第8話 エピローグ
これで8話の終わりでございます。
次は9話でお会いできれば幸い。
エピローグ
ギヨムが倒れた後、周りの見物人の盛り上がりが凄かった。主にエリスの変身とその強さに興奮していたようだ。そうして、またもや宴会が始まってしまったが、次の日に目を覚ました人々の記憶には、エリスの変身のことが抜け落ちており、ギヨムが暴れてたのでエリスが立ち向かって倒したということになっていた。どうやらエリスの変身にもオレの力が働いているようだ。
そのギヨムだがオレにのされたことは覚えているが、エリスと戦った記憶が無かった。どうやら、オレに気絶させられた日の夜に追放神から力をもらったが、力を持った後の記憶を失っているらしい。そして、気がついたギヨムは心を入れ替えたように、周りの人に対して高圧的な態度は取らず、謙虚な少年となっていた。
ウチのエリスさんは、追放神の力だけでなく邪な心も浄化したんだろうか・・・。
そして、ギヨムに傷つけれらた人達やセオもポーションによって回復し、今回の騒動は幕を閉じた。その騒動のあった次の日の朝、オレが顔を洗っているとアーティが声をかけてきた。
「シュンさん、昨日エリスさんの姿が変わったのって、シュンさんの力が関係してるんですか?」
オレはアーティの質問に一瞬呆けてしまう。
「アーティはエリスの変身について覚えているのか?村の人は覚えてないのに」
「はい、覚えてますよ。ただ、村の人がエリスさんの変身については何も言わないので、不思議に思ってましたけど、なるほど、皆は覚えてなかったんですね・・・」
以前、アーティには神の力を持っているという話をした時に、変身後の記憶が薄れて行くという話もしていた。今回はエリスが変身したのだがオレの力は働いていたので、アーティも忘れてるかと思ったがアーティは覚えていた。
となると、オレが変身した姿を見ても覚えてる可能性が高いな。
ということで、アーティにはエリスの変身について、オレが意図したわけではないけど、オレの力で変身できたと説明しておいた。その話を聞いたアーティが。
「なら、私もいつか変身できるかもしれませんね!!」
と、ワクワクしてオレに話してきたけど、その辺はよくわかりません!
それからなんやかんやと、いよいよクリオールの街へ帰る日となり、オレ達はエリス一家へ別れの挨拶をしていると、アイラがオレの首元にしがみつき、絶対離さないとくっついていた。
オレとしてはアイラにそこまで好かれる要因が思い付かず、何故ここまで懐かれているのかよくわからないので困惑するばかりだ。
「もう!いい加減にしなさい!!」
ザシャが強引にアイラを引き剥がすと、オレにだけ聞こえる声でアイラの呟きが聞こえた。
「玉の輿が・・・」
まさか・・・、これまでオレを嗅いでいたのは、金の匂いを嗅いでいたというのか・・・?いや、これ以上は深く考えないようにしよう・・・。
「それでは、お世話になりました」
「いや、こちらこそエリスと一緒にきてくれて嬉しかったよ。シュン殿も元気でな」
オレが挨拶をするとアヒムは笑顔で答えてくれる。その後、セオ、ザシャ、アイラへと別れの挨拶を済まし、オレとエリスとアーティはエリスの村を後にした。しばらくフーファットの森を歩いているとエリスがオレに話かけてきた。
「次は孫の顔が見たいって父が言ってましたよ」
「そのうちね」
オレがそういうとぷーっと頬を膨らますエリス。そんなエリスにオレはザシャとした魔石の話をする。
「話は変わるけど、エリスの家の裏にお風呂を作った時に使った魔石をどうするか聞いていい?ザシャさんはエリスに何とかしてもらうって言ってたけど、何か聞いてる?」
オレの言葉を聞いて固まるエリス。
「・・・・・・魔石ってクリオールではあまり手に入らないですよねー」
「まあ、魔石が出ても小さいものがばっかりだしな。オレが使った大きさのものだと余計に見ないよね」
エリスから冷や汗がダラダラと流れる。
「体で払うということで・・・」
「却下します」
オレが笑顔でエリスに宣言すると、アーティが会話に入ってきてオレに質問してきた。
「でも、クリオールで魔石なんて私もほとんど見た事ないですよ。それに魔石って街の魔道具店に優先的に売られるんですよね?」
「そうだよ。まあ、基本的に魔道具店くらいしか魔石なんて使わないしな。街の整備に使う分は王都から購入してたはずだし」
「じゃあ、どうするんですか?クリオールだといつまで経っても魔石が手に入らないんじゃ・・・?」
アーティが喋りつつ、チラッとエリスを見ると、エリスは口笛を吹く真似をしてヒューヒュー言っていた。
「まあ・・・、ザシャさんと話をしてる時からこうなる気はしてたよ。エリスが魔石を持ってるかなと思ったりしたけど、この様子だと持ってないな。ということで、オレはクリオールに戻らず、王都の近くにある迷宮で魔石を集めてきます」
「「ええーーー!!」」
オレの突然の提案に驚くエリスとアーティ。
「そんな!またシュンさんと離れちゃうじゃないですか!なら、私も行きます」
「エリスさんずるいですよ。なら私もついて行きます」
「エリスは休みが終わるし、アーティもいつまでもメルトを1人にしておけないだろ」
「「ブーブー」」
2人からブーイングが入るがオレは気にしない。
「なるべく早く帰るから、家で待っててくれ」
その後、2人を宥めつつ数日かけて王都につくと、2人をクリオールまでの乗合馬車の発着場で見送る。
「本当に一緒に帰らないんですか?」
エリスがオレの目を見つめる。
「まあ、いつかは魔石を補充したいと思ってたから、今回は良い機会だよ」
「早く帰ってきてくださいね」
「わかってるよ」
そう言いながらオレはエリスを抱きしめた。少しして、エリスがオレから離れると、アーティはオレを心配をして声をかけてくる。
「シュンさん。危険なことしないでくださいね」
「ああ。アーティも依頼で油断しないようにな。ちゃんとポーションは常備するんだぞ」
「ふふ、まるでお父さんですね」
アーティが笑いながらオレに抱きついてきたので、オレはそれを抱きしめ返す。
「すぐ会えるよ」
「はい、待ってます」
オレはアーティから体を離すと、2人に声をかける。
「2人ともクリオールに着くまで気をつけてな」
「はい。シュンさんも気をつけてくださいね」
「王都で浮気しちゃダメですよ」
オレの言葉にエリス、アーティの順で返事をする。
「浮気なんてするか!」
最後までアーティはアーティだな。
「じゃあ、2人も気をつけて帰ってくれ」
そうしてエリス達を乗せた馬車は出発した。
ちなみに、王都に来るまでにエリスには久しぶりに肌着を奪われた。そして、アーティも便乗してオレの肌着をお守りだと言って奪っていた。
このあと服を買わないとな・・・。
オレはそんなことを思いながらふと空を見上げると、空はどこまでも青く、その青さを見ていると気持ちも落ち着き、オレはのんびりと王都の街並みを歩いていくのだった。
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