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今日も読んでもらえているとは・・・、コレか・・・、コレこそが歓喜という感情か。
18
オレは意識を集中して生活魔法(極)の火系統の力を使い、正面にまっすぐ炎の渦を放ち、近づいてくる魔物達を焼きながら走り出した。
オレの後ろを着いてくるアダルさんとリンカへ声をかける。
「魔物の増援と衝突したら足を止めずに常に動きながら魔物を減らします。2人にはオレの動きに合わせてもらいます!」
「任せてくれ」
「へへ、了解さ」
アダルさん、リンカの順で返事がくる。そうしてオレ達は魔物の群れへと突入した。
目の前に見えるのはゴブリンとコボルトだ。身長の高低差があるので少しやりづらいな。
オレは先行して切り込む。まずは、剣を右下から左上に切り上げ、そのまま右下へ剣を振ることでゴブリン2匹を切り裂く。そのまま間を抜けてコボルトの胴体目掛けて袈裟斬りの1撃を与えると右へ体をずらして脇を抜ける。オレが傷つけたコボルトを後ろからきているリンカが止めを刺した。
脇を抜けたオレの前にはさらにコボルトがいる。オレは剣を下段に構えてコボルトの左足を切り飛ばすとコボルトは膝をついたので、その背中に自分の背中を合わせ、体を回転させつつそのコボルトを乗り越える。オレのいた場所に複数の回転した風の針が魔物達を撃ち抜いていった。アダルさんの技能、風魔法の風転針だ。
それを見たオレはある方法を閃き、剣の刃を水平にしてアダルさんの方へ向ける。
「アダルさん!!」
オレがアダルさんを呼ぶとアダルさんとオレは視線を交わす。そして、アダルさんはオレの体勢をみて察してくれたようだ。すぐさまオレの方へと走ってきて軽く跳ぶ。オレはアダルさんの足裏へ刃を移動させアダルさんを刃の腹に乗せると、そのままアダルさんを空中へ飛ばす。
「っふ!!」
空中で魔物の位置を確認したアダルさんは技能を使って魔物達へ攻撃を始める。
「【風転針】!!」
空中から次々と射出された風の針は次々とゴブリンやコボルト達を貫いていった。魔法を放ちながら落ちてくるアダルさんをオレはお姫様抱っこでキャッチすると、少し頬を染めたアダルさんが笑顔で口を開いた。
「ふふ、こういうのも悪くないね」
目ざとくそれを見ていたリンカは物凄くうらやましそうな顔をしていた。
そんな目で見るんじゃないよ・・・。
オレはアダルさんをおろしてからリンカのほうへ走り、リンカと共に魔物達を切っていく。
「なあ旦那?」
「なんだ?」
「アタイもさっきみたいなのやりたいな・・・」
「そうは言っても・・・、リンカの攻撃方法は・・・、剣だろう?近接なら無理だろ」
オレとリンカは話をしながらも魔物を倒していく。
「ちぇっ、残念だ!!」
リンカが目の前のコボルトを切るとそのすぐ後ろにはゴブリンが隠れていた。ゴブリンは、コボルトの死体を踏み台にしてリンカへ飛びかかるが、リンカは先ほどの攻撃で剣を下げた状態のため、上からの攻撃に対応できない。それを見たオレは自分の不壊の剣をゴブリンへ投げその頭に命中させる。
「リンカ!!」
オレがリンカの名を呼ぶと彼女がオレの方へ顔を向け、視線が合わさるとリンカは、すぐに手に持っていた不壊の剣をオレに投げてきたので、オレは剣の柄を右手で掴むと体を回転させて背後に迫っていたコボルトを切る。リンカはオレの投げた不壊の剣をゴブリンから抜き取って魔物を倒していった。
その後も3人で移動しながらも魔物を倒していくが、魔物の数が減っている感じがしない。オレはおかしいと思ったので、2人に声をかけて一旦下がることにした。
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時間はとっくに昼を超えており、他の騎士達や冒険者達の体力もかなり削られている。さらに、少しずつだが負傷者が増えていた。大半が弱い魔物とはいえ数が多すぎるため、どうしても攻撃をくらってしまうのだ。
オレと水分補給をしつつ干し肉をかじっていると、休憩を終えたリンカが話しかけてきた。
「なあ、旦那。さっきから魔物が減ってるように思えないだよな。これって変じゃないかい?」
「確かにな。どこからか増えてるような気がする」
「増えてるか・・・。確かに、そう考えるとしっくりくるけど、そんなことありえるのかね・・・」
どうだろうな。召喚魔法なんてものがあるのかはわからんが、少なくとも今日戦い始めた時に2千ほどの魔物がやってきたことを考えると、どこからか沸いていても不思議じゃないだろう。ただ、それが最初に2千という数を見せて、次はわからないくらいの数を補充しているのだとしたら、こっちは気づかないうちに体力を削られて終わりだな。
「とりあえず、今はなるべく体力を温存しながら戦うことにしよう」
「そうだね。それがいいね」
オレの言葉にリンカはそう返事をするのだった。
前線へと復帰したオレ達はさらに魔物を倒しつづけていたが、やはり魔物の数があまり減っていないように感じる。周りを見ると肩で息をしている冒険者が増え始めていた。
オレはまだまだ平気だが汗で服が張り付いて気持ち悪い・・・。
そして、もうすぐ日暮れという時間になると突然魔物達が引いていった。
「な、なんだ・・・?魔物達が引き下がっていく・・・?」
オレの近くにいた男性冒険者が呟く。魔物の大軍は第四陣からある程度離れると、そこで動きを止め待機する。その動きに他の冒険者達も不気味なものを感じつつ、ひとまずの戦闘の終わりに肩の力を抜いた。
その後、ロイ伯爵達は今日のことを話し合い、明日の作戦を考えていた。今のうちに範囲魔法を打ち込めばいいという話も出たが、それで魔物達が動き出したら、今度こそ数で押し切られてしまうだろう。それに、疲れ切った冒険者達が範囲魔法を使えるほど体力が残っていないことから、明日の朝、魔物が動き出す前に改めて範囲攻撃を打つことになった。
そして第四陣のあちこちで、魔物の数が減らない気がするという話がでていた。
正確にいうと減ってはいるが、減った分だけ増えているんだろうな。それにしても、日暮れになると魔物達が引いていったのが気になる・・・。まるで、ゲームでもしているような感じだ。
オレはそこでハッとする。そもそも魔物の大群が王都を目指していたのはなぜか?まあ、魔物が人を襲う理由なんて知らないんで、たまたま人が多そうな王都を目指していたのかもしれないが、もしかすると、オレが王都にいると思った追放神がこの大軍を寄越したのではなかろうか・・・。
オレは意識を集中して奴の気配がないかを探ってみた。すると奴の気配3つ感じた。しかし、その気配はものすごーく薄いものだった。ここからだと何となくしかわからないくらいだ。
追放神め・・・、小癪な真似をしよって・・・。こんな薄い気配なんてわかるわけないだろう。気配が3つということは、もしかすると、この気配の主が魔物を呼んでいたのかもしれないな。
とはいえ、追放神が絡んでるとなると話は変わるな・・・。やれやれ、だったらオレがやることは一つだな。
オレは明日のこと考えつつも、とりあえず体を休めるのだった。
評価していただいてありがとうございます。
大っぴらに書くのは主義ではありませんが、
やはり評価をいただけるのは、素直に嬉しいでふ。




