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俺の感謝は最初からクライマックスだぜ!
いつもお読みいただいてありがとうございます。
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今日は久しぶりにニーナが朝から家に来ている。シャノワールから手紙が届いたので、それを魔法の訓練のついでに渡しにきてくれたらしい。
せっかくなので、オレはクッキーでニーナを出迎えてあげた。
「ほら、いつぞやの約束してたクッキーだぞ」
「ありがとうございます!師匠!!」
ニーナはさっそくクッキーを1つ手にとって食べる。
サクサクという小気味いい音が聞こえてくるので、オレも1つクッキーを食べる。砂糖の量産が済んだので、思う存分クッキーに砂糖を使用している。
見よ、これがクッキーだ!
しばらく2人でクッキーを食べながら、ニーナの近況を聞いた。石鹸の事業化にむけて人員の確保も済み、あとは場所ができれば生産が始まるらしい。なので、しばらくしたらオレに生産方法の指導をして欲しいそうだ。
「わかった。前もって言ってくれたら時間を作るようにするよ」
「よろしくお願いします」
そして、ニーナはお茶で喉を潤してから思い出したように手紙をオレに渡してきた。
「そうでした。シャルから師匠宛に手紙を預かってたんです。これをどうぞ」
オレはニーナから手紙を受け取り、封を切って中身を取り出した。
「これって、どうやって届いたんだ?鳥に運ばせたの?」
「いえ、さすがにこの大きさの手紙は無理なので、これは知り合いの商会に頼んで手紙を運んでもらったんです」
王都とクリオールに店を持っている商会なら2つの街を行き来しているので、そういったことが可能だそうだ。なるほどな。
「で、手紙には何が書いてあるんですか?」
「ニーナも内容を知らないのか?」
「さすがに、他の人に宛てた手紙を読むほど、はしたなくありませんよ」
と、お怒りのニーナさん。
「いや、シャノワールとの文通で、この手紙の話とかしてるのかなって思っただけなんだが。まあ、いいや。とりあえず読むわ」
内容としては挨拶から始まって、この前のお礼や生徒達の近況。彼らはその後めきめきと魔法が上達していっているそうだ。シャノワール自身もあれから水魔法の威力も少しずつ上がってきているらしく、そのお礼も書いてあった。
生徒達もシャノワールも上達してるなら講師を引き受けたかいもあったというものだ。
そして、さらに読み進めていくと、シャノワールの生徒達が急に実力を伸ばしてきたことで、シャノワールと生徒達への注目度があがってしまい、シャノワールの組へ編入したいという生徒もでてきたらしい。しかし、シャノワール自身は普通の教え方しかしていないので困っていると書いてある。なので、もう一度講師をお願いできないかという内容だった。
オレは手紙の内容をニーナに教えてあげた。
「と、いうことらしい。文通では困っているとか書いてなかったのか?」
「うーん、最近妙に注目されてるとは書いてましたが、困ってるという話は書いてなかったですけどね」
「へー」
オレはお茶をずずずと啜りながら相槌をうつ。
「で、どうするんですか?」
「え?断るけど?」
「そういうと思いました・・・」
ニーナは残念な子を見るような目でオレを見る。
やめろよ、ゾクゾクは・・・しないな。
「これって返事はどうすればいいんだ?」
オレはニーナに聞いてみる。
「手紙を書いてくれれば、私がシャルに届くようにしましょうか?」
「忙しいところ悪いけど頼む。手紙は書いたらニーナに持っていくよ」
ニーナが住んでいるのは、公爵城の近くのハイソな区域だ。一応、子爵令嬢だもんな。
「本当に断るんですか?」
ニーナは講師を受けて欲しいのか食い下がってくる。
「断るねえ。王都は遠いから行きたくないしな。ただ、返事には上達したのは外部講師を呼んだからと説明するようにと、オレに教えて欲しかったらクリオールまで来いと言えって書くつもりだよ。その際に住んでる街の名前やオレの名前も出していいとも書くし。そうすれば、シャノワールも逃げれるだろ。」
「本当にきたら教えるんですか?」
「オレに予定がなければな」
「ほー、そうですか。ちなみに、師匠って先ほど手紙を書くっていってましたが、字が書けるんですね」
「ああ、必要だと思ったから憶えたんだ。計算もできるぞ」
字は本を読んだり、エリスに教えてもらいながらマスターした。計算については、前世の義務教育の力だな。
「へーそうなんですね。じゃあ、干し肉を4つに3つ加えて、さらに6つ足すと合計は?」
4+3+6か。
「13だな」
オレは間髪入れずに答えると、ニーナは自分で出した問題ながら、少し計算しているようで黙っている。
「正解です・・・。なら、騎士が3人に4人の騎士が部隊に合流しましたが、2人負傷して隊を離れました。現在の人数は?」
「5人だな」
またもニーナは考えた末にオレに答える。
「・・・正解です。といいますか、計算早いですね」
はっはっは、子供の頃、計算ドリルをどれだけ早く終わらせるか勝負していた経験があるのだよ。
「じゃあ、オレが問題を出してやろう、街にニーナちゃん4才がいました」
「ちょっと待ってください。なんですか?ニーナちゃん4才って。もしかして、バカにしてます?」
ニーナは首を傾けてから、目からハイライトを消してオレに質問してきた。
「い、いやバカにしてないよ・・・。というか、例えの問題なんだからそこは気にしないでくれよ・・・。じゃあ、街にシャルちゃん4才がいました」
「ちょっと待ってください。人の友達の名前を軽々しく呼ばないでくれますか?ぶちますよ?」
「なんでだよ!?しかもぶつってこえーわ」
「普通に問題を出してくださいよ」
「はいはい、わかりました。じゃあ、改めてニーナが街で20人の男性から口説かれました。それが3日続き、4日目に10人の男性に口説かれました。さて、合計何人の人に口説かれましたか?」
20×3+10だな。
ニーナがむむむと唸りながら考えている。
「はーい、制限時間が、あとじゅーう、きゅうー、はーち・・・」
「ず、ずるいですよ!師匠、いきなり制限時間なんて!?」
「ごー、ろーく、なーな」
「って、増えてるじゃないですか!?」
なかなかいいツッコミをするじゃないか。
「はっはっは、で、答えは?」
「70です」
「せいかーい。まあ、もうちょっと早く計算できるといいかもな」
オレはニーナにニヤリと笑いかける。
それを見たニーナが顔を赤くしてプルプルと震える。
「じゃあ、問題です!師匠が炎弾の魔法を受けてバラバラになりました!!いくつに分かれたでしょうか!?」
「わかるか!!何だその問題。オレがバラバラって怖いわ!」
その後もニーナとわちゃわちゃと言い合い、エリスが帰宅し、オレが大人げないということで白い目で見られるのだった。
うむ、確かにいい大人が年下相手にマウントとって大人げなかったな。反省しよう。それと、結局訓練してねえわ・・・・。




