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今回も読んでいただいた方ありがとうございます。

14


「同行者に男性がいるとは聞いてません!」


開口一番(かいこういちばん)に、まだ名前も知らない女性から声を()びせられる。


オレ達の業界ではご褒美(ほうび)・・・、いやオレにそんな趣味はない。


そもそも、なぜこうなっているかというと。

エリスから村の作物(さくもつ)の調査依頼の話を聞いてから数日後。日程の調整ができたということで、エリスと共にクリオールの入り口にて、学者の人と顔合わせの挨拶をして、そのまま依頼のあった村に向かうという話だった。

そして、エリスと一緒に入り口へ向かい、学者の人に会った瞬間に言われたのが、聞いていないという発言だったのだ。


「お、落ち着いてください。男性がいると何か問題でもあるんでしょうか?」


「問題?問題しかないでしょう?男性なんて女性を見下すか、嫌らしい視線を向けては下品な発言をする。男性なんてそんなものでしょう?」


な、なんて偏見(へんけん)に満ちた発言なんだ。この世界に来てから、男性嫌いな女性ばかりに出会うが、この世界の男性の品性ってどうなってるんだろ・・・。


目の前の女性は、名前はわからないが、赤毛で前髪を(まゆ)あたりでそろえ、後ろ髪は肩を少し超えたくらいまで伸ばしている。切れ長の目をしていて気が強そうに見え、体型はスレンダーなのでカディアと気が合いそうだ。いや、カディアよりはありそうだ。女性的な部分が(とうと)いというか・・・。


「とにかく、一度冷静になって話を聞いていただけませんか?今更(いまさら)冒険者を変えることもできません。それに、彼なら心配いりません。私が保証いたします」


エリスが目の前の女性を説得している。ここは一先(ひとま)ず見守ろう。


「保証とは?一体どのように?」


「彼は私の恋人であり、ニーナ様に何かするような人ではありません」


どうやら目の前の女性はニーナという名前らしい。


「口だけならどうとでも言えます。ならば、もし彼が私に何かした場合、貴方はどうすると?」


「そうですね・・・。彼の大切なものを壊します」


「大切なもの・・・?それは何?」


「ナニ、ですね」


怖いわ!!なんの話してんだよ!?ていうか、前に良いオスにメスが寄ってくるのはしょうがない的なこと言ってなかった?向こうから来るのはセーフで、オレから行くのはアウトってことなのか・・・?


「わかりました。そこまで言うなら、貴方を信じましょう」


信じるんだ・・・。


「ありがとうございます。私は今回同行させていただく、冒険者組合職員のエリスと言います。そして、彼が冒険者のシュンさんです。よろしくお願いいたします」


「紹介を受けました、冒険者のシュンと言います。先ほどの会話で、ある程度(さっ)しましたので、依頼中はなるべく近づかないようにしますので、よろしくお願いいたします」


「何か(ふく)みのある言い方ですね・・・。私は、クリオールにて研究員をしているニーナ=バイシャンです。今回の調査を依頼されてきました。よろしくお願いします」


というわけで、出発が少し後れた気がするが、目的の村まで3人で向かうことになった。村までは歩いて2日ほどなので、途中で1回夜営をして、暗くなる前に村に入る計画だ。

はてさて、どうなることやら。



15


クリオールを出て半日ほど、太陽は真上に差し掛かり、そろそろお昼というところか。しかし、村までの道のりは予定より遅れていた。


「ぜえぜえ、はあはあ・・・」


「大丈夫ですか?ニーナ様」


心配してエリスがニーナに声をかける。


「だ、大丈夫よ・・・」


そう、ニーナの体力がなさすぎて、思ったよりも進んでいないのだ。ならば、馬車で行けばいいという話なのだが、ニーナは乗り物酔いをするらしく、村までの距離を考えたら徒歩でも問題ない。そのはずだったのだが。


