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街から東へ行くと森があり、その森はオレが目覚めた森である。薬草や野草を取るなら大体の冒険者がここにくる。なのでオレもこの森にやってきている。
そして、オレは2年もこの森で過ごしていたので、勝手知ったるなんとやら。
薬草が群生している場所を大体把握しているおかげで、薬草採取でもそこそこの稼ぎを得ることができている。
「と思ったのに、いつもの場所に薬草があまり生えてないな・・・・。他の冒険者に取られたか?」
いくつか群生地を巡ってみたが、思ったより薬草が生えていなかった。というか、何かに食べられた跡があるな。野生動物にでも食べられたか。
「奥にいくべきかなあ・・・・・。」
この森は街から見て、東へいくほど奥地になるが、奥へ行くほど強い魔物が生息する。なので、薬草採取をする冒険者は、街からあまり奥へはいかない。奥へ行くのは、依頼や自分の装備の為に、強い魔物の素材を取りにいったりする時が大半だ。
また、強い魔物がいるということは、それだけいい装備をしていかなければ、危険であるということなので、冒険者になりたての奴もいくことはない。
装備が欲しいから素材を取りたいが、素材を取りに行くために装備がいる。まさに、卵が先か鶏が先かって話だな。
オレは、元々森で過ごしていた時に、奥の魔物も倒していてその素材をもとに装備を作っているので、中々良い装備だと思う。
森の奥にいた、物理攻撃に強いゴアベアーという熊っぽい魔物の毛皮を使った外套に、クレイスネイクという蛇っぽい魔物の皮を使った皮鎧、腕あて、この魔物は伸縮性にすぐれ、その特性から突き攻撃などに強い、靴は街で売っていた冒険者用の靴で、耐久性重視のやつにした。武器は、左ふとももにナイフを装着し、メイン武器として腰にロングソードを挿し、全体的に動きやすい格好にしている。
「あんまり採取できてないし、しゃーない、奥までいくか。」
てわけで、しばらく奥へ移動をしていると、少し先から何かが戦っている気配がする。あれは、人と人型の・・・魔物、オークか。オーク3匹と戦ってるのは鎧を着込んだ騎士だな。こんなところに騎士が1人?他に仲間はいなさそうだけど、1人で行動するっておかしいな。
まだ距離があるので、戦いを見守りつつ、近づいていく。ふむ、あの騎士さん強いな、オークの攻撃を交わしつつ、しっかり攻撃を当てている。とはいえ、3対1では分が悪い、囲まれてしまいオークの攻撃が騎士さんの頭に当たってしまい、兜が吹き飛んでしまった。攻撃を受けた騎士さんは、兜のおかげで無事だが、体勢が崩れてしまっている。
そこへ、別のオークが木の棒で騎士さんを攻撃しようとしており、騎士さんは剣を構えてうけようとするが間に合わない。しかし、私が来たーー!!腰からロングソードを抜き、オークの木の棒を持っている手を切り飛ばす。
「大丈夫か?」
助けが来るとは思わなかったのか、騎士さんは、いきなりの乱入者に一瞬とまどうものの、すぐに意識を戦闘に戻した。
「ああ、すまない。助かった。」
「動けるみたいなんで、そっちの腕を切り飛ばした方のオークは任せる。オレは、後の2匹を倒す。」
「いや、腕のないほうは貴方がやるといい、残りの2匹を私が倒す。」
「ここに来るまでにみてたけど、頭に攻撃くらってるんだから、無理はしないほうがいい。腕にはそれなりに自信があるつもりなんで、あっちは任せろ。」
戦闘中にどうぞどうぞってやってる場合じゃないので、騎士さんを置いて、2匹のオークに向かって走る。
「あ、コラ!」
何か聞こえたが気にしない。オレは、2匹のオークのうち、向かって右側にいたオークへ接近した。右のオークが反応し、オレに攻撃をしようと腕を振り上げるが、オレにとってオークのその動きは遅すぎる。
上から来るオークの攻撃をさらに右へ移動することで躱すと、オークは振り下ろした攻撃によって身をかがめる形になったので、そのまま首を切り飛ばす。
切り飛ばしたオークの体を踏み台にして、左のオークの上へ飛ぶ。
仲間がいきなり殺されたことに意識がついていかないのか、本能的な恐怖を覚えたのか、左のオークは死んだ仲間から目を離せないままだ。
オレは、体にひねりを加え、遠心力を加えた一撃を左のオークの首にお見舞いする。右のオークと同じように、首を切り飛ばされたオークはガックリと地面へ倒れ込んだ。
「ふう、こんなもんか。」
一息ついて、騎士さんのほうを見ると、片腕のないオークの攻撃を余裕で躱しつつ、首筋へ剣を突き立てていた。そして、剣を突き立てられたオークはほどなくして絶命した。
剣を抜いて血を払うと、鞘に剣を納めてからゆっくりとこちらへ騎士さんがやってきた。
「助太刀、感謝する。2匹のオークを瞬殺とは、貴方はずいぶん腕が立つのだな。守るべき民に守られるとは、騎士の面目が立たないな。」
と、苦笑しながらオレに話しかけてきた。
「その気持ちがあれば騎士として十分だと思うがね。とはいえ、人を助けるのに立場は関係ないんじゃないか?」
「ふふ、確かに、それはそうだ。これは一本取られたな。」
と、笑顔になったその騎士は、金色の髪を頭の上でお団子にまとめた美人女性騎士だった。
鎧とか着てるから、てっきり男かと思ったけど、女性だったのね。
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