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訓練場へ行くと程なくして3人がやってきた。
3人がオレの前まで来るのを待ってから、
「やあ、今回、君らの立会人になるシュンだ。これでも☆4の冒険者なのでよろしく。」
そう言ったオレのことを見た少年Aが、
「俺らとあんまり年が変わらないみたいだけど、本当に☆4なのか?」
「まあ、そう思うのも無理ないが、オレはここの組合に依頼されたわけだから、その発言は組合に喧嘩を売るのと同じことだって思ったほうがいいぞ?」
というと、うっという顔をする少年A。
「とはいえ、証拠もなしに偉そうなこというのも主義じゃないんでね、ほれ俺の組合員証だ。ちゃんと☆4の記載があるだろ。ちなみに、こう見えてオレは39歳だからな。」
そう言って、3人に組合員証を見せてやった。
組合員証には、名前と年齢、階級が載っている。
ここで今更だが、オレの容姿について説明すると、身長は180くらいで、髪は黒色、なのに顔立ちはやや西洋人よりで、目の色が翠玉というかエメラルドグリーンに近い色をしている。
そして、見た目がなんと20歳前後である。この世界で目覚めてから、初めて自分の顔を見た時には、なんじゃこりゃって感じだった。
どことなく前の面影はあるが、何か色々とミックスされた、いいとこ取りって顔になっていた。ありがたや。
オレ自身は歳をとった実感はないが、組合員証にある通り、年齢はきちんと39歳という表示がなされていたので、年は重ねているのだろう。
老化が非常にゆるやかなのかね。
んで、この街にきてから3年くらい経つが外見があまり変わらないのと、39歳なのに見た目が20歳くらいにしか見えないので、先祖に森人族の血でも入っているんだろうってことにしている。
ちなみに、森人族とは異世界でおなじみのエルフの事である。
そして、この組合員証だが、魔法の力でその人の名前や年齢などを表示させることができる魔道具の一種だ。さらに付け加えると、魔物を倒した時に、その魔物の魔素を少量取り込むことで、どの魔物を討伐したかがわかる仕組みにもなっている。
これは、冒険者組合に加入すると発行してもらえ、身分証明証にもなる。
「はぁ!?39歳?いや、ほんとに書いてあるな・・・・・、嘘じゃねえのか。」
少年A君が実にいい反応をしてくれる。
「それに、本当に☆4なんですね。すごいですぅ。」
少女Aちゃんよ、それは信じてなかったって発言だぞ?
いや、別にいいんだが。
オレは組合員証を仕舞い、
「さて、オレのことをわかってくれたなら、早速君らの実力を見せてもらおうか。3人一緒にかかってきてくれ。君らは手持ちの武器を使ってくれて構わない、オレはこの訓練用の木剣で相手をしよう。」
「はぁ?俺らのこと舐めてるのか、それは?」
「いやいや、舐めてるわけじゃない。それくらい実力差があると思えばいい。別に、それでオレが怪我をしても君らに対してどうこうしようって気もないし、君らを煽ってるわけでもないから勘違いはしないで欲しい。」
「面白い冗談じゃねぇか・・・・。」
ビキビキという音が聞こえそうな顔する少年A、
うむ、逆効果だったか、言葉とは難しい。
「後悔するぞ・・・。」
おお、これまで無口だった少年Bくんまでそんなことを言うとは、まぁ、冒険者として、嘗められたら終わりって風潮があるのは否定しないが、自分たちが実力をみてもらう立場でその態度はどうだろうか。
とはいえ、ダラダラと時間を使ってもしょうがないので、木剣を構え、
「さて、無駄口はいいから、かかってくるといい。」
オレの雰囲気が変わったのを感じた3人は、すぐさま陣形を組む。
ショートソードを構えた少年Aくん改め、剣士君、少年Bくんは腕に装着する手甲のような武具をはめ、少女Aちゃんの前に陣取った。
少年Bくんは、武闘家だな。と心の中で名前を改めておく。
ふむ、剣士君が前衛で、少女Aちゃんを武闘家君が守るって感じかな。
観察していると剣士君がオレ目掛けて剣を振るってきた。
オレは剣士君の動きが見えているので、相手の体重が乗り切る前に踏み込んで、木剣で受ける。
「!?嘘だろ?」
木剣を切ろうとでも考えていたのか、思った結果にならなかった剣士君、動揺した結果、隙ができてしまう。
まぁ、経験が浅いのはしょうがないかと思いながら、剣士君の攻撃を受け流し、ガラ空きになった腹へ、木剣を突く。
いい感じに入った手応えを感じ、蹲ってしまう剣士君を捨て置き、武闘家君と少女Aちゃんへターゲット変更。
動きを悟らせない脱力からの前進で、一気に武闘家君の前まで接近する。
某漫画で読んだ動きを、オレなりに再現してみた結果、この世界は技能が存在するためか、肉体のポテンシャルの高さゆえか、訓練と努力の結果、それなりの動きができるようになっているのだ。
オレの動きに対応が遅れた武闘家君へ上段からの振り下ろしの一撃をいれようとするも、手を交差させた手甲による防御で防がれてしまう。
しかし、その攻撃が思ったよりも効いたのか、武闘家君の腕を交差させたままで動きを止めることに成功。そこへ空いている左の拳を叩き込み、武闘家君を吹き飛ばす。
「っぐ、腕一本で吹き飛ばすとか、出鱈目すぎる・・・・・。」
その一連の攻防の中、微動だにしない、いや動けないのか、立ったままの少女Aちゃん。
戦場ではそれが命取りになってしまうぞ、少女Aちゃんよ。
少女Aちゃんを見ると、目に涙をうっすら浮かべて怯えてしまっている。
「ごめんね、これもお仕事なんでね。」
と、一応謝りつつ、木剣の平の部分で少女Aちゃんの頭にゴンと打つ。
「あいたっ!!」
思った以上に痛かったのか、蹲ってしまう少女Aちゃん。
冒険者とは痛みとともにあるものなのだよ、その痛みを忘れるんじゃないぞ、うん。
少女Aちゃんに攻撃を加えていると、武闘家君がこちらへ接近し、右ストレートを放とうとしていた。
それを冷静に避け、そのまま右腕をとって一本背負いを決め、そのまま背中から落とすと、カハっと空気を吐き出し、そのまま大の字でダウンした。
「よし、ここまでかな。」
オレは、そう言って立ち合いの終了を3人に告げた。
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