第6話 エピローグ
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
感動した!!
ということで第6話の終わりです。
良ろしければ第7話でお会いしましょう。
エピローグ
火の月(夏)も大半がすぎ、もう少ししたら土の月(秋)がやってくるだろう。
そんな中、ついに石鹸工場ができたので、石鹸の製作指導も兼ねて工場にやってきた。
工場には、スライムさん達の過ごす部屋に、苛性ソーダもどきを管理する部屋、そして、石鹸を作る部屋とできた石鹸を乾かす部屋など様々な部屋に人を配置していた。一応、就業時間は決まっており朝から夕方までだ。工場と言っても機械を使ったライン生産というわけではないので、夜通し作ったりはしない。
オレは工場で働く人へ石鹸の製作手順を伝え実際に作ってみる。そして、実際に石鹸を作ってもらい、その都度直したほうがいい場所や要点を伝えていく。
手順は難しいものでもないので、皆簡単に覚えていく。
尚、この工場に勤務する人達は全員、誓約の儀を行うことになった。というのも、いずれは他にも石鹸を作る人達は現れるだろうが、それまではクリオールこそ先駆けであるべしという公爵様の熱い一言により、この工場から製法などが漏れないようにする為だ。仮に引き抜きにあったとしても、引き抜かれた人も引き抜いた人も漏れなく神罰の対象となるので安心だ。
そして、工場を作るにあたり、オレとレインさんの誓約は破棄することになった。もうオレが作ってレインさんに持っていくこともないしな。
その誓約の儀は工場ができたお披露目の日に行われ、工場の内の一画に簡易的な儀式部屋を作り、司祭様には出張してもらっていた。そして、誓約書に1人ずつ署名をしていく。オレもその場にいて誓約を交わすと、久しぶりにクラっと意識がブレたのだった。
そうして、オレは周りが白い空間になっているのに気づいた。
「お久しぶりですね、シュンさん」
「ええ、お久しぶりです。マズラ様」
オレの目の前には約束を司る女神マズラ神がいた。トーガに身を包みたいそう立派なものをお持ちの女神だ。
マズラ神は金髪を揺らしながらオレに声をかけてきた。
「王都ではお疲れ様でした。本体ではないとはいえ悪神を対処していただいてありがとうございます」
「まあ、成り行きでしたがね・・・」
オレは苦笑して返事をする。
「ところで、オレは何でまたここに呼ばれたんですかね?」
「妾がお願いしたのじゃよ」
そう言いいながら黒髪で黒いドレスを着た女性が、マズラ神の後ろから歩いてきた。
「お初にお目にかかる妾は闇の女神カーラじゃ。王都では我が愛子が世話になったのう」
カーラと名乗った女性は、黒髪を頭の上で結んだスレンダーな女神だ。ハイポニーテールというのだろうか、結んでいる位置が結構高めだな。
「愛子?といいますと?」
「プティーのことじゃよ。彼の者は我の加護を持つでな」
ああ、シャノワールの生徒で簪をさしてた子か。
「いえいえ、あの子については、教えることがないくらい優秀でしたよ」
「それがのお、プティーの周りには闇属性の技能を持った子がおらんでな。これまで、あの子は自分の魔法の威力に気付いておらなんだのよ。しかし、今回のお主の言葉を聞いて、妾の加護によって力が増していることを自覚できたのだ。このままではいつか力を暴走させて、あの子が傷ついてしまうのではないかと心配しておってな」
「なるほど。でも、それなら神託でプティーに教えてあげてもよかったんでは?」
「お主のお、神託なんぞ簡単に人の子に告げれるものではないぞ?お主がこうやって妾達と語らっておることが異常なんじゃぞ?」
それはオレが神の力を押し付けられたからであって、しかも、オレは無理やりここに呼ばれているんだが・・・。
「まあ、それはよい。とにかく、愛しのプティーに指導してくれたことに感謝を」
そういってカーラ神はオレにニコリと笑顔を見せてくれた。
「随分入れ込んでますね」
オレがそう言うとカーラ神はにまりと笑った。
「そうはそうよ。プティーのあの玉のような肌に傷などつくなど考えただけでも気が狂いそうじゃ。それにあの愛くるしい目、人形のようにかわいいじゃろう?お風呂でも頭を洗うときに目を瞑る仕草が可愛くてのお」
駄目だコイツ・・・、早くなんとかしないと・・・。
オレはゾクっとしてマズラ神の方をみると、マズラ神は悲しそうに首を横に振るだけだった。
もう手遅れか・・・。変態といえば、リオニー様のメイドのマルガも変態だったな。
「カーラ神様、ちなみに宵人族と関係あったりしますか?」
「おお!あの子達は、妾の闇属性と相性の良い種族を誕生させようとして生まれた子らじゃな。さらに美形揃いじゃ。ご飯が何杯でもいけるのお」
かっかっかと笑うカーラ神。
神はご飯たべるんですか?ていうか、カーラ神の性癖を受け継いでしまったらしい。かわいそうに・・・。
