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いつもお読みいただいてありがとうございますー。
今回は長くなってすいません、アイエエエ!
10
講師を無事に終えた次の日、ようやく王都観光ができると思い、宿を飛び出そうとしたらアーティに捕まった。
露店はいいのかと聞くとメルトと交代で手伝っているので今日は休みらしい。
ちなみに、どこでそういう話になったのかというと、オレが宿の入り口を潜った時に、入り口の近くに立っていたアーティがオレに声をかけてきたのだ。
「シュンさんもこれからお出かけですか?奇遇ですね、私もなんです」
そう言ってアーティはオレに笑顔を向けてきた。
「・・・明らかに入り口で待ってたように見えたけど?」
「偶々です」
「そうか」
「はい」
お互い笑顔で沈黙の時間が流れる。
「それじゃ」
オレがアーティの横を通り過ぎようとすると。
「あーあー。年上なのに年下の女の子を1人で置いていくんですねー」
っく、人聞きの悪いことを言いよる。
「いや、アーティも予定があるから外にいたんだろ?なら、オレが邪魔したら悪いじゃないか」
「大丈夫ですよ。その予定はシュンさんと王都観光することですから」
それは、オレの予定のことが考えられていない・・・。まあ、どこを観光するとか決めてなかったから別にいいんだが・・・。
「私のほうが少しは王都を案内できると思いますよ?それともお邪魔ですか?」
アーティが少し不安そうにオレを見上げてくる。
「むう、わかったよ。じゃあ案内を頼むよ」
やれやれ、甘いなオレも・・・。
「はい、喜んで」
それからアーティの案内で王都の市場や名所などを巡り、お昼の鐘が鳴ったのでお店でお昼を食べることにした。
食事をしながらオレはアーティに話しかけた。
「アーティは王都の名所なんてよく知ってたな」
「えへへ、色んな人に話を聞きました。情報収集は冒険者の基本だって誰かさんが言ってましたので」
アーティはニコリと笑ってオレに返事をする。
誰かさんて誰だよ。いや、オレか・・・。昔にそんなことを行った憶えがあるな。
「それを言った誰かさんは大した人間だな」
オレがそう言うとアーティは笑い、オレもつられて笑った。
その後、お昼を無事に終えたオレ達は、アーティが行きたいところがあるというのでのんびりとそこへ向かうことにした。
着いた場所はちょっとした広場で、王都の時を告げる鐘を吊るした塔が見える場所だった。そして、鐘の近くまで登れるということだったので、2人で登ることにした。
「ほー、これはすごいな、王都の全域に音を響かせるとなると鐘もすごい大きさだな」
オレは近くに見える鐘の大きさに圧倒される。
「そうですね。それに、いい眺めですよ」
アーティに言われ、オレも風景を眺めると、流れてくる風が気持ちいい。
うん、何て言うか・・・。これデートだな。まあ、今更か。
2人並んで遠くを眺めているとアーティが口を開いた。
「ねえ、シュンさん」
「ん?」
「シュンさんが私を異性として見ないのは何でですか?」
いきなり何を聞いてくるんだこの子は・・・。何と答えたもんかな・・・。
「そうだな・・・。年が離れ過ぎなのと、アーティはこれから色んなことを経験していくと思うし、出会いも増えていくだろ?もしかしたら、年が近くて気の合う奴と知り合うこともあるかもしれない。オレみたいなおっさんといるよりも、そっちのほうがいいと思ったからかな」
「それだけですか?」
アーティがオレの方を向き、まっすぐに目を見つめてくる。
やれやれ・・・、そんな理由じゃ納得しませんてか?
「・・・他にもあるな。今から話すことは、誰にも言わないと約束してくれ。もちろん、メルトにもだ。約束できるなら話すよ」
「約束します」
即答かよ・・・。
オレは深呼吸してからアーティに話した。
オレが普通の人族と違うこと。神の力を持っていること。その為見た目の老化が遅いのもそれが理由だということを。
異世界人のことは、話す機会あれば話すことにしよう・・・。
「にわかには信じられないですけど、見た目に関しては納得しました」
「ま、そうだろうな。証拠を出せと言われても困るし、信じないならそれでもいいさ」
「エリスさんはこのことは?」
「もちろん全部知ってるよ」
「そうですか・・・」
無言になるアーティ。
はあ、これで諦めるかね。まあ、アーティが誰かにこの話をしたら、その時はその時だ。どうとでもできるさ。
「じゃあ、私との年が離れてることについては問題ないですね」
「どうしてそうなる!?」
「だって私の方がシュンさんより早く年をとるわけですから、歳の差なんて小さい問題じゃないですか?」
「いや・・・んー?そうなのか・・・?」
オレは頭を捻る。
「それに、シュンさんの言った内容って全部シュンさんの都合で、私のことを考えてくれるのは嬉しいですけど、私の気持ちが考えられてないですよ」
「そりゃ、アーティの気持ちをオレは知らないからな・・・」
オレの一言に信じられないという顔をするアーティ。
「ひどいです!これでも結構わかりやすくしてるつもりだったのに!」
続け様に顔をオレに近づけて怒ってきた。
「そ、それは悪かった・・・」
「はあ・・・、本当に相手にされてなかったんですね・・・」
オレは何といえばわからず、頭をかいてしまう。
「シュンさん」
「は、はい」
