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今日も皆様の暇つぶしの一助となれば幸い。
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組合からアダルさんの説明を受け、エリスに吹き飛ばされながらも我が家に帰ってきた。家にはアーティが来ており、オレの姿を見て驚いた。
「ちょ、ちょっとシュンさん。どうしたんですか!?」
あの後、誤解は簡単に解けたが、オレは吹き飛ばされた影響で、左頬に赤い手形がつき服は汚れ髪は埃まみれになっていた。ちなみに、エリスのビンタを喰らったところでオレにダメージはない。心にダメージは負ったが・・・。
「まあ、組合で色々あってな・・・。悪いけどお風呂入ってくる」
「はあ、いってらっしゃい」
カポーン
ということで、オレは自慢の風呂場に来ている。ここで、風呂についてさらに詳しく説明しておこう。
この風呂はオレが魔改造を施しており、水を貯めるタンクを外部に設置し、そこへ水が減れば一定量補充される魔石を組み込んでいる。さらに、タンクから風呂場へいく時に水圧を上げる魔石を設置することで、水の出る勢いを強くしており、他には水を温めてお湯にする魔石のついたタンクも別に作っておいた。
各魔石へ魔素を供給する手間はあるが、そのおかげでいつでも風呂に入ることができるのでそれくらいの手間は構わない。
オレはシャワーで頭から体全体を濡らしつつ、まずはさっと汗を流すことにする。
「どうぞ」
「ああ、どうも」
すると突然聞こえてきた声とともに、オレの手に石鹸が握らされる。いや、違うそうじゃない・・・。
「・・・何でアーティが入ってきてるんだよ?」
「せっかくですから、お背中をお流ししようかと」
アーティはタオルを体に巻いた格好だが、16歳にしては発育のいい部分が精神衛生によろしくないな。
いつもは茶色い髪をポニテにしているが、今は髪をおろしている。ちなみに、アーティはこの火の月で16歳になっていた。この世界では特に誕生日のお祝いはしない。ただ、1年の始めに誕生祭として皆で祝っている。
「気持ちだけもらっとくよ」
オレはそういって、前を向いて濡れたタオルに石鹸を擦り付ける。
「むう、エリスさんとはお風呂に入るのに、私とは入ってくれないんですね・・・」
っぐ、痛いところをつく・・・・
オレは、じと目になりつつ軽く息を吐いて。
「わかったよ。じゃあ、悪いけど背中流してくれ」
そう言って、タオルをアーティに渡した。
「喜んでー」
満面の笑顔でタオルを受け取ってから、オレの背中をゴシゴシと擦るアーティ。
「お客さん、痒いところはないですか?」
「誰がお客さんだ。ないよ、力加減もそれくらいで大丈夫だ」
オレのつっこみに、えへへと笑うアーティ。しばらく、無言の時間が過ぎてから、アーティが話しかけてきた。
「シュンさんの肌って綺麗ですねー。冒険者をしてるのに傷とかないし」
「まあ、基本的に攻撃は避けてるし、ポーションで傷を治してるからじゃないか?」
「そうなんですね。はい、終わりましたよ」
「ありがとう」
そう言って、泡を流してくれるアーティ。
「さあ、今度は前ですね」
と言いながら、オレの背中にアーティは体を密着させてきた。
これはいけない・・・。理性さんフル稼働な案件だ。
「わざとか?」
オレは冷静にアーティを指摘する。
「えへへ、バレましたか」
アーティは笑顔であっけらかんとしていた。
「今度はオレがアーティの背中を流してやるよ」
「シュンさん、やらしいですね」
「なんでだよ!?」
「間違えました、優しいですね」
「どんな間違え方だ」
そう言いながらオレはアーティの後ろに回ると、アーティはタオルをとって前を隠して椅子に座った。それからオレはアーティの背中を流してやる。アーティの肌は瑞々しく綺麗な背中をしていた。
「アーティは綺麗な肌をしてるな」
「そ、そうですか?ありがとうございます。けど、腕とかちっちゃな傷とかあって恥ずかしいんですけどね」
そういえば、エリスにも傷があったな。昔に冒険者をしていたからその時にできた傷だろう。
「別に恥ずかしがる必要はないだろ。冒険者なんだし傷だってできるさ」
「シュンさんは嫌じゃないですか・・・?傷のある女の子は・・・?」
アーティが少し気まずそうに聞いてきた。
「別に気にしない。それにそんなことでアーティを嫌いになることもないから、不安になることはないぞ。はい、終わり」
オレはそう言ってアーティの背中にお湯を流してやる。
「ありがとうございます」
アーティはそう言って背中をオレに傾けてきて、オレに体重を預ける。
「見えるぞ?」
「見たいですか?」
アーティはニヤニヤしながら前を隠しているタオルをつまむ。
「そのうちな」
オレは、アーティをお姫様抱っこして湯船まで連れて行く。急に抱えられたアーティは驚いて声をあげた。
「ひぃやああああ」
どんな悲鳴だよ・・・。
その後、湯船に浸かってゆったりしてから風呂から上がった。
4
風呂からあがり夕食の準備をしているとエリスが帰ってきたので、先にお風呂に入ってもらってから、3人でご飯を食べる。
ご飯を食べながらエリスがオレに今日のことを聞いてきた。
「そういえば、アダルさんと何の話をしてたんですか?他にも冒険者の方がいっぱい別室にいたみたいですけど」
ふむ、エリスは組合職員のはずだが知らされていないのか?てことは、言わないほうがいいのかな・・・。まあ、少しくらいなら話してもいいか。
「口外を禁止されてるんで、詳しくは話せないけど組合本部からの依頼を受けることになったんだよ」
エリスは少し考えこむような顔をする。
「本部からですか?ただ事じゃなさそうですけど、大丈夫なんですか?」
「まあ、平気じゃないかな」
エリスの雰囲気に不穏なものを感じたのか、アーティがエリスに質問する。
「組合本部からの依頼ってどういうものなんですか?」
その質問にエリスが返事をする。
「冒険者組合は国が運営していて、その本部が王都にあるの。だから、本部から依頼が来るということは重要な案件ということなのよ。しかも、シュンさん以外にも冒険者が集められていたから、危険な依頼じゃないかと思ったの」
名探偵エリスさん・・・。これは、下手な隠し事ができませんな・・・。
「なるほど・・・。ほんとに平気なんですか?シュンさん」
アーティも心配してオレにそんなことを聞いてくる。
「大丈夫だよ、安心してくれ」
そんな2人にオレは笑顔で返事をしたのだった。
ブックマークとご評価、いたみいりまふ。




