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本日も感謝であります!

17


「ぐふっぅ・・・・・・」


翌朝、オレは突然お腹に衝撃(しょうげき)を受けて目を覚ました。昨日はエリス()に泊まり、セオの部屋で寝ていた。


「おふ・・・、一体何が・・・?」


オレはお腹に何か乗っているのを感じて目を開けると、そこにミニエリスこと、アイラが乗っていた・・・。アイラはオレをじーっと見つめてたかと思うと、体をオレに密着させる。するとオレの首のあたりからスンスンという匂いを()ぐ音が聞こえてきた・・・。


オレはこの光景を知っている・・・。ほんと姉妹だよね・・・。


オレは寝たままの状態でアイラの(わき)に手を差し入れてアイラを引き剥がすと、アイラがむーっという顔しながらポツリと呟いた。


「おはよう」


「はい、おはよう」


オレは返事を返すと窓の外をみる。外はうっすらと明るくなってきている時間だ。


「・・・・・・」


オレが窓の外を見て無言でいるとアイラが何故ここにいるかを教えてくれた。


「朝だから起こしにきた」


「なるほど。ありがとう。・・・セオはいいのか?」


「お兄ちゃんは勝手に起きてくるから」


果たしてアイラはオレを起こしにきたのか、匂いを嗅ぎにきたのか?謎は謎のままだった。


「・・・まあいいか。ありがとうアイラちゃん」


オレはそう言うと、アイラを横にずらして布団からでた。そして、ちょうどいいので、そのまま朝の鍛錬(たんれん)をすることにした。場所は昨日お風呂を作った家の裏だ。風呂は全員が入ったあと生活魔法((きわみ))の土系統の力を使って更地(さらち)にしてある。


外にでて空気を吸うと森特有の匂いがする。オレはその匂いを堪能(たんのう)すると軽く体をほぐしてから歩法(ほほう)にて足運(あしはこ)びを確認する。体幹(たいかん)にブレはないか?無理な力は加わっていないか?そういったことを意識しながら歩く。


「すごい・・・、全然ブレない」


するとオレの頭の上から声がした。オレが外に出ようとしたらアイラがついてきて、オレの体をよじ登ってきたので肩車をしている。


「ちなみに、エリスとアーティは?」


「まだ寝てる・・・」


「ソウデスカ」


もう突っ込むのはやめよう・・・。


さて、久しぶりに武術の型を確認するか。


さすがにここからは激しい動きになるので、アイラを肩からおろす。その際に、アイラがオレの頭をがっしりと(つか)みいやいやと抵抗してきたが、強引に引き()がした。


その後、技能(ぎのう)武芸全般(ぶげいぜんぱん)】に従って正拳突きや崩拳(ほうけん)震脚(しんきゃく)や回し蹴りなど、今の気分によって技を繰り出しては、次は自分の意思でその動きをトレースする。しばらくそれを繰り返して、軽く汗をかいたら今日の鍛錬を終了した。


顔を洗い汗を拭くと、アイラが再び登ってこようとしたので小脇(こわき)に抱えて家に入った。アイラはそれが不満だったのか、ずっと手足をバタバタして無言の抗議を続けていた。


やめなさい・・・。スカートがめくれるでしょ・・・。



18


家に入るとザシャは起きて朝食の準備を始めていた。すると、オレに(かか)えられているアイラに気づき、アイラを(しか)った後オレに謝ってきたので、苦笑しつつ気にしないでくれと伝えて朝食の準備を手伝うことにする。


ほどなく他の面々(めんめん)が起きてきたので皆で朝食を食べていると、アヒムの弟こと現長(げんおさ)(つか)いという者がきて、エリスが村に帰ってきているということで、久々に親戚(しんせき)一同で会いたいと伝えてきたので一緒にお昼を食べることとなった。


「オレ達も一緒でいいんですか?」


現在はお昼だ。オレはアヒムに親戚の集まりなら、オレとアーティは同席しないほうがいいのではないかと思い質問してみた。


「はっはっは、構わんさ。それにシュン君達も、もう家族みたいなものだしな」


オレは一緒に歩くアーティをチラッと見てみると、アイラと仲良く手を(つな)いですごく嬉しそうな顔をしていた。そんな訳で昼食場所である(おさ)の家に着くと、金色の髪を伸ばした温和な感じの女性が出迎えてくれた。


叔母(おば)さん、お久しぶりです」


「ええ、エリスさん。お久しぶりね」


エリスと抱き合うエリスの叔母。ハグが終わり家の中へ案内されると、中にはアヒムの弟である長とその息子であるギヨム、そして隣にリゼットがいた。ギヨムは森で会ったとき同様にニヤニヤとしており、金髪のつり目だからヤンキーに見える。リゼットはギヨムの隣に座り茶色の髪を手櫛(てぐし)でときつつ、オレ達が席につくのを待っていた。


「リゼット、貴方も来てたのね」


「ええ、ギヨムの恋人だもの当然よね」


エリスがリゼットに少し(ふく)みのある言葉を言い方をするが、リゼットは勝ち(ほこ)った顔をしながらそれに答える。早くも2人の間に火花が散る。エリスは森での出来事についてまだ(くすぶ)ってるものがあるようだ。


