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お読みいただいてありがたし。


明日の朝には出発することになるという話をすると、エリスが一緒に寝たいということで、オレの寝室にきていた。


まあ、いいけどね。せっかくベッドが大きくなったわけだし。


「じゃあ、寝ようか」


オレはエリスにそう言うと、アーティが部屋に入ってきた。


「シュンさーん、一緒に寝ましょう」


アーティが笑顔でそんなことを言うと、すぐにエリスがいることに気がつく。

そして、エリスとアーティがお互い笑顔で視線を交錯(こうさく)させる。


なんだろう2人の間に火花が見えるようだ・・・。


「アーティ?ここはお姉さんである、私に(ゆず)るべきよね?」


「いえいえ、お姉さんなら年下に譲るくらいの余裕を見せるべきでは?」


エリスとアーティがフフフと笑いあっている。そこへ、オレは2人に話しかける。


「ベッドも大きくなったし3人で寝ればいいんじゃないか?」


すると2人はすごい剣幕(けんまく)でオレに話しかけてくる。


「ダメです!今日はゆっくり話しながら寝たいんです!」


とエリスさん。


「しばらく会えないんですから、しっかりとシュンさんと話しておきたいんです」


とアーティさん。


ついにこういう日が来てしまったか・・・。


「わかったよ・・・。ならいい方法がある」


「本当ですか?」


オレの言葉にエリスが反応する。


オレはいずれこういう日が来るだろうと思い、空属性(くうぞくせい)を利用してある魔法を生み出した。それは、オレをもう1人作り出す魔法だ。分身ともいう。分身を作っている間は徐々に魔素を消費していく為、長時間の発動は無理だが1日くらいなら作っていられる。

詳しい話は(はぶ)くが、この分身はありえたかもしれない自分を分身として顕現(けんげん)させる魔法なので、魔法解除をすると記憶が統合(とうごう)される。そういう点でも1日が限界だ。統合するときの情報量が多いと脳がパンクしてしまうのだ・・・。


オレの説明を聞いたアーティが質問してきた。


「それって分身のほうは偽物(にせもの)ってことですか?」


「いや?両方本物だよ、一応。だから、片方が傷ついた状態で戻ると傷も一緒に受けるから、片方が死んだらオレは死ぬことになる」


オレの死ぬという発言に少し2人は驚いたようだが、すぐに気持ちを切り替えて、今度はエリスが口を開く。


「大体わかりました。それなら問題ないですね」


とニッコリ顔のエリスさん。

とまあ、寝ることに関しての問題はなくなったので、一応、平等にということで、オレの部屋ではなく各自の部屋で寝るということとなった。




エリスはオレの胸に顔を埋めながら寝ている。そして、オレの胸からハスハスという音が聞こえてくる。


「・・・ねえ、いつも思うんだけど、オレの匂いってそんなにいいもの?」


「ふふ、愚問ですねシュンさん」


キランという感じでオレにドヤ顔をするエリス。それからすぐに顔を胸へ埋め直した。


「愚問なんだ・・・」


しばらく静かな時間が流れる。


「本当に大丈夫なんですよね・・・?」


エリスが胸に顔を埋めた状態で聞いてきた。オレはエリスの背中を撫でながら返事をする。


「大丈夫だよ。心配してくれるのはありがたいけど、信じてくれていいよ」


「もちろん信じてます。だから、ちゃんと帰ってきてください」


「ああ、わかってるよ」


その後、この依頼が終わったらエリスの故郷に行きたいという話をしたりしながら、ゆっくりと眠りについた。


同時刻、アーティ部屋にてもう1人のオレがアーティと一緒に寝ている。アーティはオレの左側から腕を絡ませて、足も絡ませている。


「ねえ、シュンさん」


「んー?」


「エリスさんが心配してましたけど、今回の依頼って危険なんですか?」


「まあ、危険といえば危険だな。とはいえ、冒険者だから危険はつきものだろ?」


「そうですけど、あまりにも危険な依頼なら受けないという選択もあるじゃないですか」


まあ、一理ある。


「そうなんだが、今回の依頼は☆4以上の冒険者は強制参加でな。冒険者になると、こういう時もあるわけだ。アーティもそういう依頼を受ける時があるかもな」


「なるほど・・・」


そう言いながらオレの腕を抱くアーティの力が強くなる。


「改めて言うけど安心してくれ、ちゃんと帰ってくるよ」


「ちゃんと帰ってこないと怒りますからね」


帰ってこなかったら怒れないんだが・・・。その奇想天外な物言いに、思わず苦笑してしまう。


「わかったよ」


オレはそう返事をして、アーティを抱きしめ頭を撫でながら眠りについた。

その翌朝、オレ達は1人に合体すると大量に消費した魔素に加えて、妙に体力を(けず)られた状態で依頼へ出発するのだった・・・。




クリオールの南門にて多数の冒険者達が集まっていた。そこへ、アダルさんが来て号令(ごうれい)を出した。


「今回の依頼を受けてくれたこと、改めて礼を言う。ありがとう。早速で悪いんだが、向かうことにしよう」


そう言いながらアダルさんは隊列を発表し、オレ達はその並びになって出発した。

今回集まっている冒険者は☆4と☆3のパーティがいくつかと、オレのように個人で冒険者をしている奴が数人いた。個人冒険者は同じ☆の階級同士でまとめられた。


余談(よだん)だが、現在クリオールに☆2以上の冒険者はいないので、☆3が最も高い階級(かいきゅう)の冒険者となる。ちなみに、冒険者の階級はパーティなら依頼をこなしていればあがる。個人については、自分より階級の高い冒険者に試験をしてもらうことであげることができる。試験に合格すれば、その試験をしてくれた冒険者の☆の一つ下の階級になることができる。なので、オレは過去に☆3の冒険者に試験をしてもらい、無事に試験に通ったのだ。


目的地へ向かうなか、現在は第二陣にて魔物の大軍(たいぐん)を迎え()つ状態らしい。魔物の数は、1万から7千と数を減らしているようだ。第三陣に来るまでにどれだけ減らすことができるのやら。

オレはそんなことを考えながら進んでいくのだった。

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