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前書きって難しいですね・・・。読んでくれてありがとう!
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朝日が上り、再び目的地を目指して歩き出すオレ達。一夜明けてみると他の冒険者達からやたらちやほやされる。主に女性冒険者に・・・。
どんな風にかと言うと。
「昨日の手洗い最高だったよ!」
「あれこそ女性の求めてたもの。是非あれを教えて欲しい」
「こんなに楽な野営初めてだった。ありがとう!」
などなど。さらに、男性冒険者達からも昨日の肉が美味かったと賞賛をいただいた。ちなみに、獣人達にも振る舞ってやったら、あのツンツンした犬耳が
「美味かった・・・。けど、これでエリスさんとの仲を認めたと思うんじゃないぞ!」
ツンなのかデレなのか、よくわからん反応をしていた。まあ、道中突っかかってこないなら別にいいか。
そうしてつつがなく第四陣の場所へ辿り着いた。ここには今回、全体の指揮をするロイ=カブリエ伯爵がいる。まずは、クリオールから到着したことを伝え、人員の配置を行うという話だ。
「クリオール冒険者組合、副組合長アダルです。クリオールから組合本部の要請で参りました」
アダルさんが凛とした声で挨拶をした。ちなみに、場所はロイ伯爵のいる天幕だ。まだ日が高いため、状況確認と今後の対策を考えていたようだ。
「うむ、よく来てくれた。参加に感謝する」
ロイ伯爵の天幕は布を天井に張っているだけのものなので、到着したオレ達を視界に収めることができた。
ロイ伯爵は俺たちにも感謝の言葉を告げ、現在の状況を説明してくれた。現在、部隊は第二陣で魔物を倒しつつ、第三陣へ後退しているらしい。魔物はおよそ4千ほどまで減っているとのことだ。そこで戦闘系の技能持ちや戦いに自信にある冒険者は第三陣へ向かって欲しいとのことだ。
オレ達は各自第三陣へ向かう組、第四陣にて補給部隊へ加わる組と別れようとした時、突然1人の騎士が天幕へ飛び込んできた。
「突然来て申し訳ない!緊急の用件のため、ロイ伯爵へ急ぎ取り次いでもらいたい」
その騎士は見た所30代後半くらいの男性だった。その騎士を見たロイ伯爵が口を開いた。
「何事だ!君はニコル子爵・・・。第三陣にいるはずだが、何故ここにいるのだ?」
「っは!第三陣は魔物の奇襲を受け、乱戦となり、魔物と騎士隊や冒険者が入り乱れておりまして・・・。私はこの状況を早く知らせねばならぬと思い、伯爵の元へ参じた次第であります」
ニコル子爵と呼ばれたおっさんは、汗をダラダラ流しながらロイ子爵へ説明している。ニコル子爵の説明を聞いたロイ伯爵は声を荒げて口を開いた。
「馬鹿者!!子爵がここに来てしまったら、誰が第三陣にて部隊の指揮をするのだ!」
ロイ伯爵に怒鳴られるとは思っていなかったのか、ニコル子爵は萎縮しつつ弁明をしようとする。
「し、しかし、誰かがこの事を伝えなければ最悪の結果になると思い・・・」
「それなら、部下に早馬で知らせればよかろう!指揮官のいない戦場では騎士達は力をだせぬ!さらに、第三陣にはほとんどの人員を置いていおる。第三陣が壊滅してはこの作戦そのものが破綻するぞ!」
「で、では、どうすればよかったというのですか!?伯爵はあの魔物の数を見ていないからそう言うのです。あの場にいれば誰も状況を伝えることができないと思い私が来たのです!」
ロイ伯爵の言葉に歯向かうニコル子爵。
客観的にみると、こいつは逃げてきたように見えるが・・・。
尚もロイ伯爵はニコル子爵へ言葉を告げる。
「ならば、救える人員を集め、撤退戦を行いつつ第四陣まで後退すべきであろう!指揮官が真っ先に戦場からいなくなるなどあってはならぬ!」
