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いつも読んでいただいて謝謝。


オレ達が合流してからは問題なく進んでいた。


まあ、オレが生活魔法((きわみ))の風系統(かぜけいとう)の力を使って索敵(さくてき)しつつ、遠くでこっちを狙っている魔物がいたらアーティに頼んで、矢で仕留(しと)めてもらっていたわけだが。そうして進んでいるうちに日が暮れてきて、そろそろ野営にしようと騎士達が言うので、こちらもわかったと返事をして野営の準備をする。その時にふと気になったことを騎士に聞いてみた。


「フーゴ様は食事や寝る時はどうするんだ?」


「フーゴ様は基本的には馬車の中で過ごす。食事は専属のメイドがいるので外で軽いご飯を作って馬車へもっていくはずだ」


「なるほど。じゃあ、オレ達は自由にさせてもらってよさそうだな。明日の出発はどうするんだ?」


「明日は、明るくなったら出発する。その方が危険が少ないからな」


「わかった。じゃあ、それまでには準備をしておくから、出発する時には声をかけてくれ」


「ああ、頼んだ」


という会話を済ましてエリスとアーティの元へ戻る。騎士からは特に何も言われなかったので好きにさせてもらおう。


「ただいま」


「おかえりなさい」


オレが戻るとエリスが笑顔で迎えてくれる。そこへ魔物避(まものよ)けを設置してくれたアーティも戻ってくる。


「おかえり。魔物除けの設置ありがとうな」


「ただいまです。シュンさん」


オレはアーティにお礼を言うと野営の準備を始める。


「さ、テントを()るか」


「「待ってください」」


おお、綺麗なハーモニー。エリスとアーティのユニゾンが聞こえてきた。


「ん?どうかした?」


オレの問いにエリスが答える。


「いえ、何テントを張ろうとしてるんですか。いつものヤツを作ってください」


「いや、他の人もいるし・・・、あまり目立つ行動は・・・」


「何を言ってるんですか?この前の依頼の時に、自分用のベッド作ったり、皆の為にお手洗い作ったりしたってアダルさんから聞いてます。今更ですよね?」


オレの言い訳にアーティが即座に返事をした。


「へいへい、わかりましたよ」


というわけで、毎度お馴染(なじ)み(?)の箱家(はこいえ)を作る。今回は1階部分を寝る用に、お風呂とトイレを2階に作った。ちなみに排水に関しては、個別に生活魔法(極)の土系統の力で(くだ)を作り、外の地中深くへ流す仕組みだ。そして、いつもの(ごと)く突然できた建造物に(おどろ)く騎士達へ説明までしてワンセットだ。


では寝る場所まで作ったオレに対して2人が夜ご飯の用意をしてくれるのかと思ったが、どうやら日中、少し早めの移動速度に合わせていたため疲れすぎて早々にダウンしてしまった。


なんと軟弱(なんじゃく)な・・・。


しょうがないのでオレがご飯を作ることになった。ご飯の準備をしていると遠くでメイドさんがフーゴや騎士達のご飯の準備をしているのが見えた。しかし、ここは平原の為、かまどを作る石も少なく、水も限られた量しかないようで、料理をするのに四苦八苦(しくはっく)している。


オレは一旦自分の手を止めて、メイドさんの方へ歩いていった。


エリスとアーティは箱家(はこいえ)で横になっているので、多少ご飯が遅くても問題なかろうて。


「手伝おうか?」


オレはメイドさんへ声をかける。突然声をかけられたからか少しビクッとしてオレの方へ向くメイドさん。


「あ・・・、えと?」


「ああ、いきなり声をかけてすまない。見たところ、かまどの用意とか困ってそうだから、よければ手伝おうかと思ってな。迷惑か?」


オレの意図を理解したのかメイドさんは安堵(あんど)した表情をしてオレに返事をしてくれた。


「すいません。よければお願いできますか?」


「わかった。このあたりに作るよ」


オレはそう言うと生活魔法(極)の土系統の力で鍋を置く用のかまどをつくり、隣に壺を作って、水系統の力で水を溜めてやる。


「こんなもんかな。水は魔法で作ったものだから安心するといい。じゃあ、オレはこれで」


オレがメイドさんにそう言って去ろうとすると、彼女は笑顔でオレにお礼を言ってくれたので、オレはいい気分で自分の夜営場所に戻る。すると、そこには鬼が2人立っていた。


「あらあら、シュンさん。疲れている恋人を放っておいて、別の子に優しくしてあげてたようで」


エリスから笑顔だが言葉にできない圧を感じる・・・。


「私達が苦しんでるのに、自分はお楽しみですか?」


アーティも笑顔だが(ほほ)に青筋が見える。・・・ような気がする。


「お、落ち着け2人とも・・・。人助けだよ?見てたよね」


「もちろん。シュンさんのことを信じてますから、わかっていますけど。それはそれ、これはこれなんですよ」


というエリスのよくわからない理屈によって、オレは夕飯の後、エリスとアーティの足をマッサージさせられるのだった・・・。


()せぬ・・・。




そんな1日が終わり、2回目の野営の時に1人の騎士からフーゴがオレを呼んでいるという言われ、馬車のほうへ歩いていく。馬車につくと小窓が開きフーゴがオレに話しかけてきた。


