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今日も読んでいただいてありがてぇ。


オレ達はアダルさんを先頭に階級の高い冒険者から列を作って歩いている。ただし、パーティーを組んでいない個人冒険者(こじんぼうけんしゃ)はひとまとめで一番後ろを歩いていた。


そして、現在オレの後ろをずっとヒヒヒと笑いながら歩いている女性冒険者がいる。正直怖いので後ろじゃなくて前を歩いて欲しい・・・。

格好が魔女の(ごと)き姿だ。黒のトンガリ帽子に黒のローブ、そして黒い髪色で目の下にクマがうっすらとできていて見た目も不気味だ・・・。


オレがチラッと見たのを目ざとく見つけた彼女はオレに話かけてきた。


「・・ヒ、ヒヒ、な、なんですか・・・?私を見て何かいやらしいことでも考えてるんですか・・・?(つぶ)しますよ・・・?」


潰す・・・?ナニを・・・?


「い、いや。いやらしいことは絶対に考えていない。そうじゃなくて、その・・・、笑い声が気になるというか・・・。悪いけど、前を歩いてくれないか?」


「ヒヒ・・・、そうやって私を後ろから、お、(おそ)うつもりですね・・・。その手には乗りません・・・。やっぱり男なんて皆ケダモノ・・・」


さすがにその一言には意義あり!だ。


「おい、オレにも選ぶ権利があるんだぞ?誰が誰を襲うって?冗談も休み休み言えよ?」


と、オレが言うといきなり、炎の玉がオレに飛んできたので、(しゅん)で横に飛んだ。


「とうっ!」


ダメージは負わないだろうが、服が燃えてしまう・・・。


「っち・・・、ヒヒ・・・。中々やりますね・・・」


「危ないだろうが!?何をする!」


「あ、貴方が失礼なことを言う・・・から・・・ヒヒ」


「先に失礼なこと言ったのはそっちだろうが!」


さすがに火の玉が飛んでいくのが見えたのか、アダルさんが前からこちらへやってくる。


「何事だい!?魔物が出たのか?」


しょうがないので、事のあらましを説明する。


「君たちは何をやってるんだ!遊びじゃないんだぞ?クロエ君も、魔法が他の人に当たったらどうするんだ?」


この女性冒険者はクロエというらしい。


「す、すいません・・・」


あ、さすがにそこは謝るんだ・・・。


「シュン君、君もだ。あまり彼女を刺激しないでくれたまえ。彼女も過去に色々とあってね・・・」


(なに)()に落ちないがオレはいい大人だからな。


「わかりました。(さわ)いだことについては謝罪します。すいませんでした」


「わかってくれたらいいよ。じゃあ、この件はこれで終わりだ。もう少ししたらお昼休憩にするから、後少し頑張って欲しい。では、私はまた前に戻るよ」


アダルさんは金髪なびかせて颯爽(さっそう)と歩いていった。その後、オレはクロエと距離をとって歩くことにした。


最初からこうすればよかったな・・・。




アダルさんがオレに言ったように、少し歩いてからお昼休憩となり、皆、街を出る前に配られた携帯食料を食べることになった。


携帯食料というが干し肉だ。しかも塩をケチってあるので、あまり美味しくないんだよな。


調理している時間もないので、せめてもの抵抗として生活魔法(極)の火系統の力を使って干し肉を(あぶ)ってから、スライスして塩胡椒(しおこしょう)を振って食べる。


うむ、これなら意外と食べれるな。炙ったことで(こう)ばしさも出て割と美味しい。ビールが飲みたいぞっと。


「なんだい、1人だけ美味(うま)そうに食べてるじゃないか」


ふと影ができ、女性の声が聞こえてきた。顔を上げると女性が立っていて、その体はガタイが良く引き締まっている。髪は赤く腰まであるが、所々外(ところどころそと)ハネしていてハリネズミのようだ。そして、ビキニアーマーを着ていた。


「・・・そんな装備で大丈夫か?」


思わず聞いてしまう。


「あん?ああ、これかい?あたしは鉄壁(てっぺき)っていう技能(ぎのう)があるから、下手な防具よりも体のほうが頑丈(がんじょう)でね。だから、装備は必要最低限でいいのさ」


「なるほど。豪胆(ごうたん)だな。それと、美味そうにっていうか、配られた干し肉をそのまま食べたら美味しくないから味付けしただけだ・・・」


「なるほど。確かにねアレは美味くないね」


女はそう言いながら笑う。


「あたしは、☆3パーティー”石蕗(つわぶき)”のリーダーやってるウルードっていうんだ。よろしくな」


「ああ、よろしく。オレはシュンだ。個人冒険者で階級は☆4だな。よければ食うか?」


そう言って、オレはスライスした干し肉を1つ掴んでウルードに近づける。


「そんじゃもらおうかね」


ウルードは笑顔でオレの手から干し肉を手に取って口に入れた。


「うお!?こりゃ美味い。あたしらがもらった干し肉と同じやつかい?これ」


ウルードがあまりの美味しさに驚いた。


「ああ、まあ、オレが手持ちの香辛料を使ったんだよ」


「へえ、面白いものを持ってるようだね。さすが、あのエリス嬢の旦那だねえ」


オレはウルードの言葉を聞いて口をへの字にする。


「なんだ、エリスとのことを知ってるということは、オレのこと知ってたんじゃないか」


「いやいや、顔は知らなかったけど、あんたの名前は知ってたからね。だから、名前を聞いてピンときたんで、カマをかけてみたわけさ」


「なるほど。そういうことね・・・」


オレは軽くため息をつく。


「しかしまあ、想像よりも可愛い顔をしてるね。エリス嬢も意外と面食(めんく)いじゃないか。ま、今回の依頼中よろしく頼むよ」


ウルードはそう言ってオレに手を差し出してきた。


「ああ、よろしく頼むよ」


オレもその手を握り握手をする形になる。すると、何を思ったのかウルードが握っている手に力を込め出した。


なんだ?力比べでもするつもりか・・・?


とはいえ、オレにその気はないのでオレはそれを生温(なまあたた)かく見守ることにした。

ウルードはどんどん手に込める力を強くしていくが、オレはそれを受けて平然としている。しばらくすると、ウルードの顔が赤くなり(うで)に筋肉の(すじ)が見え、彼女がかなりの力を込めていることがわかる。


おいおい、どんだけ力を込めてるんだよ・・・。しかも、手汗がすごいな!?


すると、急にパッと手を離すウルード。


「っふ、やるじゃないか。どうやらただの優男(やさおとこ)ってわけでもなさそうだね」


手をプラプラさせながら、やるなみたいな顔してるけど、色々と台無しだからな?


「そらどうも・・・」


「じゃあね、あたしは仲間のところに戻るよ」


そう言って立ち去っていった。


「なんだったんだ・・・一体?」


その後、ウルードが戻っていった方向から、ぐわー!!という女性の声が聞こえてきた。


あの女・・・、オレが平然(へいぜん)としてたから、おかしいと思って仲間で試したのか・・・?恐ろしい女だ。

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