エリスは結構負けん気が強いからな・・・。


「はいはい、せっかくエリスさんが帰ってきたんだから、皆仲良くね」


と、エリスの叔母さんによってエリスとリゼットも一旦落ち着き、昼食をとることになった。話の内容はエリスが村を出てからの話や、ギヨムが次の(おさ)になるだろうといった話。とはいえ、ギヨムは強さこそあるものの、まだまだ学ぶべくことが多く長になるのは当分先のようだ。


しかし、長である父親から自分が未来の長になる話をされ、ギヨムは調子に乗っている。


「ま、オレに任せとけばこの村は大丈夫だぜ」


「さすがギヨムね」


リゼットがギヨムをヨイショしてイチャイチャしだす。


オレは今、何を見せられてるんだろうな・・・。


リゼットのヨイショでさらに調子に乗ったギヨムが、エリスにニヤニヤと笑いながら話しかけた。


「エリスもそんな弱そうな人族の男なんてやめて俺のところにくるか?」


「ちょっとお!私がいるじゃない!」


ギヨムの突然の発言にリゼットが憤慨(ふんがい)する。


「怒るなって。もちろんお前が1番大事だぜ。けど、このままだとエリスが可哀想(かわいそう)だからよ」


ニコッとリゼットに対して笑いかけるギヨム。


「もう・・・、ギヨム優しすぎ」


なんだこのアホな会話・・・。


一方で、オレのことを馬鹿にされたのが頭にきたのか、エリスが顔に青筋を浮かべながらギヨムへ返事をする。


「お断りね。それに昔は私の後ろに隠れてたギヨムがずいぶん強気なことを言うようになったわね」


「っは、そんな昔のことは覚えてねえよ」


エリスの言葉に少し眉をしかめるギヨム。


「それに、森でのことをどう思ったのか知らないけど、ギヨムなんかシュンさんの足元にも及ばないわよ。だから、私の心配なんてしなくても結構よ」


さすがにこの発言はスルーできなかったのか、今度はギヨムが顔に青筋を浮かべる。すると、アヒムが変なことを言い出した。


「ほお、そいつは面白そうだな。なら、外で軽く戦ってみたらどうだ?」


アヒムの言葉を聞いてギヨムが笑い出した。


「あーっはっはっは。森でオレの攻撃に一歩も動けなかったコイツとか?おもしれえ、いいぜ。やってやろうじゃねえか」


と、オレの意見はガン無視で話が進み、オレ達は外にでて対峙(たいじ)することになった。そして、いつのまにか周りにギャラリーが集まりだしていた。


「頑張ってギヨム」


リゼットがギヨムに声をかけて頬に口づけをすると、周りからひゅーひゅーと声がする。


対するエリスは満面の笑みでオレに声をかけてくれる。


「シュンさん。ギヨムを完膚無(かんぷな)きまでにボロボロにしてやってくださいね!」


怖いよ・・・。一応、君の従兄弟でしょ?


「ま、まあ・・・やるだけやってみるよ」


何をどうするとは言ってない。


「おい!そこの人族!頭を下げて命乞(いのちご)いするなら止めてやってもいいぞ?」


と、ギヨムが笑いながらオレに叫んできた。


「あー、そういうのはいいから、来るならさっさとしてくれ」


オレは首をコキコキと左右に振りながら返事をする。それを見たギヨムが舐められてると思ったのか、笑った顔から一変(いっぺん)して獰猛(どうもう)にオレを(にら)んだ。


「てめえ・・・、死んだわ・・・」


そう言うとギヨムの姿が消えた。森でも見せた瞬足(しゅんそく)の動きだ。


この速さを目で追える人がこの場にどれだけいるだろうか?まあ、オレは普通に見えてるんだが・・・。


ギヨムはオレに(せま)りながら右拳(みぎこぶし)を振りかぶってきたので、右ストレートを放つ気だろう。ということで、オレは少し腰を落としてから体を(なな)めにし、右手を掌底(しょうてい)の形にすると、ギヨムの顔が近づいてくる動線(どうせん)に置きに行く。後は体をギヨムの右ストレートに当たらないようにすると、ほどなくしてギヨムからオレの掌底に当たりにきた。


すると、なんということでしょう。オレの掌底がギヨム君の顔に当たると、そこを軸にして彼の腰から足が空中に上がり、逆上がりを失敗したような形で後頭部から地面に倒れ込むと、自身が生み出したスピードによってざざざーと(すべ)っていくではありませんか。少ししてからギヨムはその動きを止め、白目を向きながら気絶していた。そして、周りは一瞬で勝負がついたことで状況についていけずシーンとしている。オレは構えを解くと、右手をプラプラしながらエリスの元へ戻った。


「ボロボロにしてないけど、こんなものでどうでしょうか?お嬢様?」


オレの声にハッとするエリスは体をプルプルさせてオレに抱きついてきた。


「もう!!逆に凄すぎですよ!かっこよすぎです」


そして、感極(かんきわ)まったのかオレの顔を両手で掴んで、無理やり唇を奪っていく。その時には、周りも状況が飲み込めたのか歓声が上がりだし、オレへの賛辞(さんじ)が飛び交うのだった。

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