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いつも読んでいただいて感謝〜。
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冒険者組合のとある1室にオレはいる。部屋のソファーにオレとエリスが座り、正面にはクリオール冒険者組合の副組合長アダルさんがいる。机に両肘をついて、組んだ手で口元を隠してこちらを見ている。その脇にはカディアが後ろに手を組んで立っていた。
なんだろう、この2人の姿勢には既視感があるな。オレはこれから何かに乗せられ・・・、いかん、これ以上は危険だ。
それにしても、貴方達仕事はいいんですか・・・?
ひとまず目の前にいるアダルさんについてだが、森人族なので人族より耳が長い。そして、顔は中性的な顔立ちをしており、男性のオレから見てもハンサムだ。髪は金髪でナチュラルショートカット。その顔立ちから女性にも人気のある人だ。しかし、Dカップという存在が、彼女をまごうことなき女性であると証明している。
つまるところ美人だということなのだ。ヅカにいれば人気が出ること間違いなしだな。
「今日は時間を取らせてすまないね、シュンくん」
「いえ、大丈夫ですよ。しかし、久しぶりに組合に顔を出しましたが、入った瞬間に感じた受付嬢達の視線が恐ろしかったですね・・・」
「はは、それはね私を含めて、受付嬢一同がそれだけシュンくんを待ちわびていたということだよ」
アダルさんが爽やかに笑いながらオレに返事をするが、あの視線は待ちわびたというような可愛いものではなかった気がする。ギラついていたというほうがしっくり来るんだがな・・・。
「それはいいんですが、何故、カディアまで?仕事はいいのか?」
「ご心配には及びませんわ。私、今日はお休みですから。受付嬢代表として、同席させていただくことにしましたの。お話のお邪魔いたしませんのでお気になさらず」
「まあ、オレはいいけどね。ただし、エリスに大分詰め寄ったらしいじゃないか。そこはエリスに謝っておいてくれよ?」
「そうですわね・・・。その件については私も反省しております。今度、お詫びにお茶を御馳走いたしますわ。その時に改めて謝罪もいたします」
カディアもなー、強引なところはあるけれど、通すべき筋はちゃんと通す子なんで、憎みきれないというか、ある意味で気持ちのいい子なんだよな。発育は悲しいことになってるけど。
「シュン?貴方失礼な事を考えていません?」
「考えてないよ。やだなあ」
こやつエスパーか・・・?
「さて、そろそろ本題に入っていいかな?」
「ああ、すいませんアダルさん。では、オレが呼ばれた理由ですよね?一体何故なんでしょうかね」
「単刀直入に言うと、シュンくんの作っている石鹸を私達も使いたいんだよ」
やはりその話か。エリスが話した以上、誤魔化すとこともできないだろうし、さてさて、どうしようかな。
「なるほど。話が早くて助かりますね。そうですね・・・。アデルさんを含めて皆さんに石鹸をお譲りするのは構いません」
「本当かい!?」
ハンサムに見えるアダルさんがだが、この反応見ると、やっぱり乙女なんだな。可愛く見えてしまう。
しかし、譲れないものもあるわけで。
「ただし、条件がいくつかあります。」
「ふむ、わかった。その条件を聞かせてもらえるかい?」
「条件をお伝えする前に、前提として受付嬢全員には1つずつ、オレの石鹸をお渡しします。そして、ここからが本題ですが、オレはこの石鹸を商会に持ち込む予定なので、次からはオレからではなく、商会から購入してもらう事になるということを、他の受付嬢にも説明してください。もちろん、商談がうまくいけばの話ですがね」
「とりあえず、皆に石鹸が行き渡るなら、一旦落ち着かせることはできるか・・・。承知した。他の条件を聞いてもいいかい?」
「次に、石鹸の出どころがオレだということを明かさないことです。これは、現状石鹸を作れるのがオレだけなので、仮に多くの人に求められても対応できません。つまり、石鹸の需要に対して供給が追いつかない事が予想されるからです」
「なるほどな。それも承知した。それ以外にあるかい?」
「最後は私的な内容で申し訳ないのですが、商会で取り扱うということは、買えない可能性があるということです。その時、エリスに何かを言ったり、エリスに対して何もしないと約束してください。エリスはオレと一緒にいるので、オレの石鹸が使えないという事はないです。でも、それはエリスがオレを選んでくれたからこその当然の権利なので、もし、そういった場面に遭遇したなら、アダルさんがエリスを守ってください。以上の条件を守ってもらえるなら、すぐにでも石鹸を譲りますよ」
「ふー、最後は惚気られたような気もするが、確かにその可能性はありえるね。わかった、私ができる範囲で守ると約束しよう。また、その旨、他の受付嬢達に説明しておくよ。エリスくんも、もし何か言われたら、遠慮なく私に言ってくれて構わない。とはいえ、元☆2パーティーに所属していたエリスくんに何かする人はいないと思うけどね」
え・・・?初めて聞いたけど、エリスって☆2パーティーにいたの?てことは、あの圧はオレの気のせいじゃなくて、威圧のようなものが本当にあったということか・・・?
