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今日も読んでいただいた方へ、感謝っ・・・!圧倒的感謝っ・・・!
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講師をする日が来てしまった。
というわけで、オレはシャノワールの部屋に来ている。
ニーナはオレが教えてる間は暇になるので、図書室で魔法の本を読むらしい。
しかしなあ、今更だが教える生徒というのは貴族の子供達なので、変な言いがかりを付けられて面倒なことにならないだろうか・・・。
そんな話をシャノワールにしてみたら、この学院に来る子達のほとんどは貴族の次男や三男、あるいは爵位の低い長女や次女らしい。というのも、長男なら専属家庭教師を雇うし爵位の高い女の子というのは、早くから他の貴族との縁談などがあるので、家で蝶よ花よと育てるらしい。
したがって、ここに来る子達のほとんどは将来の職の為に魔法を学ぶか、他の貴族とつながりを持つ為に通う子達なので、あまり問題は起きないそうだ。
中には爵位の高い貴族の子もいるが、そういうのは特別教室に集めて、専用の先生が教えてるそうな。
まあ、考えてもしょうがないか。
そろそろ時間なので演習場に行こうかね。
シャノワールに声をかけて演習場へ向かう。その道すがらシャノワールから、1人だけ他国からの留学生で魔法を学びにきている子がいるという説明を受けた。なんでも、東の国から来た子らしい。
他国から来たといってもここでは一生徒として過ごしているので、他の子達と同じように接してくださいと言われた。
他国の貴族なのかな?まあ、ここまで来たら好きにさせてもらおうかな。気にせずいくとしよう。
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演習場に行くと生徒達8人が待っていた。
男子5人に女子3人、全員10歳だ。
今日は他にも魔法の訓練をしている生徒がいるから、魔法を使うときは周りに気をつけないといけないな。
シャノワールが生徒達を呼び皆を集めるとオレの紹介をしてくれた。
「今日の訓練では外部講師をお呼びしました。普段私が教えること以外にも色んな考え方あるので、今日はそれを少しでも学べるように、講師の方の話をよく聞いてください。それでは、シュンさんよろしくお願いします」
「皆さんこんにちは。冒険者をしているシュンだ。シャノワール先生とはちょっとした縁があって講師を頼まれました。今日は皆さんの魔法の指導をしたいと思います。よろしく」
オレの挨拶に、生徒達はよろしくお願いしますと返事をしてくれる。
ふむ、皆素直でいい子達みたいだな。
「じゃあ、まずは1人ずつ得意な魔法を使ってもらおうかな。あと、君達が魔法を使うときに背中に触れさせてもらうけど、なるべく気にしないようにしてくれ。それから・・・」
オレは魔法の的を作ろうと演習場を見まわして、生徒のいない壁際に的を作ることにした。
「じゃあ、オレがいまからあそこに的を作るから、各自その的を狙って魔法を使ってくれ。その後、オレが気になる部分を言うんで、それを聞いたらシャノワール先生の所へ行って練習してくれ」
オレは壁際を指差しながら生活魔法(極)を使って的を作る。それを見た生徒達はこんな風に魔法を使うのを見たことがなかったのか、なんだあれ、すげー、魔法?などなどいい反応をしてくれる。
掴みはいいんではなかろうか。
「じゃ、1人ずつやっていこうか」
最初は金髪の男子、火属性の技能持ちということで初級魔法の炎弾という火の玉を放つ魔法を使ってもらった。
彼の背中に手をあて、彼が魔法を放つときの魔素の流れを読む。ふむふむ。
「君は魔素が体を通ってから魔法が組み上がるまでの時間が少し長いな。君が放ちたい火の玉の形をもっと明確に想像できるようにするといいよ。シャノワール先生に、炎弾の見本を見せてもらって、その形を覚えるようにすればいいんじゃないかな」
「はい、わかりました」
そういって1人目の生徒をシャノワールへ送る。
ちなみに、この方法をシャノワールに言ったら、私の時も同じ方法でよかったじゃないですか!?と顔を赤くして怒られた。
ちゃうんやで・・・、シャノワールに試した後で思いついたんです・・・。決して他意があったわけではないと言っておこう。
次は、水色の髪をした男子。
最初の子と同じく火属性の技能持ちだったので炎弾を使ってもらう。
