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読んでくださってサンクス!


シャンプーとリンスを使ってから2人の髪はサラサラになった。アーティは髪の毛が長いのでよりそれがわかるが、エリスにも天使の輪ができていた。そんなわけで、早くも髪の毛がサラサラになる秘密を(あば)くべく受付嬢達が動き始めているらしい・・・。


ただ、そんな中エリスの引き継ぎが終わったので、オレ達はエリスの故郷へ出発することができた。まずは、王都まで馬車で行き、そこからは歩きだ。なぜなら獣人国は王都から南東にあるからだ。ということで、オレは馬車からクリオールの街が小さくなっていくのを見つめる。


っふ、あーばよー、とっ・・・・。じゃなくて、受付嬢達か。


「何を見てるんですか?」


オレの物思いに(ふけ)る姿をみていたエリスが話しかけてきた。


「いや、クリオールを見てただけだよ」


「そういえば、出発するぎりぎりまでリンカさんが一緒に行きたいって言ってましたよ。最後は涙目(なみだめ)になってて少し可哀想でした」


そういってエリスが申し訳なさそうな顔をする。リンカとエリスは冒険者組合でよく話しているらしい。リンカはオレがエリスと恋人ということを知り、エリスの事を姉さんと呼んでいる。それと、リンカの世代というか年齢くらいの冒険者にとってエリスは有名な冒険者だったらしく、『冷刃(れいじん)』という二つ名もあったそうだ。


「それじゃあ、今からでもリンカを誘う?」


「いえ、それはまた別の話です」


「ソウデスカ」


笑顔で返事をするエリスにオレは苦笑する。とはいえ、アーティがオレ達と一緒に獣人国へいく為、メルトはしばらく”槍水仙(やりすいせん)”と一緒に依頼をこなすことになった。ただ、アーティがいないと遠距離へ攻撃する役割がいなくなるので、それを人数でカバーする為にも、リンカには残ってもらったほうがいいと思ったのも事実だ。


「お兄ちゃんの為に色々考えてくれてありがとうございます」


「いや、いいさ」


アーティがオレにお礼を言うので、オレは笑顔で返事をした。


「ふふ、シュンさんのそういうところ好きですよ」


オレの返事を聞いてエリスが急にそんなことを言うので、オレは気恥(きは)ずかしくなって軽口(かるくち)を言ってしまう。


「『冷刃(れいじん)』にそう言ってもらえると光栄だな」


するとエリスは口は笑ってはいるが目を細めて口を開いた。


「シュンさん、次にそれを言ったらどうなるかわかりますよね?」


「はい・・・、すいません」


エリスから感じる圧にオレは素直に謝るのだった。エリスは『冷刃』と呼ばれるのを嫌っており、理由としてはその名で呼ばれるのが恥ずかしいからということだ。


これは、当時は格好いいと思ってたけど今になったら恥ずかしくなって、黒歴史となってしまったということかな・・・。今まで冒険者時代のことを話したがらなかったのって、これが原因なんだろうな・・・。


そんなやりとりをしつつ、馬車はのんびりと進んでいく。




王都で旅の物資の補充を済ましてから徒歩で獣人国家を目指す。王都を出てから数日ほど経っているが問題なく進み、(つち)の月(秋)である涼しい風を浴びながら歩くのは気持ちがいいものだ。


獣人国というのは正式な名称ではなくて、国としての名前はフーファットというそうだ。土地の真ん中に首都となる大きい街があり、そこがフーファットと呼ばれたことから、獣人国はフーファットと呼ばれることになったそうな。


3人でのんびり話しながら歩いていると、エリスが何か聞こえたというので、オレとアーティは足を止める。エリスは耳に手を当て音を詳しく探る。


「遠くで金属同士がぶつかる音がします。多分、人同士が戦っていますね」


「どうします?」


アーティがオレに聞いてくる。


「とりあえず近づいてみるか。エリス、方角はわかる?」


「はい、こっちです」


エリスを先頭にオレ達はその場所に向かってしばらく走ると、オレの目にも数人の男達が武器で戦っているのが見えた。その近くには馬車が1台止まっている。どうやら、馬車を(おそ)おうとする側と守る側で戦っているみたいだな。そして、装備がボロボロな者と鎧をきている者が数人倒れていた。


装備がボロボロのほうは野盗かね。


騎士は3人しかおらず野盗は8人ほど。装備に差はあるが人海戦術で何人かの騎士を倒したのだろう。あと騎士が馬車を守ってるってことは、おそらく貴族の馬車かな。そんなことを考えていたらエリスが速度を上げて走り出した。


「助けないと!先に行きます!!」


そうきたかあ・・・。まあ、そこがエリスのいいところか・・・。


「やれやれ・・・、オレも行くよ。アーティは悪いけどある程度近づいたら遠くから援護してくれるか?ただし、周囲に野盗の仲間や魔物がいなければだ。魔物がいる場合は援護せずこっちにきてくれ」


「わかりました」


アーティの返事を聞くとオレは剣を抜いて走る速度を上げた。エリスはすでに戦闘に入っており、騎士を背後から狙っていた野盗に攻撃を加えていた。さらに、エリスは(たく)みに動き回り、技能(ぎのう)の風属性を使い野盗をかく乱している。騎士達には説明済みなのか、エリスが助太刀(すけだち)していることを受け入れているようだった。


エリスは狐人族(きつねびとぞく)特有の身体能力を活かしつつ、ダガーで野盗の足を斬っていき相手の機動力を奪っていく。そして、動きが遅くなった野盗は騎士達によって(とど)めをさされていく。野盗も急な乱入者に戸惑(とまど)っていたが、そんなエリスを無視できないと2人の野盗がエリスに向かっていった。


エリスは向かってくる野盗の動きをよく見ながら攻撃を(かわ)し、ダガーで野盗の武器を持つ手を切り裂く。手を切られた野盗は持っていた剣を落とし痛みで(うずくま)り、それを見たもう1人の野盗は逆上してナイフでエリスを何回も攻撃してきた。エリスはそれをダガーで受けつつ後退すると、剣を落とした野盗が後ろからエリスの足を(つか)みエリスは体勢を崩してしまった。


そこへさっきの野盗がナイフをエリスの顔目掛けて振り下ろそうとするが、オレは背後から剣を振り、腕、そして首と順番に斬り飛ばす。それと同じタイミングで、エリスを掴んでいた野盗の頭に矢が1本突き刺さり、野盗はそのまま倒れていった。


オレは辺りを警戒するが残りの野盗は騎士達に倒されており、どうやら戦闘は終わりのようだ。オレは剣から血を飛ばすと(さや)へしまい、座り込んでいるエリスに手を伸ばす。


「無茶しすぎ・・・」


「ごめんなさい。けど、シュンさんなら私に合わせてくれると思ったので・・・」


オレは少し呆れた顔しながらエリスを起こすと、エリスは申し訳なさそうに謝りつつ、オレに抱きついてきた。


「それは、ずるい・・・」


全く・・・、怒るに怒れないじゃないか。


オレは左手でエリスを支えつつ、右手で軽くエリスの頭を叩く。


「次はこんな無茶をしないこと」


「はい」


オレに叱られたはずがエリスの顔は笑顔だった。そして、遠くからアーティがこちらへ向かってくるのをオレは眺めるのだった。

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