「はあはあ・・・」


息も絶えだえとはこの事か。

しかし・・・、これは2日で着かないかもしれないな・・・。

とはいえ、休憩するにはちょうどいい時間だしな。

そう思い、ニーナに声をかけた。


「そろそろお昼ですから、一度休憩しましょうか」


「あ・・・、貴方が・・・しきらないでください」


「はいはい、わかりました。ただ、お昼の準備はしてよろしいですか?」


「はあはあ・・・、変な物をいれたらどうなるか・・・、わかってますね?」


「入れませんよ!!」


人をなんだと思ってるんだ・・・。


エリスとニーナの近くに、生活魔法(極)を使い、土を操作して椅子を作ってから、エリスに視線を送る。

オレの意図を察してくれたエリスがニーナを座らせてから、自分も隣に座る。


「これは・・・?」


「シュンさんの生活魔法で作った椅子ですね」


「エリス、これを持って少し動かないで」


オレは腰のポーチ型魔法袋から、コップを2つ取り出してエリスに投げる。

エリスはそれをキャッチして、片手に1つずつコップを持つ。

オレはそこに、生活魔法(極)でコップに水を入れた。


「汗もかいてるから水を飲みながら休憩しといて」


「わかりました。ニーナ様もどうぞ。魔法で作った水ですから安全ですよ」


「あ、ありがとうございます。今のも生活魔法・・・?」


「そうですね」


「そんな・・・、ありえないわ・・・」


ニーナが何やらコップの水を見つめながらブツブツいっているが気にしない。

さてさて、お昼の準備をしようかな。確か、オーク肉がまだ残っていたな。

よし、この後も歩くことを考えて、オーク肉を使って軽く食べれるスープにしよう。


まずは、生活魔法(極)の水系統の力で水球を作り、石鹸で手を洗ったら水球を使って泡を落とす。次に、土を()りあげてかまどを作ってそこへ鍋を置く。鍋に水を入れたら、火をつけて香草(こうそう)をちぎって入れていく。

続いては、横に土を盛り上げてまな板を置いてから、オーク肉を一口サイズに切っていく。切ったオーク肉を鍋に入れてから、亜空間から魚のアラでとった出汁(だし)を取り出して入れる。野菜も投入して最後に塩で味を(ととの)えたら完成だ。


