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ではでは、8話の始まりですん。
今回も皆様の暇つぶしの一助となればと思っておりますれば。
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魔物の大軍の依頼が終わり、クリオールの冒険者組合では、新たに”槍水仙”の4人が過ごすようになっていた。
最近ではリンカ達とメルト達が一緒に依頼を受けているのも見られる。ついでに、メルトとアリックス、ポリーナの3人が街で歩いているのもよく見かけた。
おやおや、メルト君も隅に置けないねぇ。今度詳しい話を聞かせて欲しいものだ。
そして今オレは地下室にて、大豆やてん菜、胡椒の畑を見て回っている。胡椒も無事に定植できたので一安心だ。ちなみに、この畑はオレがいない間、魔法生物のスライムさん達が水やりなどをしてくれている。もちろん、水などはオレが予め用意したものだ。
「あ、スライムさん。おつかれーっす」
オレが気安く声をかけると、スライムさんは、うにょっと指のような突起物を出して応えてくれる。
「どう?畑に異常とかない?」
オレの質問に体をフルフルと揺らして返事をする。フルフルと体を揺らすときは問題なしという合図だ。問題があれば触手のように体をオレに巻きつけて問題のある場所へ引っ張っていこうとする。
「あと家に人が増えて、分解してもらうものとか増えたけど、今の数で大丈夫?厳しいようなら兄弟を増やすけど?」
スライムさんは体をフルフルと揺らすので問題ないとのことだ。頼もしいな。
そんなわけでスライムさん達と語らいながらまったりと畑弄りをするのだった。
ちなみに、石鹸工場は問題なく可動しており、石鹸の供給は爆発的に増え、王都にも出荷できるようになり、他の街からクリオールまで買い付けにくる商人もいるほどの人気だ。
レインさんは石鹸販売や最近では砂糖を販売するようになり、近々王都に店を出せるようになったらしい。
いやあ、石鹸が売れれば売れるほどお金が入ってくるので笑いが止まりませんなあ。がはは。
畑の見回りが終わり、オレは趣味部屋で新シャンプーを作ろうと色々と実験をしていた。前まで東の森で見つけた植物性の油を使っていたが、質のいい石鹸ができたので、これを使って石鹸シャンプーを作ろうと思う。
まずは、石鹸をゴリゴリと細かくしてから、精製水こと生活魔法(極)を使った魔法水にスライムさん達の体液もとい、なんちゃって苛性ソーダを混ぜて薄めたものを細かくした石鹸と混ぜて放置しておく。とろみがでたところで、蜂蜜をいれた後、香りのいい香草のエキスを数滴垂らして完成だ。
今日のお風呂で試してみよう。しかし、これだと髪がきしきしとしてしまうかもしれないので、リンスも作ってみるか。
市場で買ってきたすっぱい食べ物を錬金用のツボにいれて酸っぱい成分だけ抽出してみる。
オレの予想ではクエン酸がとれるはず・・・。
ツボからポンと音がすると中には白い結晶が残っているので、これを取り出して魔法水と溶かしたら完成。
これも今日の風呂で試してみよう。うむ、新しいものを作るのはワクワクするよね。それを試すのもワクワクする。つまりワクワクさんだ。
オレは足取りも軽く地下室の階段を登り入り口から顔を出すと、上から入り口を見ていたアーティと目があった。
「っわ、シュンさん、地下にいたんですか・・・?」
「ああ、地下室の入り口が空いてる時は、大体オレが地下にいると思っていいぞ」
今日のアーティの服装はスカートだ。最近は我が家に来る頻度が増え、家では割とスカートだったりワンピースだったりと、ゆったりとした服装でくつろぐようになった。
そして、顔だけ入り口から出したオレの顔は、アーティの真下にあるわけで・・・。
ふむ、ピンクか・・・。いいね、おじさん嫌いじゃないよ。
「きゃっ!!見ちゃダメです!!」
オレの視線に気づいたアーティが慌ててオレを両手で突き飛ばした。
「天丼!!」
ここでいう天丼は食べ物じゃないぞ?お笑いで使われるほうだ。
オレは、何ともなしにそんなことを考えながら階段をころげ落ちていくのだった。
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夕食を3人で食べているとエリスがオレの姿を見て聞いてきた。
「シュンさん、何か服とかボロボロですけど、どうしたんですか?」
「いや、不幸な事故があっただけさ・・・」
オレは哀愁を漂わせて笑う。
「シュンさんが私の下着を覗くからです」
アーティさんがちょっとオコだった。
「わざとじゃなかったんだが・・・、悪かったよ」
まあ、悪いことをしたのは事実だしな・・・。
オレの態度にさすがに悪いと思ったのかアーティも態度を軟化させる。
とはいえ、オレは階段を突き落とされているんだが・・・。オレじゃなかったら大怪我してたぞ?
「いえ、私も思わずシュンさんを突き飛ばしてごめんなさい」
変な空気になりそうだったので、オレは話題を変えるべくエリスに休暇の件を聞くことにした。
「そういえば、エリスは組合を長期で休めそう?」
「今、調整してます。もう少ししたら休めそうですね。もし無理なら、もう組合を辞めてシュンさんに養ってもらいましょうかね?ふふ」
そんな冗談を言いながらオレに笑いかけるエリス。まあ、今や冒険者の仕事以外での収入が多くなりつつあるので、それも出来なくはない・・・。
「あ、ずるいです。ならシュンさん私も養ってくださいね」
エリスに便乗してそんなことをいうアーティ。
「はいはい。その時がきたらね。そっか、じゃあ休みが取れそうなら教えてくれ。エリスの故郷にいく準備をしないとな」
魔物の大軍への依頼に行く前にもエリスと話をしていたが、一度はエリスの両親に挨拶に行くべきかなと思い、旅行も兼ねて行こうということになった。
ただ、エリスの故郷のある国は獣人達の複合国家であり、クリオールからだと片道10日以上かかるので、エリスが行くとなると組合を長期で休むことになる。そのため、仕事の引継ぎなどをしている。
「楽しみですねー。私も獣人の国に行ったことがないので楽しみです」
ついでにアーティも一緒にいくことになっている。メルトはいいのかと聞いたら、最近はリンカ達と一緒に依頼をこなすことも多く、エスカテリーナが索敵できるので、アーティがいなくても問題ないそうだ。
そんな訳で3人で楽しく話しながら夕食を食べるのだった。