話が落ち着いたところでマズラ神が口を開いた。
「さ、さて、あまり引き留めてもシュンさんに迷惑になりますし、そろそろお別れとしましょう。シュンさん、改めて悪神への対応ありがとうございました」
カーラ神もそれに続く。
「うむ、その件も含めて、プティーへの指導助かったぞよ。この礼はいつかしよう」
いえ、結構です。という心の声は置いておいて。
「全て成り行きですから、あまりお気になさらずに。では、失礼いたします」
オレが2柱に挨拶をすると意識がブレて、気づけば誓約書の前だった。
単にお礼をいう為に呼んだのか・・・。なんて迷惑な・・・。
誓約の儀も終わり、明日から工場は可動していく予定だ。
その日の夜、オレが家に帰ってくるとオレのベッドがシングルからキングサイズに変わっていた。
「なにこれ・・・?」
オレがベッドに気づくちょっと前、工場から家に帰るとエリスとアーティがご飯を作ってくれていたので、一緒にご飯を食べ、先にお風呂に入ってくださいと言われ、風呂に入って部屋に戻ったらベッドのサイズが変わっていた。そして、そのせいで部屋が狭くなってしまった。
「どうですかシュンさん?驚きました?」
オレが呆然としていたら、寝巻きに着替えたエリスとアーティがいつのまにか後ろに立っていた。それからオレに声をかけてきたのはエリスだ。
「驚いたというか・・・、まあ、驚いてはいる」
「前から3人で寝るには、シュンさんのベッドが小さかったので、お店に頼んで作ってもらってたんです。ついに今日完成したので、早速設置してもらいました」
エリスがフンスと可愛く笑うが、オレはまだ意識がついてこれていない。
「オレの前のベッドは?」
「お店の人に頼んで持って帰ってもらいました。お店で廃棄してもらいます」
今日はあの2柱のせいで精神が削られてしまったのか、もはや、オレは何もいうことができずフラフラとキングサイズのベッドにうつ伏せで倒れ込んだ。そして、倒れた際にボフっと音がなる。
あ、意外とフカフカだな。
などと思っていると、そこへアーティがオレに乗っかってきた。
「とりゃ!」
「ぐえ」
「あ、なんですか?今の声。まるで私が重いみたいじゃないですか?」
アーティが背中越しにオレに顔を近づけて喋ってくる。
「いきなり乗られたら声がでるのもしょうがない・・・」
それを見たエリスがアーティを嗜める。
「もう、ダメよアーティ。いきなり飛び込んだら危ないじゃない」
「えへへ、ごめんなさい」
そう言うと、アーティはごろりと回転してオレの隣に寝そべった。
「何やらお疲れですね?大丈夫ですか?」
エリスが優しく囁きながら、オレの背中に自分の体を乗せてくる。
・・・!布一枚越しに感じる柔らかい感触・・・!いかんな、違う意味で動けなくなりそうだぜ・・・。理性さんパワー全開で頼む!!
「シュンさーん?何かやらしいこと考えてませんかー?」
アーティがにやにやしてオレに話しかけてくる。
「いや?オレは真剣にエリスを感じているだけだな。そこにやらしさは・・・ない」
「何か変な間があった気がしますけどね」
「気のせいだろ」
エリスがオレとアーティの会話を聞いて口を挟んでくる。
「2人で何の話をしてるんですか。シュンさんも変なこと言ってないで少しずれてください」
エリスが背中に乗ったくせに・・・。
と思いながらもオレは何とか体をずらしてエリスもオレの隣に寝る。3人で並んで寝る形となった。
「まあ、これなら3人でもゆったりと寝れるな。確かに、体の上に乗られるより全然ましか」
オレがそう呟くと、右からアーティがオレのお腹をつねり、左からエリスがオレのほっぺをつねってきた。
そして、エリスが口を開く。
「シュンさんは、ちょっとでも好きな人と密着したいという乙女心がわかってませんね」
さらにアーティも話しかけてくる。
「そうですよ。それに男なら夢のような展開ですよ?シュンさんは泣いて喜ぶべきです」
よくわからんことで2人につねられているのは理不尽ではなかろうか。いや、乙女心を理解していないオレが悪いのか?いや、わからんよ、だって男だしな。
「それは悪かったよ。まあ、なんだ。ありがとうなベッド」
オレはエリスにお礼を言った。
「ふふ、どういたしまして」
エリスはそう言うと、オレの左腕に抱きついてオレのほっぺに口づけをしてくる。それを見ていたアーティも負けじと逆側のほっぺにキスをすると右腕に抱きつく。
なんとまあ、オレは果報者だな。
「2人とも好きだよ」
オレがそう言うと、2人は何も言わずに互いに抱きしめている腕にさらに力を込めてきた。
オレはそんな腕にしがみつく感触に少し苦笑しつつも、こんな風に寝るのもいいかなと思うのだった。
あわわわ・・・
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