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オレは少女Aちゃんの方を向き、
「さて君は、回復系の技能があるって感じかな?」
「は、はい。」
こつかれた頭を回復していた少女Aちゃん改め僧侶さんは、どもりながらオレに返事をしてくれた。
立ち回りに不安はあるが、あの2人がいるなら大丈夫だろう。それに、回復役がいるのといないのとではパーティーとしての安定性も違うしな。
「なら、あそこで蹲ってる彼を回復させてくれるかな?ここで寝転がってるのは、もうちょっとしたら回復するだろうから。」
「わかりました。」
しばらくして、回復した3人がオレのほうへやってきた。
「さて、3人のうち男子2人はいい感じの動きができてたんじゃないかな。あれなら、ゴブリンやウールラビットくらいなら楽に倒せるだろう。とはいえ、油断はしていいわけじゃないけどな。」
「俺たち、何もできなかったけど、それでもいいのかよ?」
と、不満気な顔した剣士君。
「ああ、別にオレに勝つ必要はないし、オレから見て、冒険者としてやっていけるかどうかを見るための戦いだし。結果はなんでもいいんだ。」
「そうなんですか。」
と、あからさまにほっとする僧侶さん。
「とはいえ、ここからは最終確認だが、冒険者になるってことは、いつ魔物に殺されてもおかしくない生活を送るってことだ。痛い思いもするし、依頼によっては人も殺すこともある。それだけ、危険なことをしていく覚悟があるか?本当に冒険者になるって事でいいんだな?」
「ああ、俺らには冒険者になるしか道はねえ。村にいても碌な仕事なんてないんだよ・・・・・。」
剣士君が切実な顔して返事をし、他の2人も似たような表情をしている。
まぁ、色々と事情があるんだろう。
「わかった。じゃあ、これで立ち合いは終了。オレから合格をもらったと受付に報告して、組合員証を発行してもらうといい。」
その言葉で、3人ともパッと表情が明るくなった。
「やったぜ!」 「やったね!」 「・・・やった。」
剣士、僧侶、武闘家の順で喜んでいる。
「あと、アドバイスってわけではないが、男子2人のほうは、経験を積んでいけばいいが、そっちの女の子は、男子2人が動くときに、立ちっぱなしはやめてほうがいい。いざ、戦いになった時に、最低限自衛できる手段をもつか、自分が狙われない動きを意識しないと、君を守るために2人が危険な目にあう可能性が高くなるぞ。」
「は、はい、わかりました。ありがとうございます。」
「んじゃ、解散。」
そう言うと3人は訓練場を出て行った。
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オレも受付のある場所へ戻ってきたが・・・・・・。
「おおう・・・、人がいっぱいだぜ・・・・・。」
立ち合いが終わると夕暮れの時間に差し掛かっていたために、依頼を終えた冒険者で受付が溢れていた。
依頼報告受付に列を作っている冒険者達、この時間は特に混み合うので、依頼報告受付は2つ用意されている。
それでも、なかなか人が減らないんだよな。
それを見越してか、酒場で一杯始めてるヤツラもいる。
うむ、買取受付のほうも、もちろん人が並んでいる。
しょうがない、臨時収入もあることだし、さっき頼めなかった酒でも頼んで、ゆっくり待つとしますか。
エールと一緒に、魔物焼きという串に刺さった焼き鳥のようなものを頼んだ。
まずは、エールをグイっと飲む前に、オレの生活魔法の1つ火系統の力を使ってエールから熱を奪い、キンキンに冷やす。そうして、コップへ口をつけ、ゴキュゴキュという音が聞こえそうなくらいの勢いで、エールをのどから胃へ流しこむ。
一気に飲みきると。
「くぅ〜、キンキンに冷えてやがるぜ!!」
と思わずつぶやいてしまう。
周りには聞こえてないと思うが、この世界にはエールを冷やして飲むという習慣はない。なので、エールを冷やすことができるとか、バレるとめんどくさいことになりそうなので、なるべくバレないようにしている。
飲み切ってしまったので、改めてもう1杯エールを注文しつつ、魔物焼きなるものを食べてみる。程よい弾力があり、噛むごとに肉の味が口に広がっていく。やや、甘めに感じる肉汁が美味い。
ちなみに、皆魔物とか普通に食べてる。もちろん、牛や豚といった家畜もいるんだが、魔物に食べらたりするんで、タンパク質の確保として魔物を食べるのだ。
調味料も開発されていないので、塩がうっすらとかかっているだけだが、塩ですらそれほど流通していない。塩が使われているだけギルドの酒場はマシなのだ。
買取受付の人数を見ながら、ちびちびと飲んでいると、ようやく受付に人が少なくなってきたので、オレも買取受付へ並ぶことにする。
ほどなくして、オレの番が回ってきた。というか、オレがどうやら最後らしい。
「お疲れ様、お肉の受け取りと依頼の報酬をもらってもいいかな?」
「お疲れ様です。ゆったりと待ってたみたいですね。」
うっ、見られてたのか。ニコリと笑うエリス、笑顔なのに怖いよ。
「買取受付が混んでたからさ・・・・。」
「フフ、すいません。あまりにも美味しそうに食べてるのが見えたので、つい、からかっちゃいました。」
「やれやれ、おっさんをからかうのは勘弁してくれ。」
「すいません。それでは、こちらがウルフのお肉と、買取料金に依頼料を合わせたものになります。お確かめください。」
「うん、問題ない。ありがとう。」
「いえ、こちらこそ、今日はいきなりの依頼を受けていただいてありがとうございました。」
「あれくらいならお安いごようさ。とはいえ、これは貸しかな?」
「貸し、ですか。なら、返さないといけませんね。」
「じゃあ、今度、ご飯でも奢ってもらおうかな?」
別に報酬ももらってるし、貸しでもなんでもないんだが、つい悪ふざけで言ってしまった。
「へ?」
しかし、エリスの反応は、オレの言葉が予想外だったのか、オレを見て固まってしまった。
あ、これセクハラとか言われちゃう系のやつか。いかん、いい年したおっさんが、若い子に集ってんじゃねえよとか思われてしまう・・・。
「いや、冗談、冗談だよ。おっさんが何言ってるんだって話だよな、ははは。」
「え・・・・?冗談なんですか・・・・。」
え?何その表情、今度はめっちゃシュンとしてるがな・・・・。おじさんどう反応していいかわかんないよ。
「え、あー、そのご飯を奢っていうのが冗談で、いやじゃなければ、一緒に食べようというのは冗談じゃないというか・・・。」
「ホントですかっ!今度は冗談じゃすましませんよ?」
今度は、すごい剣幕になるエリス。
「あ、はい。その代わり、オレはあんまり外食しないから、この街のお店とか知らないんで、お店選びはまかせたいんだけど、いい?」
「わかりました。いつにしますか?」
「あー、じゃあ、エリスの次の休みの日にしようか。オレも依頼とかその日に合わせて調整するし。」
「それでしたら、5日後ですね。」
「わかった、じゃあ5日後にしよう。」
「はい。楽しみにしてますね。」
「ああ、じゃあ、オレは帰るよ、またな。」
「お疲れ様でした。」
勢いでご飯にいく約束をしてしまったが、約束をした時のエリスがすごい笑顔だったんで良しとしよう。しかし、あの表情は、オレとご飯にいくことが嬉しいってことなのか・・・・?いや、いくら若く見えても中身はガチのおっさん。勘違いはするものじゃない。まぁ、考えてもわからんし、なるようになるだろう。と、少しモヤモヤしながら家に帰るのだった。
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