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読んでいただいて方へ、ありがとう!そして、ありがとう!!
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メルトと一緒に待ち合わせ場所でアリックスを待っていた。アーティはレインさんの手伝いへ、ニーナは1人で観光したいそうだ。
まあ、ニーナにも色々あるんだろう。
メルトと2人で待っていると、ほどなくしてアリックスとポリーナが歩いてきた。
アリックスと似た容姿で、垂れ耳の金髪で犬人族の女の子だ。アリックスの妹でボブカットが可愛らしい。
アリックスがオレ達に気づいて声をかけてきた。
「すいません、お待たせしましたか?」
アリックスが申し訳なさそうな顔をしたので、メルトがすかさず返事をする。
「いえ!俺達が先に来てただけですから、大丈夫ですよ」
「そうですか。よかった」
メルトの返事に安心したのか笑顔になるアリックス。そのままの流れでポリーナをオレ達に紹介した。
「こっちは私の妹でポリーナです。今日は一緒に観戦させてもらおうと思って連れてきました。シュンさんは会ったことはありますね」
アリックスに紹介されたポリーナがおずおずと喋り出した。
「ポ、ポリーナです。今日はよろしくお願いします」
「俺はメルトと言います。よろしくお願いします」
「オレは・・・、まあ知ってるか。ポリーナは久しぶり。今日はよろしく」
「ひゃ、ひゃい。お久しぶりです」
噛んだな。
「シュンさん何したんですか?ポリーナさん怯えてるじゃないですか」
メルトがニヤニヤしながらオレを見てくる。こいつ普段はこんな感じじゃないのに・・・。アリックスがいるから、ちょっと調子に乗ってるな?
人をおちょくるどうなるか思い知るがいい。
「そう思ったのなら、ポリーナのことは任せたからなメルト君」
オレはメルトにそう言って背中をトンと押してやる。
「っわ・・・、とと・・・」
オレに押されたメルトがよろめきつつポリーナの前に出る。
いや、そこまで強く押してはいないはず・・・。
「あ・・・えーと、はは。今日は楽しみましょう」
メルトが柔らかくポリーナに笑いかけた。
「は、はい」
その笑顔に安心したのか、ポリーナも笑顔になる。
なんだろう、2人の間に甘い空気が漂ってきた。その後ろでアリックスがすごい表情で睨んでるからその辺でやめとけメルト。
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4人で武闘大会の会場に入る。会場は龍な玉みたいな天下一を決める戦いにあるような作りで、選手が戦う為の平べったい四角い石舞台と、それを囲むように円状になった観戦席がある。そして、爵位の高い貴族や王族が観戦するための一際高い特別席が用意されていた。
席に到着するとアリックスが武闘大会の説明をしてくれた。
ちなみに席順は横一列で、左からポリーナ・アリックス・メルト・オレの順だ。
ルール的には石舞台から落ちたり気絶といった戦闘不能状態になれば負け。殺すのはなし。一応、光属性の技能を持った回復役が控えているが、殺さないようにするのが暗黙のルールだ。フェアプレイの精神だな。
今日は全部で3戦。戦う相手はすでに決まっていて、4人のうち勝利した2人がそのまま決勝戦という形で優勝を争うそうだ。
最初の対戦は、リンカが出るらしく相手はリンカと同じ鬼人族の男性。
へー、ここまで残るなんてリンカって強かったんだな。
でまあ、リンカがこの武闘大会に参加した理由が自分より強い相手を探すこと。つまり、アリックスがオレを呼んだ理由は、オレにもリンカが参加する理由を作った責任があるということで、リンカの行く末を見届けてほしいそうだ。
ふむ、もしかすると、この戦いの結果で、あの対戦相手がリンカの運命の相手になるかもしれないということか。ならば見届けようではないか。
それはそれとして、純粋にここまで勝ち上がってきた猛者の戦いに興味があるしな!!