アーティはオレの目を見つめながら口を開く。なぜかその声はとてもよく聞こえた。
「私はシュンさんのことを1人の男性として好きです。そもそも年齢を知る前から好きだったんですから、シュンさんの年は関係ないです。それと、これでも冒険者になってから、そこそこ男の人から告白された事もあるけど、全部断ったんです。何でかわかりますか?」
「・・・オレが好きだから?」
「そうです。シュンさんの事情は正直難しくてよくわかってないですけど、大丈夫なんとかなります!」
「わかってなかったのかよ・・・」
オレは思わずじと目になる。
「年下の女の子がここまで言ってるんですよ?年上のおじさんならきちんと返事をしてくれますよね?」
ふー、まいったね、これは。
「最後に聞かせてくれ。どうしてそこまでオレを好きになってくれるんだ?それに、オレはエリスがいるって知ってて言ってるんだよな?」
「きっかけは助けてくれた姿が格好良かったから。次は一緒にいて楽しかったから。なにより、一緒にいたいと思ったからです。大そうな理由なんてありません。エリスさんには、許してもらえるように説得します」
ニコリと自信たっぷりに笑うアーティがとても可愛く見えて、不覚にもときめいてしまった。
オレは一度空を見上げてから、胸いっぱいに空気を吸って吐く。
それから、アーティを見て。
「帰ったら2人でエリスを説得だな」
「それじゃ?」
「ただし、アーティが18歳になるまで色々お預けな」
「えー!何で18歳なんですか?」
「そこはオレにも色々あるんだよ・・・」
前世の価値観とかそういうのがな・・・。
「しょうがないですね。じゃあ、ギュッとするくらいはいいですよね?」
そういうとアーティは手を横に広げた姿勢で立つ。
「それくらいなら。あと、手をつなぐとかそういうの別にもいいよ」
やれやれと思いながらも新しい恋人のわがままを叶えようとアーティへ近づく。
「すきあり」
オレがアーティの背中へ手を回そうとした時に、アーティが自分の唇をオレの唇に触れさせる。
すぐに顔を離してオレの胸へ顔を埋めて、オレを抱きしめた。
「へへへ。これくらいはいいですよね」
オレは思わず苦笑いをしてしまう。そして、アーティの耳を見たら真っ赤になっていた。
恥ずかしいならしなきゃいいのにな・・・。
そう思いながらも、アーティの頭を撫でてやる。
こうしてしばらく2人の時間を過ごしアーティと宿へ戻ったのだった。
11
その日の晩、メルト達と夕ご飯を食べていたら武闘大会を観に行こうと誘われた。
なんでも、アリックスが露店にきて石鹸を買っていったそうだ。
その時に武闘大会の観戦券が余ってるので皆でいきませんか?と誘われたらしい。
オレはエールを飲みながらメルトに言う。
「そういうのって、皆でと言いながら2人で行きましょうってお誘いなんじゃないのか?」
オレの言葉にメルトは少し狼狽える。
「え?そうなんですか・・・?アリックスさんからはシュンさんも誘ってくださいと言われたんですけど・・・」
オレを・・・?何だ?何を企んでいる・・・?
「確かに武闘大会には興味はあるが、どうしようかな・・・」
悩むオレにメルトが熱く語るには、武闘大会は予選を突破した8人の勝ち抜き戦で、どの人も予選を突破しただけあってかなりの猛者ということだ。なので、毎年人気のある催しらしい。メルトも興味はあるけど観戦券を入手できず、今年も見れないと思っていたところに、アリックスからの誘いがあったとのことだ。
「予選なんてしてたのか?」
「毎年何日かかけて予選はしてますよ。観戦できるようになるのは予選を勝ち抜いた8人が戦う本戦だけですけど。ちなみに、すでに最初の戦いは終わって残り4人になってます。だから、明日の試合を見れるなんて一生に一度あるかないかですよ!!」
暑い・・・、暑苦しいよメルト君。メルトも男だったんだなー。かわいい顔をしてるからついつい内気な印象を持ってしまうよ。
「わかった。そういうことなら一緒にいかせてもらうよ。オレも他の人の強さと気になるしな」
「やった!じゃあ、明日は朝から約束してますんで、宿の入り口で集合してから一緒に行きましょう」
「わかった」
そう言って、オレは料理を食べつつエールで流し込む。
くー、この肉の濃い味付けがエールに合うじゃないか。
それを眺めていたメルトがオレに声をかけてきた。視線は微妙に右にずれているが。
「ところで・・・」
「ん?どうした?」
「いえ、敢えて何も言いませんでしたけど、そろそろ突っ込むべきかと思って・・・。そのシュンさんの左腕を掴んでいるウチの妹はどういうことなのかなと・・・」
オレは左を見るとアーティがいて、オレを見るとニコっと笑顔を作った。
オレは1回頷いてからメルトに顔を向け。
「お義兄さんと呼んだほうがいいか?」
「絶対やめてください」
目がマジなメルトに睨まれたので、オレの力のことなどは省いて、事情を説明することにした。
メルトはアーティがいいなら俺は何も言いませんよ、ということだった。
アーティの左隣に座っていたニーナからは、呆れたような顔をされたがそれだけだった。
まあ、何を言われたとしても受け入れようじゃないか。
そんなわけで、オレ達は武闘大会を見に行くことになった。
人物会話が増えると文字数が増える法則。
あると思います。
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