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読んでいただいて感謝〜。


オレは地下室の趣味部屋(しゅみべや)にて、レインさんへ持ち込む為の石鹸(せっけん)を作り終えて一息ついた。


この趣味部屋には錬金や魔道具作成をする為の道具が置かれている。

ちなみに、オレには錬金術の技能(ぎのう)や魔道具作成に関係する技能(ぎのう)はないので、錬金や魔道具については聞ける範囲で人に聞いたり、壊れた魔道具をもらい分解して調べたりと、自分で試行錯誤(しこうさくご)しつつ我流(がりゅう)で行っている。


しかし、色々作ったりしてるけど、未だ技能が生える気配はないな。まあいいけど。

気を取り直して、レインさんへの手土産(てみやげ)として魔法袋(まほうぶくろ)を用意したい。そんな訳で魔法袋が作れないか試してみよう。


とはいえ、どうやって作ったものか。魔法袋が迷宮で見つかるということは、魔法袋となる素材が迷宮によって変質する、あるいは能力を付与されているからだと思う。しかし、現状素材を変質させる方法などオレは知らない。付与ならば魔石にはできるが素材にはできない。ならば、能力を付与した魔石と素材となる袋を合成してみよう。


早速オレは魔石に魔素を()める。しかし、慎重(しんちょう)に籠めたつもりだが魔石が割れてしまった。


ふむ、空属性(くうぞくせい)は生活魔法と違って、亜空間くらいしか使ってないから魔素のコントロールがまだまだか。


その後、いくつか魔石を割ってしまったが、なんとか空属性を付与した魔石が完成した。次に、オレは普段腰につけているポーチを取り出す。

これなら失敗してどうなってもいいし、試すにはちょうどいいだろう。


ではでは、錬金用の(つぼ)を魔法陣の上に置き、生活魔法(極)で魔素をマシマシにした水を出す。その水に特殊な薬品を混ぜて、魔法水溶液を作りそこへ空属性の魔石を入れてかき混ぜると、魔石が溶けて水溶液と混ざっていく。混ざりきったところでポーチを入れて、壺の下に描いてある魔法陣へ魔素を流す。すると、魔法陣が輝きだし、壺の中にある魔法水溶液が反応してポンという煙が上がると、壺の中にはポーチだけが残っていた。


見た感じは完成したように見えるな。手にとって周りを確認してみても特に変化は見られない。という訳で、ポーチを()けて適当な物を入れてみると、吸い込まれるようにポーチの中へ消えていった。


「おおおおお?これは、まさかの一発成功じゃないの!?」


テンションが上がりすぎて、思わず独り言を言ってしまった。

ポーチを逆さにして振ってみても何もでてこない。ポーチに手を入れると適当に突っ込んだ物が頭に浮かび上がるので、すべて取り出す。問題なく取り出せたので完成したといってもいいだろう。


いやはや、案外なんとかなるもんだな。


なら、今度はレインさんへ(おく)る物を作ろう。用意するのはメイヒムで買った丈夫な袋。これならば、出どころを探られたとしても、メイヒムの迷宮で出たということに出来るだろう。鞄型(かばんがた)にすると変に注目を集めそうだし、無難(ぶなん)な形のものを選んだ。


先ほどの工程と同じように魔法水溶液を作って袋を突っ込んでポンとする。壺の中に残った袋を取り出して問題がないか確認する。

うん、収納や取出(とりだ)しもできるし、問題なさそうだな。念のため、無くなってもいい物を色々突っ込んで、数日様子を見ようかな。




数日後、オレのポーチの分と、もう1つの魔法袋(まほうぶくろ)を確認したが何事(なにごと)もなく使う事ができたので、ポーチにサンプル用の石鹸(せっけん)を入れ、もう1つの魔法袋には大量に作成した石鹸を入れた。


さあ、レイン商会へ行こうか。


レイン商会は、建物の1階で販売を行い2階に商談部屋がある。さらに1階の奥には倉庫があり、在庫はそこへ置くようになっている。


オレはお店に入り、中にいた少年へ声をかけた。


「すいません、商会長のレインさんはいますか?」


「いらっしゃいませ。商会長に御用ですか?申し訳御座(ござ)いませんが、お約束は御座いますか?」


「いえ、約束はないんですが、先日メイヒムの街へ行った際に、色々と話をさせていただいたので、本日は、商談をしたくこちらへ(うかが)った次第(しだい)です」


「そうだったんですね。わかりました。一度確認して参ります。あ、お名前をお伺いしてよろしいですか?」


「はい、シュンと言います」


「では、少しお待ちください」


そう言って2階へ上がっていく。あの子がレインさんの息子さんかな?それを見送ると前回エリスと来た時にいたおばちゃんが声をかけてきた。


「おや、エリスちゃんの彼氏じゃないか。今日はどうしたんだい?」


そうだ、どうせならおばちゃんも巻き込んでみようかな。女性のほうが喰いつきがいいはず。


「こんにちは。ちょっとレインさんに見せたいものがありまして、これなんですけど」


そう言って、腰のポーチから石鹸を1つ取出してカウンターの上に置く。


「これは・・・?石鹸かい?」


「そうですね。これをレインさんのお店で取り扱ってくれないかと思いまして」


「触ってみてもいいかい?」


「どうぞ」


そう言うと、おばちゃんは石鹸を手に取り下から(なが)めたり、匂いを()いだりしている。


「よかったら、手を洗ってみますか?」


オレは腰のポーチから(おけ)を取り出してカウンターへ置く、そして、生活魔法(極)で水を出す。


「じゃあ、せっかくだし試させてもらおうかね」


おばちゃんは、桶の水で手を()らして石鹸に手を(こす)り付ける。石鹸を置いて手を擦り合わせていくとみるみる泡立ち、石鹸の香りが(ただよ)ってくる。最後に水で泡を落としてみると、桶には(にご)った水が残った。


さすがはオレの石鹸だな。確かな洗浄力だ。


「こ、これはアンタ!?本当に石鹸かい?」


桶の中の濁った水を見て、自分の手をひらひらさせながら、驚くおばちゃん。


「ええ、石鹸ですよ。どうですか?」


「どうもこうもないよ。香りも汚れの落ち方もウチのと全然違うじゃないかい。アンタ何者だい?」


「オレはシュン。ただの冒険者ですよ」


「ただの冒険者がこんな代物を持ってたら、商売上がったりだよ。エリスちゃんもとんでもない子を彼氏にしたもんだねえ」


オレは苦笑(にがわら)いしつつ、桶と石鹸をポーチへしまっていると、階段からレインさんが降りてきた。


「こんにちは。シュンさん。お待たせしてしまったようで申し訳ありません」


「いえ、オレもいきなり(たず)ねてしまってすいません。ちょっと、レインさんの商会で取り扱って欲しいものがあって来たんです」


「アンタ!これは絶対ウチで売るべき物だよ」


「なんだジェシカ、(やぶ)から(ぼう)に・・・」


このおばちゃんジェシカっていうのか。


「あ、レインさんが来る前にジェシカさんに使ってもらったんです。オレがレインさんに見て欲しいものは石鹸なので」


オレの言葉に少し考えるような仕草をするレインさん。


「なるほど。よろしければ、2階へどうぞ。」


「ええ、わかりました。」


オレはレインさんに案内されて2階の商談部屋へ向かった。

ジェシカさんの反応をみた感じだと商談は無事に済みそうだな。

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