審判役の人が石舞台にあがり選手の入場を促した。
特別席には王様とその奥様の第一王妃がいた。王様から挨拶でもあるかと思ったが、それは昨日済ましてあるので今日は無しだ。
ん?よく見ると、王様と離れたところに、エヴァとシャノワールの生徒であるプティーがいる。エヴァは公爵家だからわかるけど、プティーはどういうことだろう。意外と高貴な血筋の子なのかな。
お、色々と眺めているうちに、リンカと対戦相手が石舞台に上がってきたな。
リンカは相変わらず綺麗な直毛の黒髪ロングで角は髪に隠れてるので見えない。薄いピンク色の肌で、人族と肌の色が少し違うのが特徴的だな。
装備は速さ重視の軽装で武器は黒いロングソード。
あれは不壊の剣か、ちゃんと手に入れてたんだな。
相手の対戦相手は、身長が高いな・・・2メートルくらいありそうだな。肌は赤く頭からは肌と同じ赤色で立派な角が2本出ている。
武器は大剣を片手で軽々と持ち上げている。
2人とも準備ができたところで、戦闘開始の合図で戦いが始まった。
リンカも鬼人の男も剣を構え、まずは様子を見ている。じりじりと間合いを詰め、リンカが先に動いた。相手の大剣を見て自分の方が速度が速いと考えたのだろう。しかし、リンカが鬼人の男に近づこうとした瞬間に、ものすごい速度で大剣が振り下ろされる。
リンカは咄嗟に向きを変え、何とか鬼人の男の横を通り過ぎる。
鬼人の男が振った剣圧で石舞台に砂埃が舞った。
リンカは体勢を崩していたが勢いを殺さないように前転を行い、鬼人の男へ向き直る。
「っへ、今のを避けるとはやるじゃねえか」
「ふー、あんたも鈍重かと思いきや、やべえくらい早く大剣を振るいやがるねえ」
男がリンカに言い放ち、リンカもまたそれに応える。
一瞬の攻防、それをみた観客達から歓声が沸き起こった。
お互いに軽く呼吸をした後、再びリンカが鬼人の男へ向かって駆け出す。
結局のところ大剣のほうがリーチが長く、リンカが攻撃を当てるには近づくしかない。そして、鬼人の男も先ほどの攻撃が避けられたのを警戒し、剣をコンパクトに構える。威力よりも速さ重視でいくようだ。
リンカが相手の間合いに入る。
その瞬間またも鬼人の男が剣を振る。
大剣がリンカの右から袈裟斬りで迫り、リンカはそれに対して不壊の剣で立ち向かう。そして、2つの剣が剣身で重なり音をだす。
鬼人の男が先ほどよりは力を込めていないとはいえ、重さが乗った大剣相手では分が悪いかに見えたが、リンカは大剣をロングソードである不壊の剣で受け止めていた。
ほお、あれを受け止めるのか。並みの剣なら折れてるところだな。けど、それよりもすごいのは、あの大剣を受けとめるだけの力がリンカにはあるってことだ。恐らく何かしらの技能によるものだろうな。いいねえ、熱い展開じゃないか。
リンカが気合を入れて雄叫びをあげる。
「あああああああ!!」
そして、力を込めて大剣をなぎ払った。
大剣を弾かれた鬼人の男に隙が生じ、リンカはそこへ剣を一閃する。
綺麗に入ったように見えた攻撃だが、鬼人の男はすぐに大剣を構えなおし、リンカを攻撃した。
それに気づいたリンカは身を低くし攻撃をやり過ごす。そして、一旦大剣の間合いの外へ飛び退いた。
リンカが鬼人の男に攻撃が効いていないのを見て悪態を吐く。
「っち・・・、攻撃が入ったのに大して効いてないか。やっかいな技能を持ってるねえ」
それに対して鬼人の男は愉快そうに笑いをあげた。
「ははは、俺に一撃を与えるとはお前さんやるな!しかし、やっかいな技能というなら、そちらもそうだろう。さっきの馬鹿力は驚いたぞ」
「そらどうも!」
話もそこそこにリンカはさらに鬼人の男へ攻撃を仕掛ける。それを大剣で受ける鬼人の男。リンカの技能によって威力の上がった攻撃に、鬼人の男は大剣で受けざるを得ない。しかし、相手もただ受けるだけではなく、時にはリンカへお返しにとばかりに大剣を振る。
