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世界中にありがとうが降り注ぎますように!ありがとう!

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「さて、そこにいる2人はどうするんだ?」


オレがそう呼びかけると、少しして男の狐人(きつねびと)と女の狐人が姿を現した。


「へえ、人族(ひとぞく)にしてはやるじゃねか」


「久しぶりね、エリス」


男狐人(おとこきつねびと)が先に(しゃべ)り、続いて女狐人がエリスの名を呼んだ。


「ギヨムにリゼットじゃない・・・。私達を(おそ)うなんてどういうつもり?」


エリスがギヨムと呼んだほうが男の狐人で、金色の髪を伸ばして後ろで(くく)っている。目がつり目で、野性味を感じさせた。リゼットと呼ばれたのは女狐人で、茶髪で髪は長く、前髪を4:6でわけており両頬を隠すくらい長い。後ろ髪も肩甲骨(けんこうこつ)くらいまで伸ばしていた。


しかし、ギヨムと言ったか、さっきのオレの戦闘を見て人族にしてはやると言うのは、自分の強さによっぽど自信があるのか・・・?あるいは、先ほど倒した4人は狐人族の中で最弱とでもいうのだろうか・・・。


オレが考え事をしていたら、ギヨムがエリスの質問に答えた。


「いやいや、あのエリスが男を連れてくるって聞いたもんだからよ。どれほどのもんか見ようと思ってな」


ギヨムはそう言うとくっくっくと笑った。


今、笑うとこあったかなあ?


「ま、エリスが選んだっていうからどれほどのものかと思ったけど、私のギヨムのようが全然上ね。ふふふ」


リゼットという女は(あざけ)るように笑う。明らかにエリスに対して敵意を持っているように感じた。


「あの2人はエリスの知り合い?」


「そうですね。ギヨムは私の従兄弟です。リゼットは昔はよく一緒に遊んだ仲だったんですけどね・・・」


リゼットに対しては言い淀むエリス。エリスの言葉を聞いて、リゼットはエリスを(にら)みながら口を開いた。


「はん!そうだね!!一緒に遊んだ男どもはいつもアンタのことをちやほやしてたから、さぞ楽しかっただろうね。私らはアンタのオマケさ」


「私はそんなつもりはなかったわ」


「アンタはそう思ってても周りはそう思ってなかったわ。・・・だから、アンタが村を出たときはせいせいしたわ」


おばあちゃんが言っていた。こういう時は男がしゃしゃるとややこしくなるって。だからオレは空気になるのさ・・・。


「そう・・・。だからなに?腹いせに私達を襲ったの?だとしたら許さないわよ・・・?」


エリスから圧が高まる。


「まあ、落ち着けよ。そんなつもりじゃねえよ。リゼットのことは関係ねえ。当時、里の天才って言われてたエリスが連れてきた男の強さを知りたかっただけさ」


ギヨムはニヤつきながら喋ると突然目の前から消える。その速度にエリスは反応できない。そして、次に現れたときには、オレの目の前に(こぶし)寸止(すんど)めした状態だった。


(・・・早い)


エリスは冷や汗が流れるのを感じながらギヨムを見つめていた。


「とまあ、単なる挨拶さ。まあ、他の連中をけしかけたのは悪かったよ。こいつらはエリスのことが好きだったやつらさ。人族の男なんぞにエリスを取られたって(わめ)いてたからよ。だったら見に行けばいいって誘っただけさ」


そう言いながらくっくっくと笑い、リゼットの元へ戻っていった。ギヨムの強さを見てエリスが険しい顔したのを見たリゼットは、気分がよくなったのか口に笑みを浮かべながらエリスに話しかけた。


「ふふ、ギヨムは次期狐人族(きつねびとぞく)の長になる男なの。エリスもあまり調子にのらないほうがいいわよ」


「リゼットその辺にしとけ。村に戻るぞ」


「わかったわ、ギヨム」


語尾にハートがつきそうな甘い声を出しながらリゼットはギヨムと腕を組んで去っていった。


おい・・・、この男狐人の4人はどうすんだよ・・・?


「はあー・・・・。何がなんだかわかりませんでした・・・」


緊張していたのか、アーティが肩から力を抜いて声を出した。


「すいません・・・。私のせいで2人に迷惑をかけてしまいました」


エリスが耳をしゅんとさせて謝ってくるので、オレはエリスの頭に手を置いて優しく声をかけた。


「気にしなくていいさ。オレは何があってもエリスの味方だし、迷惑なんていくらでもかければいいさ」


「シュンさん・・・」


そういうとエリスはオレの首に抱きついてきて、匂いを()いでいく。


今回に関しては、これでエリスが落ち着くなら甘んじて受けよう・・・。


アーティもエリスを気遣(きづか)って見守ってくれている。


とはいえ、そこで苦しんでいる4人を放置するのも可哀想なので、アーティにポーションを4つ渡して振りかけるようにお願いした。エリスも落ち着きを取り戻してオレから離れると、回復した4人がオレに謝罪をしてきた。オレも容赦なくボコしたのもあって気にしなくていいと言っておいた。


4人はオレに謝るとそそくさと村へ戻っていき、オレとアーティ、エリスは3人でのんびりと村まで歩いて行くことにした。その道すがらアーティがギヨムの動きについて話してきた。


「それにしてもギヨムって人、すごい早かったですね。動きが目で追えませんでした」


「そうね・・・。私が村にいたときよりも確実に強くなってたわ」


エリスもギヨムの動きに思うところがあったのか、アーティの言葉に少し険しい顔をする。そんな2人の会話を聞きつつ、オレはのんびりと歩いていく。


2人には悪いがオレにはギヨムの動きが見えていたので、寸止めするということもわかっていた為、特に避けようとはしなかった。しかし、少年漫画のようなノリで話す2人に水を差すようなことをするのも大人気(おとなげ)ないし、強くなりたいと思えたならギヨムの存在も無駄ではないと思う・・・。


オレはそう思いながら目を細めて空を見上げた。木々の間から見える空は青く、とても綺麗だ。


あー、今日も天気がよくて気持ちいいなー。


と、現実逃避をする横でエリスとアーティが、クリオールに戻ったらオレにどうやって鍛えてもらおうかという話をしていたので、オレは聞こえないフリをするのだった。

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