「君は魔法が発動するのに必要な魔素を送る速度が遅いので、一度魔素を集めてから、一気に送るように意識して魔法を使う練習をするといいかもな。シャノワール先生の近くで、使ってない的に向かって練習してみな」
「はい!」
3人目の生徒は金髪で軽くウェーブがかった女子だ。
水属性の技能持ちなので、水弾という水の玉を放つ魔法を使ってもらう。
子供とはいえ貴族の女子だ、一応声をかけておこうかな。
「背中、失礼するね」
「は、はい。よろしくお願いします」
彼女が放った水の玉は綺麗に的に当たり水が弾けた。
おや、この子は魔素の集め方も流し方も完璧だな。いいセンスだ。
思わずどこかのボスのような反応をしてしまうな。
「君の水弾は完璧だな。才能あるよ」
「え・・・?才能が?私に・・・?」
「ああ、どうかした?」
「あの・・・、私家では魔法の才能がないと言われてて・・・。姉がいるんですが、姉は私の年齢の時には中級の水魔法を使えたそうなんです。でも、私はまだ水弾くらいしか使えないので・・・」
「ああ、そういうことか。それは、君が魔素を集める量が足りてないだけで、きちんと魔素を集めれば今すぐにでも中級の水魔法を使えるよ」
「そ、それは本当ですか?」
「本当、本当。けど、今の君が集めれる魔素の量が少ないので、集める練習をしないとね」
「ど、どうすればいいんでしょうか!?」
すごい勢いで詰め寄る女児。いや女子か。
「君は1日何回水弾を打てる?」
「えと、10回から11回くらいでしょうか」
「なら、明日から12回使うようにしよう。次の日は13回。限界と感じた時から1回多く魔法を使う訓練をするといいよ。ただし、必ず誰かと一緒に訓練すること。おそらく魔素酔いになるから、万が一気絶してもいいようにね」
「はい!わかりました!」
そう言ってシャノワールのところへ駆けて行った。
いい返事だ・・・。是非魔素酔いの苦しみを超えて欲しい。
その後も他の生徒へ助言をしつつ、いよいよ最後の1人となった。
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最後の1人は黒髪で頭に簪をさしている女子だった。
この世界にも簪ってあるんだな。
王都なら簪とか売ってそうだけど、黒髪で簪っていかにも東洋人って感じだし、恐らくこの子が留学生だろうな。
「君で最後だな。よろしく、あと背中に手を当てさせてもらうな」
「はい、お願いします」
と、返事をしてくれたが簪の子は何故かオレをじっと見つめてきた。
「どうかした?」
「あの、以前お会いしたことはありませんか?」
こ、これは、逆ナン?けど、ごめんな。さすがに犯罪だよー。
「いや?初対面だと思うけど?オレは王都に来たのも初めてだし」
「そうですか・・・。すいません、変なことを言って」
「大丈夫だ、問題ない。それじゃ、やろうか」
「はい」
簪子ちゃんは闇属性の技能持ちだ。闇属性とは珍しいな。闇属性は攻撃よりも相手を拘束したり、自分の姿を隠したりといった搦め手が多い。とはいえ攻撃魔法もちゃんとある。
簪子ちゃんは、闇針という影から黒い針が飛び出す初級の闇魔法を使った。
影から飛び出した黒い針は土の的を粉々に砕いていく。
おかしい・・・、魔素の量や魔法の発動の速さは文句のつけようがないものだった。しかし、初級の魔法で的が壊れるなんてありえない。
オレが固まっていると、不安に思ったのか簪子ちゃんがオレに話しかけてきた。
「どうでしょうか?」
「いや・・・、君に関しては特に気になる部分はないかな・・・。それに、初級魔法であの威力ってすごいな・・・」
オレの反応に何か気づいたのか、簪子ちゃんは先ほどの魔法の説明してくれた。
「それは、恐らく私に与えられた加護の力によるものだと思います。私、ここより西方にある国オステンエストから参りましたプティーと言います。一応、自国では巫女をしておりますので」
ほほう・・・。巫女とな・・・。これは近づいたらいかんやつですな。まあ、講師が終われば会うこともないだろうが、一応警戒しておこう。神様の関係者とはなるべく距離を置いておきたい・・・。
結局プティーが魔法を使うと神様補正がかかって威力マシマシになるので、オレでは手に負えないということで、今のまま頑張って欲しいということで落ち着いた。
こうしてオレの講師は終わった。
今後の生徒達の成長具合は、シャノワールが手紙で教えてくれるんだってさ。
その報告はいいけど、できれば講師はこれっきりにして欲しいもんだ。
フラグとかじゃなくてな!
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