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いつもお付き合いいただいている方々ありがとうございます。
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夜営の準備をする前に、辺りに魔物などがいないかを確認しておく。
大丈夫そうだったので、夜営場所に戻るとニーナが若干青い顔して座っていた。
そういえば、馬車酔いするって言ってたな。
座っているニーナに声をかける。
「大丈夫か?」
「うー、師匠・・・。なんとか大丈夫です」
「馬車酔いか?」
「はい・・・、流石の公爵家の馬車なので、馬車のゆれは少しはマシでしたが、やはり気持ち悪くなってしまって・・・。途中、何度かエヴェ様が精神を落ちつかせる魔法を使ってくださって何とか耐えれました」
難儀なやっちゃ・・・。
「ほら、これ舐めてろ」
オレはポーチ型魔法袋から蜂蜜で作った飴を取り出してニーナに渡す。
乗り物酔いは三半規管がバランスを崩すことで起きるから、唾液を分泌させることで三半規管を正常に機能させる事ができるらしい。
なので、この蜂蜜飴だ。
「ありがとうございます。師匠。んー!甘いです」
口に含んだ飴を舐めた時に、蜂蜜の甘さを感じたのだろう。ニーナはコロコロと上機嫌に飴を口の中で転がす。
「こんな良い物を隠してるなんて、相変わらずズルイですね師匠は」
「数に限りがあるからほいほい出せないんだよ。エリスには内緒だぞ。もう蜂蜜がないんだ・・・」
「・・・わかりました」
これがバレたら蜂蜜を取りに森まで行かされてしまうだろう・・・。
「何が内緒なんですか?」
ニーナと話していたらいつのまにかエヴァが近くにいて話しかけられてしまった。
「いや、なんでもないよ」
とりあえず、惚けとこう。
エヴァはオレを見てニッコリと笑った。
「へー、ニーナさんだけ美味しそうな物を食べれていいですねー」
ちゃっかり見てるじゃないか・・・。中々いい性格してるなこの聖女様は。
オレは思わず口をへの字にしてしまう。
しょうがない、ここは賄賂を送っておこう。
「どうか、これでお一つ・・・」
「はい、これで私も共犯ですね、ふふ。ん!おいひい。甘いです!!」
女子は甘い物好きだね。
エヴァは年相応の顔をして蜂蜜の甘さに顔を蕩けさせていた。
まあ、これだけ喜んでくれたらいいか。
おっとこうしちゃいられない、そろそろ寝床の準備をしなければな。
今回は人数が多いので、男性と女性で分けることにしよう。
オレは生活魔法(極)の土系統の力を使って立方体のブロックを作り出す。その中身をくり抜き空洞にしたら、入り口の為に四角い穴を開け第一段階完了。
今回は、女性3人が寝れるだけの広さを確保しているので、そこそこでかくなっている。
中に入ってベッドを3つ作成して窓も作る。窓は網状にして外からの侵入が簡単にできないようにしつつ、空気が通るようにしておく。しかし、女性陣は6人いるのでこれではベッドも広さも足りない。
という訳でもう一度外に出て、同じ大きさの立方体のブロックを最初に作った箱家の真下に出現させる。2つ目のブロックも中を空洞にしてベッドと窓を作る。そして、入り口から見て正面の壁に階段を作り、上に乗っている最初の箱家と繋げると、2階建の箱家の完成だ。
あとは、部屋の隅っこに壁を新たに作って、手洗いも作っておく。1階と2階に手洗いを作り、2階と1階の排水は地中深くで合流するように縦穴を掘っておく。手洗いといっても、流す用の水瓶と洋式の便座があるだけだが・・・。
ちなみに、不本意ながら今回はお風呂は無しだ。公爵令嬢がいる以上、ラッキースケベで誰かの首が物理的に飛ぶなんてことがないようにだな。
前回の依頼の時はニーナがいた?ちょっと何言ってるかわかんないすね。
オレの近くまできたニーナが箱家を見て話しかけてきた。
「前のと違いますね。今回は壁で周りを覆わないんですか?」
「人数が多すぎて、壁で覆うと場所をとりすぎるからな」
「なるほど」
「ちなみに、1階がメイア達3人で、2階がニーナと、エヴァ達ね。中の説明と手洗いについては説明しておいてくれ。オレは男性陣のほうを作ってくる」
「わかりました」
オレは続いて男性陣の方の箱家を作った。男性も5人いるので、2階建で同じように作った。
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周囲に魔物除けを設置してた男性騎士3人とメイア達3人が戻ってきて箱家を見て驚いてた。男性陣にはレインさんに、女性陣にはニーナに中の説明をしてもらった。
そして、エヴェのお付きのメイドさんが夕食を作ってくれることになったのだが、いかんせん人数が多すぎるのでオレも手伝うことにする。
とりあえず、かまどは鍋を温める用と鉄板を置く用の2つ作る。さらに、食材を切るようの台をつくって準備完了だな。
メイドさんがその光景を見て呆然していた。
「す、すごいですね・・・。あっという間に台所ができました」
「台所というには少々形は不格好だけどね」
オレは苦笑して答える。
「ちなみに、食材は何がある?」
オレがメイドさんに聞くと、彼女は今回の旅の為に公爵家から持ち出した魔法袋の中を探る。
「えと、保存の効く野菜が数種類と、お肉は干し肉ですね」
「なるほど、干し肉はスープに入れようか。野菜もスープにできそうなのは入れて煮込んじゃおう。後は、焼いて食べれる野菜はある?」
「はい、それならこれがいいと思います」
よし、大体献立は決まったな。オレは生活魔法(極)で水球を出して野菜を洗っていく、その間にメイドさんは寸胴鍋をセットして自分で火をつける。
そこでメイドさんがオレに声をかけてくる。
「あ、すいません。お水をいただけますか?」
「あいよー」
オレは水球とは別に新たに鍋に水を出してあげる。
「ありがとうございます」
もはやオレの魔法に慣れたのか驚くことなく順応するメイド氏。
中々心が強いな、順応力が高いのはいいことだ。
その後、メイドさんはスープを作り、オレは野菜炒めを作った。
スープは干し肉にある程度味はついているが微妙な味だったので、手持ちの香草と塩で味を整えた。野菜炒めには、先日森で狩った猪肉を少し出して炒める。味付けは塩だけだが、無いよりマシだろう。
てことで、テーブルを2つ作って配膳していく。
エヴァと騎士6名は、オレが簡単に土から色々な物を作るのをみて、口を開けて呆けていた。それを見て、レインさんとニーナがうんうんとしきりに頷いていた。
わかるぞーみたいな顔を2人がしているのが解せぬ・・・。
その後、見張り役と交代で食事を取っていく。それ以外の面々は作った料理を美味いと言いながらバクバク食べていた。
そうして夕食が終わり、見張りは男性騎士から1名、メイア達から1名、男性女性各1名ずつの交代制でいくそうな。オレは色々と夜営の準備をしたから免除してくれた。ありがてえ。
そんなわけで無事に1日目は過ぎていった。
お気づきの方がいるかもしれませんが、
4話は話数稼ぎの為に細かく刻んでおります。
申し訳!