この言葉にさすがにニコル子爵は何も言えなくなる。とはいえ、この不毛な会話を聞いていては第三陣の人達が死んでしまうだろう。オレは、アダルさんに声をかける。
「アダルさん、いいですか?」
アダルさんも2人のやりとりを見ていたが、オレに声をかけられハッとするアダルさん。
「あ、ああ。どうしたんだい?」
「このままだと第三陣が大惨事ですよね?」
「・・・・・・ああ。ソウダネ」
何かアダルさんの声が若干冷たくなった気がする。ゾクゾクするぜ。
「というわけで、オレは第三陣に向かって救援に行こうと思います」
オレの言葉を聞いてアダルさんも真剣な表情になる。
「今から行って間に合うのかい?下手をすれば君も魔物の群れにやられてしまうかもしれない・・・」
「でも、今回の作戦は第三陣にて魔物を迎え打つのが作戦の肝だったはずです。このままだと何かもが駄目になります」
「それは・・・、そうだが」
悩むアダルさんに笑いながらオレは返事をする。
「大丈夫です。無理そうなら逃げますよ。んじゃ、行ってきます」
オレはこれ以上話す時間も惜しいと思い、第三陣のある方向へ駆け出そうとすると、ウルードが話しかけてきた。
「待ちな。あたしも行くよ。戦える人は多い方がいいだろ?」
「それはそうだが、オレはあんたに合わせるつもりはないぞ?」
「おうおう、言ってくれるねえ?まあいいさ、口だけじゃないとこを見せてもらおうじゃないか」
オレは口をへの字にしながらフーッと鼻から息を出す。
「・・・まあいいや。ついてこれるなら・・・・・・ついて来てみろ」
オレは足に力を込め一歩踏み出す。その瞬間、ドンという音が響き地面に足跡が残る。オレは一瞬で数メートル先へ体を移動させる。それを見たウルードは呆気にとられていたが、しばらくすると、すぐにオレの後を追って走り出した。しかし、オレに追いつくことはできないだろう。
オレはそれを気にすることなく、早く第三陣へ着くことだけを考えるのだった。
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第三陣の場所は混乱に満ちていた。指揮官のいない騎士達は襲いくる魔物になんとか抵抗するが、リーダーがいない為、いまいち連携がとれず打撃力に欠けていた。その為、少しずつ攻撃を受け、騎士達にも負傷者が出てくる。
冒険者達は、元々魔物に対して戦い慣れていることと、冒険者生活によって突発的なことへの対応力が鍛えられているため、騎士達よりは負傷者を出すことなく戦えていた。
その中に☆4パーティーである”槍水仙”のリンカ、アリックス、ポリーナ、エスカテリーナの4人はいた。王都に滞在していた為、この依頼にも参加することになったのだ。
襲いくる魔物は、ウェアウルフの大群。ウェアウルフは狼の顔を持つ人型の魔物だ。鋭利な爪を持ち脚力が強く速い。
その乱戦の中、リンカは細かい傷を付けながらウェアウルフ達を屠っていた。その傍にポリーナがおり、盾を持ちながらリンカや他のメンバーの死角を守っている。
「っく、こいつは数が多すぎじゃないかねえ・・・」
リンカは黒髪を振り乱しながら周りを確認する。
「リンカ!あまり離れすぎないで!回復魔法が届かないから」
アリックスはリンカに声をかける。彼女の金髪や犬耳の毛皮も乱戦の影響で汚れている。
「お姉ちゃんも下がって!エスカテリーナさん、私の後に!」
アリックスに似た顔立ちのポリーナは盾を構えながらエスカテリーナの前に立つ。
「わかったわ!ありがとう」
ダガーを手に、ポリーナにお礼を言うのは銀髪のエスカテリーナだった。
4人は固まって互いをカバーしつつウェアウルフの猛攻に耐えている。そして、少しずつウェアウルフを倒してはいるが、数が多すぎる為4人への傷が増えていく。