オレが驚いていたら、カディアがそれに続くように話す。
「その条件については、私もエリスを守るとお約束しますわ。エリスとはライバルですもの、そんな野暮な事でエリスを害されるなど、私の誇りが許しませんわ。」
「カディア・・・。」
エリスがカディアのセリフに感動している。しかし、オレというコブがエリスについた以上、人気という面ではカディアの勝ちになるのではなかろうか。とはいえ、カディアは何だかんだ言っても、エリスの事が好きなんだなって思うと、微笑ましい気持ちになるな。
「シュン、何ですかその顔は、何か腹立たしいですわね」
「なんでだよ!?オレに対しての扱いひどくない?」
「気のせいですわ」
「では、話をまとめさせてもらうよ?条件を飲めば石鹸を融通してもらえる。その条件とは、シュンくんが作った事を言わないこと、次からはお店で購入する事、そして、エリスくんを守る事、この3つということでいいかい?」
「はい、大丈夫です」
「わかった。その辺については、私が取りまとめるから安心してくれ。後は、シュンくんの交渉が上手くいくことを祈ってるよ」
「ありがとうございます。でも、皆さんの反応を見てると間違いなく上手くいきそうですけどね」
「ふふ、そうかもしれないね。しかし、エリスくんが羨ましいね。こんなことなら、私もシュンくんに想いを伝えるベきだったかもね」
「ふ、副組合長!?何を!?」
アダルさんの発言に、エリスが過敏に反応する。
おやおやエリスさん、そんな焦らなくても、オレくらいになると、アダルさんの発言が社交辞令だと分かりますよ?全く、エリスは可愛いなあ。
「はは、アダルさんにそう言ってもらえるとは光栄ですね。では、皆さんの分の石鹸を出しますが、香りが複数あるので、どれにするかは皆さんで話し合って決めてくださいね」
そう言って、オレは机の上に石鹸を人数分出して、エリスと一緒にソファーを立つ。部屋からでる時に、アダルさんが声をかけてきた。
「シュンくん。今回は無理を言ったようで申し訳なかったね。助かったよ、ありがとう。でも、君が望むなら私はいつでも構わないよ?ふふ」
と、魅力的な笑顔で意味深なこと言ってきたので苦笑しつつお辞儀をして部屋を退出した。やれやれ、本気なのか冗談なのかわからんね。
しかし、エリスはその発言に何かを感じたのか、オレの右腕をぎゅうと掴んで離さないのであった。その反応に不覚にも愛を感じてしまうのは、オレも頭が恋愛脳になってきてるのかね。
その後、エリスは仕事なので組合で別れ、オレは薬草採取の依頼をこなしつつ、石鹸の材料も集めた。
次は石鹸を作って、商会に持ち込むことにしよう。
まー、持ち込む先はレイン商会と決めているけどな。
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