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いつもお読みいただいてありがとうございます。

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その日の夜、アーティが泊まりにきてくれたので、腕輪を2人に渡せそうだ。


ちなみに、アーティは明日からは護衛依頼に行くので、しばらくこっちには来れないらしい。


ちょうどいい、この腕輪がアーティを守ってくれると嬉しいところだ。まあ、そんな事態にならないのが一番なのだが。


さて、まずは夕食にしようかな。せっかく胡椒(こしょう)を手に入れたので、(しお)胡椒で味付けした豚肉(いた)めならぬ、オーク肉の塩胡椒炒めを作りたい。


この日をどれだけ待ちわびたことか・・・。


オレは鍋に油を引いて、まずは香草(こうそう)で油にも香りをつけていく。それから火の通りにくい野菜を入れ、その次にオーク肉を入れる。そこへ(まん)()して塩と胡椒で味をつけていく。


オレは出来上がった料理を皿に盛り付けてテーブルへ運ぶ。


「はい、出来たよ。熱いうちに食べようか」


オレが持ってきた料理は見た目はただのオーク肉の野菜炒めだが、そこから立ち(のぼ)る空腹を刺激する胡椒のいい香りにエリスとアーティはたまらないという顔になった。


「シュ、シュンさん!?この香りは?初めて()ぐ匂いですが?」


エリスが胡椒のスパイシーな匂いに反応する。


「これって、もしかしてこの前見つけたやつを使ってるんですか?」


アーティは勘がよく正解を言い当てる。


「そうだよ。アーティと一緒に見つけたやつだ。エリス、これはオレが求めていた香辛料で胡椒というんだ。とりあえず、冷めるといけないから先に食べようか」


オレは2人にそう言って、早速肉を口に入れる。何回か咀嚼(そしゃく)をするたびに、求めていた味が口に広がっていく。肉の味に胡椒がアクセントを加え、食欲を促進(そくしん)していくようだ・・・。塩だけでもオーク肉は美味しかったが、胡椒を加えることで、より肉の味を感じることができる。


あー、ビール飲みたい・・・。


オレに続いてアーティが肉と野菜を一緒に食べる。


「うまっ!!なんですかこの味!?これ、何の肉ですか?」


オーク肉を食べたことのあるアーティが驚きながらオレに聞いてくる。


「オーク肉だよ。アーティも食べたことあるだろ?」


「ありますけど、私が知ってる味と違って、こうピリっとしているというか肉の味がしっかりしてる感じがします」


ふっふっふ、それが胡椒の力だよアーティ君。


「シュンさん・・・」


これまで無言で野菜炒めを食べていたエリスが口を開く。


「ん?どうかした?」


「おかわりをください・・・」


エリスが恥ずかしそうに顔を赤くしてオレにお願いをしてきた。


「気に入ってくれたみたいだな。オーク肉はもうないから別の肉になるけどいい?」


オレは笑顔でエリスに聞いてみた。


「はい!なんでも大丈夫です!この胡椒?ですか?この香りがお肉を100倍美味しくしてますね!!」


目をキラキラと輝かせてオレに返事をするエリス。

そんな目を向けられたら頑張ってしまうのが男というもの。

その後、追加の肉料理を作り、アーティもおかわりでその料理を食べて2人とも満足したようだ。


食後のお茶をエリスが入れてくれ、アーティは皿を洗ってくれた。オレは2人にテーブルに座ってもらい、腕輪を渡すことにする。


「2人ともこっちにきて椅子に座ってくれる?」


2人はきょとんとした顔でこっちにきて椅子に座る。オレの両隣に・・・狭い。


「どうしました?」


エリスが代表してオレに質問してくる。


「んー、大したことじゃないんだけど、なんとなく2人に贈り物がしたいなと思って作ってみたんだ。これ、よかったらつけてみて欲しい」


オレはそう言ってから、エリスとアーティに腕輪をそれぞれ渡した。


エリスは受け取った腕輪を見て、しばし呆然(ぼうぜん)とする。一方のアーティは腕輪を右手にはめた。

アーティの右手を通った腕輪は、アーティの腕の大きさに形が変わり、アーティの腕にピッタリとはまる。


「わわ、すごい。ちょうどいい大きさになりましたよ?」


「ああ、一応錬金術で加工してある腕輪なんだ。その腕輪には魔石をはめてあるから、魔素を込めて欲しい」


「はい、やってみますね」


アーティが腕輪に魔素を込めると、アーティの体が白く輝く膜が生まれる。


「どうだ?体がしんどかったりしないか?」


「うーん、魔素がちょっと減ってる感じはしますけど、大丈夫です」


「そうか、それならよかった。もう魔素を込めるのをやめていいよ」


しばらくしてアーティの体から膜が消える。


「これって何かの魔道具ですか?」


「ああ、その腕輪に魔素を込めてからしばらくは、物理攻撃や魔法攻撃の威力を軽減できて、威力の低い攻撃なら防げる効果がある」


「えええええ?それってすごい魔道具じゃないですか!?」


「そんな驚くほどなのか?2人の身が守れたらいいと思って作ったんだ。ちなみに、さっき魔素を込めてもらった時に、アーティの魔素の波長を覚えるようにしたんで、他の人は使えないようになってるからな」


「はあ・・・、もうどこに驚いていいのかわからなくなりましたよ」


アーティは驚きすぎて椅子の上で脱力した。どうやら処理能力の限界を超えたらしい。


そういえば、エリスが静かなんだが・・・・。


オレはエリスの方を見ると、アーティのやっていた方法をみて真似をしたのだろう。左手に腕輪をはめていた。


「エリスはどう?体に変なところはない?」


オレはエリスに優しく問いかける。


「はい、大丈夫です。これって狐ですか?」


エリスは腕輪を見てオレに聞いてくる。


「うん、エリスの種族に合わせてみたんだよ。ちなみに、アーティのは太陽にしてみた」


「なんで太陽なんですか?」


オレはアーティに返事をする。


「元気で明るいから」


「もう、なんですかそれ」


アーティはそう言いながらも笑顔だ。しかし、オレはエリスの反応が静かなので少し不安に思ってしまう。


「えーと、エリスはどうかな・・・?気に入ってくれるといいんだけど・・・」


オレはエリスの方を向いて彼女の表情を見てみる。


「気にいるに決まってるじゃないですか。嬉しいです。シュンさん」


エリスは目を(うる)ませながら笑顔で喜んでくれた。


「それならよかった」


オレはほっとしたので、お茶を飲んで(のど)を潤した。


「でも、どうして急に腕輪をくれたんですか?」


うーん、どう言おうかな、アーティのレザーアーマーを見てたからと言うのもなあ・・・。

オレを見ていたエリスが急に笑いだす。


「ふふ、もしかしてシュンさんにはバレちゃってましたか?」


「まあ・・・、なんとなくだけどね」


「シュンさんが私のことをちゃんと見ててくれて嬉しいです」


エリスがオレの肩に頭を乗せてくる。


「むう、2人の世界に入らないでください」


アーティがむくれて、顔をオレのお腹に(うず)めてきた。


「ごめんごめん。悪かったよ、アーティ」


その隙に、エリスがオレにすっと口付けをしてパッと離れた。


「ありがとうございます、シュンさん」


そして、とびきりの笑顔をオレに向けてくれる。


「どういたしまして」


それを見てオレは笑顔でエリスに答えるのだった。

ちょっと、ダラダラした話が続いておりますが、あと少しで終わりますので・・・

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