「シュン殿、昨日はウチのメイドを助けてくれたみたいだね。ありがとう」


「いえ、大したことはしてませんよ」


オレはフーゴのお礼に対して無難(ぶなん)に返事をすると、フーゴは続けてオレに質問をしてきた。


「時に昨日シュン殿が魔法で作っていた箱のようなものだが、あれは作るのが難しいのかい?」


「激ムズですね」


オレは間髪いれずにフーゴに返事をする。


「そうか・・・」


オレの返事にフーゴは眉間(みけん)(しわ)をよせ考え込んでしまう。


「どうかしましたか?」


「いや、実は馬車には妹も乗っていてね。馬車の旅も長くなると色々と疲れも()まる。なので、シュン殿が作っていた箱のようなものを作ってもらえたら、少しは疲れもとれるかと思ってね」


むう・・・、自分の為でなく妹の為とは・・・。いいお兄ちゃんじゃないか。


「なるほど。その箱のようなものですが、作ろうと思えば複数作れますよ」


「本当かい!?できるなら今夜、我々用にも作ってもらえないだろうか?」


マ○オさんのような反応しながらフーゴがお願いをしてきたので、オレは快諾(かいだく)して箱家(はこいえ)を作ってあげた。貴族用ということでやや広めにして、1階は簡易なベッドや食事用のテーブルを作って、部屋の真ん中に男女を分ける仕切りを作成。2階はオレ達のと同じ様に、手洗いとお風呂を用意した。すると、そのお礼ということで、フーゴが夕食に誘ってくれたので、フーゴ達に作った箱家の中でエリス達も一緒に夕食を取ることにした。


箱家につくとメイドさんが出迎えてくれた。


「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」


メイドさんに案内されるとテーブルにはご飯が用意されており、そこにはもう1人フーゴと同じ青い目をして金髪のロングヘアーの女の子がいた。


「待っていたよシュン殿。それに、エリスさんにアーティさんだったよね。どうぞこちらへ」


「本日はお(まね)きいただきまして、ありがとうございます」


フーゴが立ち上がりオレ達に声をかけてきたので、代表してオレが返事をしてテーブルへ向かう。テーブルに近づくと、女の子が立ち上がり自己紹介をしてくれた。


「初めまして。私はエルゼ=ハンフリーと申します。野盗から助けていただいたにも関わらず、今日までお礼もせず申し訳ございません」


エルゼと名乗った女の子はカーテシーをしつつ謝罪してきたので、オレは顔を上げてもらおうと彼女に声をかける。


「エルゼ様、謝罪は不要ですよ。貴方の立場ならそれも()むを()ないでしょう。それに、こう言う時は謝罪よりも感謝のほうが相手は喜ぶものですよ」


オレはそういって柔らかく笑って言う。オレが笑いかけたことで安心したのか、エルゼは(ほほ)を少し染めつつ笑顔になる。


「はい、ありがとうございます」


それを見たエリスとアーティが左右からオレに肘打(ひじう)ちをしてきた。


「ごっ・・・ぐふ・・・。な、何を・・・」


「そういうところですよ」


エリスがニッコリと笑いながら言い、アーティはうんうんと(うなず)いている。


エリスは笑顔だがいつもの圧を感じるな・・・。


「ふふ、面白い方ですね」


「さてさて、妹の紹介も終わったし、夕食にしようじゃないか」


フーゴもエルゼも貴族だからといって、特に偉ぶることなく夕食の時間は(なご)やかに過ぎていく。話を聞くと、フーゴ兄妹はフーファットにいる貴族の舞踏会(ぶとうかい)(まね)かれているそうだ。それと、首都には人族も普通に暮らしていると教えてくれた。


へー、獣人国家だからといって獣人だけが住んでいるわけではないんだな。


その後はエルゼがエリスとアーティにオレとの()()めを聞き始めて、まあまあとか、きゃーとか言いながら、はしゃいでいた。


女性は恋話(こいばな)好きだねえ・・・。


などと考えながら夜は更けていったのだった。

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