リンカは周りを見回しながら状況を確認する。
(・・・このままだと、全員やられちまうね・・・)
リンカは、最近アリックスがメルトという少年と出会い、気になるという話を聞いていた。自分もシュンという惚れた相手がいるので、その気持ちに共感している。
「アリックス、ポリーナ、エスカテリーナ!このままだとジリ貧だ!アタイが道を開く、そこから3人は助けを呼んできな!」
リンカはそういうと腕に力を込める。武闘大会でも見せた技能を使って技を出すようだ。
「リンカ!何を言ってるの!?ふざけないで!」
アリックスはリンカの言葉を聞いて憤慨する。
「へへ、別にふざけちゃいないさ。けど、冷静に考えて、このままだと全員あの世いきだろ?」
その言葉を聞いてアリックスは何も言えない。わかっているのだ、この魔物の数を見てリンカの言うことが正しいと。そしてリンカは言葉を続ける。
「アリックス、あんたメルトって奴が気になってるんだろ?けど、まだ気持ちも伝えてねえ。そんなんで死にきれるのかい?」
「だったら、リンカだってシュンさんと恋人になるんでしょ!?」
「ああ、そうさ。旦那の恋人になって旦那の子供を産む。それがアタイの人生の目標さ、その為に旦那に気持ちを伝えた。けど、アリックス、あんたはどうだい?まだ気持ちすら伝えてないんだろ?アタイは気持ちを伝えれた。たださ、旦那にはもういい人がいる。なら、アタイは気持ちを伝えれただけで満足さ。けど、アリックスあんたは違う、まだ始まってすらいない」
リンカの言葉をポリーナとエスカテリーナは黙って聞いていた。
「だからさ、アタイはアリックスを応援したいんだよ。別に自分の恋をないがしろにしてるわけじゃないさ。けど、想いも伝えれないなんて、辛すぎるじゃいか」
リンカはアリックスに話しかけながら腕に力を込めていく。
「ポリーナ、エスカテリーナ。アリックスを頼んだよ」
「何自分勝手なこと言ってるのリンカ!」
リンカの言葉に反発するアリックスだが、ポリーナもエスカテリーナも今の状況を見て、このままだと4人とも全滅することを理解している。いや、アリックスも頭では理解しているのだ。しかし、気持ちがそれを理解することを拒んでしまう。
そうして、リンカは準備を終え、渾身の一撃をウェアウルフの大群へ放つ。
リンカの一撃は衝撃波を産み、周囲のウェアウルフを吹き飛ばした。それは退路と呼ぶにふさわしい道を作る。そして、ポリーナはアリックスを抱え、エスカテリーナが先導してその道を進む。
「ちょっと!ポリーナ離して!!リンカ!!」
3人を見送るリンカ。先ほどの一撃でリンカの握力はなくなり手が震え剣を落とす。さらに、体の力が抜け膝をついてしまう。
(へへ・・・、アタイは最後によくやれたよな。アリックス、気持ちを伝えれないなんて、そんなスッキリしないことはしちゃいけないんだよ)
リンカに同族を倒され怒りを覚えたのか、ウェアウルフ達がリンカへ爪を振るおうと向かってくる。
(ああ・・・、くそ。旦那・・・。アタイは、旦那と一緒にいれたら何番目でもよかったんだぜ?こんないい女を振るなんて・・・、はは、後悔しても遅いよ。旦那?)
リンカは顔を俯かせながら視界が滲むのを感じる。
「旦那・・・、こんな最後は嫌だよ・・・」
リンカへとウェアウルフ達の爪が振り下ろされようとしていたが、その爪が振るわれることは永遠になかった。なぜなら、向かってくるウェアウルフ達は上半身と下半身が風の刃にて分かたれてしまったからだ。
そして、俯くリンカの前に影が落ち、リンカの頭を優しく手が撫でる。
「全く・・・、お前達はいつも魔物に襲われてるな」
そこへ私が来た!!
天丼というなかれ、オレは再び槍水仙の4人を助け、そして、笑顔でリンカに声をかけたのだった。