大剣と不壊の剣が何度も衝突してはお互いを弾き返す。
そして、リンカと鬼人の男は何度も剣を交えながら、お互いに笑みを浮かべていた。それは鬼人族の本能故か、あるいは強い者と出会ったことに対する喜び故か。
そうして何度目かの打ち合いの後、鬼人の男がリンカに話しかけた。
「おまえさん、本当に強いな!よし、おまえさんを俺の4人目の妻にしてやる。どうだ?俺くらい強ければ文句もないだろう?」
「っは!上から偉そうに言ってんじゃないよ!しかも4人目だ?アタイはそんなに安い女じゃねえよ」
「ん?人数に拘っているのか?言っておくが俺が妻にしたいと言ったのはおまえさんが初めてだぞ。3人の妻は、皆俺の強さに惚れ込んで、向こうから言い寄ってきたんでな。はっはっは」
鬼人の男の発言に若干引き気味に答えるリンカ。
「今の話で笑うとこあったかい・・・?」
リンカに構わず話を続ける鬼人の男。
「それに、鬼人族の女は強い男の子供を産めればいいんだろうし、強ければ問題なかろう?」
「強ければ問題ないだあ?そういうことは、まずはアタイに勝ってから言うんだね!それに、あんたの言い方だと鬼人族の女が子供を産む道具みたいに聞こえ・・・」
リンカは鬼人の男に対して返事をしている最中に、何かに気づいた顔をして言葉を止めた。
(そうかい・・・、そういうことか。アタイは旦那にも同じようなことを・・・)
「どうした?何か気に障ったか?」
「っへ、別に。自分自身の馬鹿さ加減に気づいちまっただけさ。無駄話は終わりだ。さっさと決着をつけようじゃないか」
「それもそうだな」
そして、再び剣を構える2人。ただし今度はお互いが必勝の一撃を決めるための構え。
そして、初めて鬼人の男が動いた。大柄な体には似合わないほどの速さでリンカへと近づく。リンカはそれに合わせて渾身の一撃を振るう。
その一撃は見事に鬼人の男に入った。
しかし、相手の技能を破るには至らず、変わりに鬼人の男の一撃はリンカを石舞台の場外まで吹き飛ばしたのだった。
「勝負あり!」
審判の声により試合はリンカの負けで終わった。
試合を見ていたメルトが知らずに入っていた体の力を抜いて話しかけてきた。
「ふうー。いやすごい戦いでしたね。鬼人族の人っていうのは頑丈とは聞いてましたけど、何て言うか反則的な気がしますね」
「あれは技能によるものだと思うけど。それでもそこらの種族よりは頑丈だろうな。力も強いし」
「ですねー」
そして、そこへアリックスが話しかけてきた。
「すいません、メルトさんにシュンさん。リンカの様子を見にいきたいので、少し離れますね」
「お姉ちゃん。わ、私も一緒にいく」
オレもメルトも問題ないと返事をして、アリックス達はリンカの元へ向かって行った。
終わってみればリンカよりも対戦相手のほうが強く、リンカの言っていた自分より強い男に出会えたわけだ。これでリンカの目的も果たせるだろう。
まさに、俺より強い奴に会いに行く!を地で行ったわけだな。
オレがうんうんと1人で頷いていたらメルトが喋りかけてきた。
「ところでシュンさん。アリックスさんがわざわざ武闘大会にシュンさんも誘ったのは、さっきの黒髪の女性絡みですよね?」
「ああ、一応な」
オレの返事に何かを考え込むメルト。
「シュンさん。俺がとやかく言うことじゃないんで何もいいませんけど、アーティを悲しませることだけはしないでくださいね」
真剣な顔でオレを見つめてくるメルト。
「わかってるよ。・・・お義兄さん」
「それ、二度と言わないでくださいね」
顔に青筋をたてて笑顔を作るメルト。
ちょっとからかいすぎたな、すまん!!
そうして、次の試合が始まるのだった。




