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暑いと頭が働かない気がします。
アリガトウゴザイマス。
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寝て起きたら日は昇る。来て欲しくない明日だろうが、待ち遠しい朝だろうが時間は進んでいくものだ。朝日に照らされて見えるのは昨日と変わらない数の魔物の大軍。対してこちらは体力の回復しきっていない混成部隊。そして部隊の士気は低い。
それはそうだ、昨日倒した数の魔物が補充されとるしな・・・。
とはいえ、そのまま眺めているわけにもいかず、まずは魔法使い組の範囲魔法による攻撃が始まり、それを合図として魔物達が動き出した。その時、オレは追放神の気配が膨らむのを感じた。
これは昨日感知した奴が、範囲魔法で倒された魔物を補充しようとして何かしらの力を使ったんだろう。なるほど、ということは魔物を一気に削れば、それを補充しようとして力を使うので、それで位置を特定できそうだな。
冒険者達と騎士達が動き出した魔物へと向かっていくのに紛れつつ、オレは1人で魔物の群れに突っ込んだ。魔物はゴブリンとコボルトに加え、ウェアウルフも加っていたが、オレは気にせず剣を振るって次々に魔物の首をはねていく。ある程度混成部隊から離れると、オレは亜空間から赤に輝くコインを取り出した。
オレはコインを右手に持つと、左手を腰に添える。すると腰にベルトが現れる。そのベルトのバックル部分にあるプレートを右から左へスライドする。
スライドしたそこには、コインをはめる穴があり、そこへコインを挿入すると、今度はプレートを左から右へスライドする。その瞬間、プレート部分から無機質な声が流れる。
『フェニックスフォーム』
声が流れた瞬間に、赤く輝く半透明の火の鳥が表れる。そして、オレの足元を中心に直径2mの炎の柱が生まれ、あらゆる攻撃を防ぐ絶対領域が出来る。
その炎は周囲にいた魔物達を次々と焼いていく。
続いて、オレの体を魔法繊維で出来た黒いスーツが覆い、半透明の火の鳥がオレの全身を包みこむ。そして、腕には炎イメージしたグローブが出現し、足には2本の爪がついたブーツが現れる。腰には鳥の尾羽のように火の羽が連なった腰ローブが装着されると胸にはアーマーが、そして背中には赤い羽のように火を噴射する縦長の左右対となるパーツが生まれ、これにより上空を跳ぶことができる。最後に、顔に鳥の顔がマスクとなって被されば変身完了だ。
全てのアーマーが装着された瞬間に炎の柱は消え。赤に輝くアーマーを着たオレが現れる。
「さあ派手に暴れようじゃないか」
オレはそう呟くと手に火で出来た剣を作り、背中から火を噴射すると、その勢いを利用して高速移動を開始する。そうして次々と火の剣で魔物達を切り刻むと、切られた魔物達は瞬く間に炭化していく。あまりの速さに赤い線が伸びていくような軌跡を生む。
一気に殲滅したいところだが、まずは全体の把握だな。
オレは背中に炎の翼を出現させると空に飛び上がり、上から戦場を見てみる。すると正面、右側、左側の三方向から攻められてるのが見える。正面は☆2冒険者がいる為、持ち堪えているが、右と左が少し押されて気味のようだ。
一先ず、危ない人を救援するとしよう。
オレは騎士達が頑張っている右側へと向かうと、騎士達は指揮官らしき男性の声に従いながら懸命に戦っている。しかし、魔物の勢いは激しく、あちこちで声が聞こえてきた。
「弓隊は後ろにいる魔物へ矢を放ちつつ一定の距離を保て!」
「ぐわっ・・・」
「誰か!こっちに来て手を貸してくれー!!」
指揮に従っている騎士達だが、1人倒れるとそこから少しずつ崩され始めてしまう。そうして、倒れた仲間を助けるべく戦う仲間の騎士も、いよいよ魔物の猛攻に倒れようとしていた。
「っち・・・・ここまでか・・・」
その気持ちは諦めか、悔しさか騎士の男性は思わず舌打ちした。その男性へと魔物の攻撃が向かう瞬間、魔物は左右に分かれ炭化してその身を消滅させた。
「大丈夫か?」
オレはその騎士に問いかける。
「あ、ああ・・・、あんたは?」
「安心しろ。味方だ」
オレは騎士へ返事をすると他の危ない騎士達を救っていく。さらにある程度魔物を倒すと再び背中の翼を展開して空を飛び、今度は右側の冒険者を助けていった。
オレの介入によって、左右の混成部隊が一息つく時間ができる。オレはその間に上空へと上がり、火属性の範囲魔法を正面と左右の魔物達にしかける。
「【炎拡散華】」
オレはその魔法を3回使うと目の前に火の玉が3つ出現し、火の玉は正面、右、左へと1つずつ上空から下へ向かっていく。火の玉は魔物の群れに到達すると、その大きさを拡げていき周囲の魔物達を飲み込んでいく。それは一定の大きさになると弾けて火の花を咲かすと、飛び散った火がさらに魔物達を燃やしていった。
一度に大量の魔物が死んだことで補充の為に大規模な魔物召喚を行う為だろう、追放神の気配が3つ急激に膨れ上がる。
そこか・・・。
オレは空で3つの気配の位置を特定すると、ケリをつけるべく腕を交差させて全身に力を集中させる。すると体が赤くなり全身が炎となる。
「・・・・・・っふ!」
オレは交差させた腕を左右に広げると炎で出来たオレが3人になった。3人のオレは魔物達がいる正面、左、右のはるか後ろで魔物を補充しようとしている奴をロックオンすると無機質な声が流れる。
『ファイナルアタック』
3人のオレは三方向に分かれ上空から追放神の気配を放つ奴へ向かっていく。そしてオレ達は左足を引きながら右足をつきだすと右足へ炎が集まっていき、そのまま蹴りを食らわせる。
「はあああああああ!せいやーーーー!!」
蹴られた気配の元は3体とも後ろへ吹き飛ぶと爆散した。
爆発までが必殺技よ!!
追放神の気配が消えるのを確認すると、3人のうち2人のオレはその身を火の粉にして姿が消える。そして、オレはもう一度空へ上がると、冒険者組の後ろの方へと向かい、ある程度高度を下げてから変身を解除すると、右手と右膝を地面につき左足は膝立ちのような姿勢で着地する。
ヒーロー着地というやつだ。まあ、膝に悪いって赤いコスチュームを着た人が言ってたけどな・・・。
そういう訳で、その後は魔物が増えることはなく、大幅に減らされた魔物の大軍はあっという間に倒され、今回の依頼は終わったのだった。