い。

では、9話を始めましょう。


久しぶりの王都である。相変わらず人が多く街は(にぎ)わっている。オレは、一先(ひとま)ず宿をとってから学院へと足を運んだ。まあ、一応王都に来たわけだし、シャノワールの様子を見ようかと思う。以前、ニーナが持ってきくれたシャノワールからの手紙には、少し困っている様子が書かれていたので話くらいは聞いてみるつもりだ。


というわけで、学院の門まで来てみたが、アポなしで時間もお昼を過ぎているので、今日いきなり会えはしないだろうから、まずはシャノワールの予定を聞くとしよう。


「ちょっとすいません。少し、いいですか?」


オレは門の見張りの人へ話しかけると、見張りの人はオレを上から下まで見てから声をだす。


「何のようだ?」


オレは冒険者の格好をしているので、少し警戒されているようだな。まあ、貴族の子女(しじょ)が通う場所だし、これくらいは当然か。


「以前、ここで臨時の講師をしたことがありまして、その時にシャノワールという先生と懇意(こんい)になったんです。先日、彼女から手紙をもらったので、王都まで来たついでに話をしておきたいと思いましてね。約束はしてないんですが、シャノワール先生をここまで呼んでもらうことはできますか?」


「確認する、少し待ってろ」


見張りの人はそう言うと、もう1人いた見張りと何かを話してから建物へ入っていった。しばらくしてから見張りの人が戻ってくると、中に入っていいそうなので、シャノワールの部屋まで行くことにした。


オレが言うのも何だが、この学院のセキュリティはこれでいいのだろうか・・・?オレにはわからない魔道具か何かで監視してるとかなのかな。


オレは前にも来たシャノワールの部屋の前まで来ると扉をノックした。


「どうぞ」


入室の許可が出たので部屋の中に入ると、長く伸びた黒髪で右目を隠し、頭に猫耳を生やした女性がいた。


「すまないな、突然来てしまって」


「いえ、ちょっと驚きましたけど、今日は授業も終わって時間があったので問題ありませんよ」


そう言ったシャノワールの表情は笑顔で、黒い尻尾が大きくゆーらゆーらと動いているので、社交辞令というわけではなさそうだ。


「それはよかったよ。それと久しぶり」


「はい。お久しぶりです」


オレ達は再会の挨拶を交わすと、シャノワールがお茶を用意してくれるということで、ソファーに座りゆっくりすることにした。




シャノワールがお茶を入れてくれたので、オレはお茶受けにクッキーを出してあげた。


そろそろクッキー以外のお菓子を作るべきか・・・。ケーキが食べたいなあ。


クッキーの存在はニーナからの手紙で知っていたらしく、一口食べると目をキラキラさせて夢中で食べ始めたのでそれを微笑(ほほえ)ましい気持ちで眺めていた。少しして、オレに見られているのに気づいたシャノワールは(ほほ)を赤くして(うつむ)いてしまった。


うむ、美少女が頬を染めて俯く姿は(とうと)い。


シャノワールがお茶を飲んで落ち着いたところで、最近の様子を聞いた。オレからの手紙の内容の通りに説明したところ、あの日オレ達の授業を見ていた先生も擁護(ようご)してくれたらしく、一先ず鎮静化(ちんせいか)したと話してくれた。


「まあ、何かすまんね。オレのせいで面倒をかけたみたいで」


「いえ、元々お願いしたのはこちらですし、こちらこそ、すいませんでした」


何ともなしにお互い笑ってしまう。そこへ扉をノックする音が聞こえたので、シャノワールが返事をすると1人の少女が入ってきた。


「失礼します。課題を提出しにきました」


「はい。ありがとうございます。ロージーさん」


ロージーと呼ばれた女の子はウェーブがかった金髪で、オレが講師した時に水魔法で悩んでいた子だな。


ロージーはシャノワールにノートのようなものを渡すと、近くにいたオレに気づいた。


「あ、シュン先生!」


「先生はよしてくれ。オレはただの冒険者だよ」


オレはロージーの言葉に苦笑してしまう。


「いいえ。先生ですよ。シュン先生に魔法を見てもらってから私、ついに中級魔法を使えるようになったんです!」


「へえ、それはすごいじゃないか。よく頑張ったな」


先生など柄じゃないが、それでも子供が成長する姿は素晴らしいものだ。


「ありがとうございます。シュン先生は、どうしてこちらに?もしや、また講師にこられたんですか?」


ロージーが期待に満ちた目をしてオレの顔を覗き込む。


うむ、子供の期待を裏切るのは辛いが、今日はお茶を飲みにきただけなんだよな・・・。


「いや・・・、王都にくる用事があったんで、シャノワール先生に挨拶にきただけだよ」


「そうでしたか・・・」


ロージーがあからさまにしゅんとする。


「悪いな、期待させたみたいで」


「いえ、シュン先生もお忙しいですものね」


とはいえ、このまま帰るのも芸がないか・・・。


「シャノワール先生、演習場ってすぐに使えるかな?オレもこの後予定があるわけでもないし、せっかくだから生徒の成長を見せてもらいたいんだけど」


オレの言葉にパアッと笑顔の花を咲かすロージー。シャノワールがそれを(やわ)らかい笑顔で見つめながら教えてくれた。


「少し前から長期の休みに入る前の試験のため、授業はお昼前には終わっているので大丈夫ですよ」


「では、早速行きましょう!こっちです、シュン先生」


ロージーがはしゃぎながらオレの手を引っ張る。


「わかったから、落ち着いて」


オレはロージーに手を引かれつつもゆっくりと立ち上がる。


「私も行きます」


シャノワールも立ち上がって3人で演習場に歩いて行く。左にシャノワール、右にロージーと両手に花で通路を歩く。その際に、シャノワールが無意識なのか、尻尾をオレの足にスリスリとしてくる仕草が可愛い。


まあ、好きにさせておくか。モフモフが気持ちいいし・・・。


さてさて、どれだけ成長したか楽しみじゃないか。

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