「エリス、こっち来てスープをお皿に入れてあげて」


「わかりました」


エリスがスープを皿に入れている間に土を固めてテーブルを作る。


「ニーナ様、コップはそこに置いてください。エリスもスープを入れたらテーブルに置くといいよ」


「わあ、助かります。ありがとうございます。どうぞ、ニーナ様」


エリスがスープをニーナの前に置く。


「ありがとう。エリスさんは・・・、この椅子といい、テーブルといい驚かないのね」


「あー、そうですね。前もってこういう事ができるという話を聞いていたので」


「そ、そうなのね。シュンさんだったかしら?貴方ってすごい魔法使いなの?私は生活魔法でこんなものを作れる人なんて知らないわ」


「いえ?オレはただの冒険者ですが?それに、攻撃魔法を使えないので、戦う時は剣を使ってますしね」


「う、嘘でしょ!?」


「嘘なんてつきませんよ。それよりも、お昼にしましょう。まだ先は長いですから」


まだ何かを言いたそうにしているニーナだが、空腹には耐えれなかったのか、目の前のスープを食べ始める。ちなみにエリスはもりもりスープを食べて、すでに2杯目だ。


「お、美味しい!」


思わず声が出てしまうニーナ。それをはしたないと思ったのか、顔を赤くして黙々と食べ続ける。

っふ、勝ったな、がはは。

それはそれとして、ニーナの食べ方には品があるな。名字があったので爵位はわからないが、貴族には違いないだろう。まあ、そう思ったから様付けで名前を呼んでいるわけだ。


と、あまりじろじろ見たら失礼だな。

オレも自分のスープをさっさと食べようとしたら、小さな声でおかわりと、エリスに話している声が聞こえ、微笑(ほほえ)ましい気持ちになりながらスープを食べるのだった。



16


あれからも歩き続けたが、結局予定した場所までは進めなかった。まあ、わかっていたけどね。


「シュンさん、今日はここで野営にしましょう。ニーナ様もそれでいいですか?」


「ええ、大丈夫よ。ごめんなさい。私の体力がないせいで予定よりも遅れているわね」


「いえ、お気になさらないでください。体力は人によって違いますので、しょうがありません」


エリスがニーナを(なぐさ)めるのを聞きつつ、2人に声をかける。


「じゃあ、夜営の準備をするよ。ちょっとこっちへきてくれる?」


2人に少し近づいてもらい。オレを中心にして大体20畳くらいの広さになるように、四方に壁を作り出していく。


「な、何してるの?周りを壁で(かこ)った?」


「ええ、これで外敵(がいてき)からは簡単に進入できませんし、この時期なら夜もそれほど寒くなりませんから上は(ふさ)がなくても大丈夫でしょう。あ、寝る場所は流石(さすが)に屋根をつけるのでご安心を」


「ああああ貴方、ほんとにただの冒険者なのですか!?私も土魔法の技能(ぎのう)をもっていますが、それでもこんなことできませんよ!」


「あー、魔法系の技能は攻撃魔法に特化しがちですもんね」


「そういうことではありません!」


「え?」


一体何を言いたいのだろうか?それにしても、お昼を過ぎてからオレに対しての態度が(くだ)けてきているな。()えて何も言わないけど。


「いいですか?貴方が軽く作った壁ですけど、とても生活魔法でできることだとは思えません。実は未確認の新しい技能ではないのですか?もしそうなら、国へ報告するべきではありませんか?」


「いえいえ、本当に生活魔法ですよ。仮に新しい技能だったとしても、報告義務はないですし、人によって技能を隠してる人もいるじゃないですか。」


「そ、それはそうですが。・・・いえ、そうでしたね。失言でした。興奮してしまい申し訳ありません」


「いや、大丈夫ですよ。オレの生活魔法を見た人って、皆、同じような反応をしますので慣れてます。では、続きをしますね」


「これで完成ではないんですか?」


「いや、ここからベッドと、手洗い、お風呂とか作ります」


「は?」


オレの言ったことが理解できないのか、ニーナは(ほう)けてしまう。


まず、北側の壁際(かべぎわ)にベッドを3つ作る。ベッドといっても、長方形に土を盛り上げて固めただけだが。男性と女性を分けるべく、壁をベッドとベッドの間に立てて、ベッドが1つだけのスペースと、2つあるスペースを作る。最初に作った北側の壁を変形させベッドの上に屋根を作る。


それからオレは南側の壁まで行き、ベッドのある方から見えないようにする為に、西側の壁を一部変形させて、南側の壁と並行になるように新たに壁を作る。そして、地面に深く縦穴を開けて、その上に土を固めて洋式の便座を作る。便座の前に(かめ)を置いて、手を洗う用と流す用の水を入れておく。最後に屋根をつけたらトイレの完成だ。


次に、そのまま西側の壁にて、トイレから少し離れた場所に、北側と東側から見えないようにL字型に壁を作る。そこに湯船を作ってから隣にお手製(てせい)のすのこを置いて、その下に縦穴を掘っておく。ちょっとトイレに近いけど、そこは場所が限られてるので我慢して欲しい。

まあ、こんなもんでいいかな。


作業が終わったので、2人のところに戻り、寝る場所の確認と、トイレ、お風呂に入る時の注意点の話をしてご飯を食べた。

その間、ありえないと何度もいいながらご飯を食べ、お風呂を堪能(たんのう)し、ベッドぐっすり眠るニーナがいたのだった。

評価とブックマークしていただいた方ありがとうございまする。

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