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いつも読んでいただいて感謝〜。


エリスが地下室の入り口付近からオレを呼んでいる。オレは地下室の階段を上がり入り口から顔を出した。


「シュンさーん?どこですかー?」


「ここだよー。エリス、お帰り」


「あ、シュンさん。そこにいたんですね。ただいまです。って、っきゃあ!」


エリスが悲鳴を上げた。それもそのはずで、地下室の入り口は床にあるので、オレの顔は必然的にエリスの足元、つまり顔を上げるとスカートの中身が見えてしまうわけで・・・。

うん、黒か・・・、嫌いじゃないよ、エリスさん。


「み、見ちゃ駄目(だめ)です!!」


顔を上げたオレの顔に、エリスの右足から放たれるローキックが綺麗に入った。


「へぶしっ!!」


オレはその衝撃(しょうげき)に足元を(すべ)らし、そのまま階段を転げ落ちていくのだった。


「ごめんなさい、痛かったですよね?」


「いや、オレの方こそごめんね。配慮(はいりょ)が足りなくて・・・」


(ころ)げ落ちたオレを追ってエリスが地下室へ降りてきた。そして、エリスに蹴られた(ほほ)をさすられながら、謝られているという図だ。

ちなみに、エリスの()りを()らったり、階段から転げ落ちたところで、どうにかなるほどこの体は(やわ)じゃないが、エリスがあまりにも申し訳なさそうな顔をするので、されるがままになっているだけだ。耳もシュンとしちゃってるし。


エリスの手は少しひんやりしていて気持ちいいが、いつまでもこうしていられないので、エリスになでるのをやめてもらう。そして、エリスの頭をなでて安心させ、そこでようやくエリスの耳もピンとなる。


「エリス、もう大丈夫だから」


「そうですか。痛むようならポーションを使ってくださいね」


「わかったよ」


「それより、家にこんな地下室があったんですね」


「あったんだよね。ここには、趣味で物を作るときに使う部屋とかがあって、危険な薬品も置いてあるから、この前メイヒムに行った時は、鍵をかけてたんだ」


「なるほど。そうだったんですか」


そうだ、ちょうど地下室にいるしエリスに力の事を話しとこうかな。とはいえ、いきなり神の力が〜、とかいうと頭がおかしいと思われそうだし、少しずつ話していこう。


「でさ、実はこの地下室はオレの技能(ぎのう)で作ったんだよね」


「えええ!?ここをですか!?そんなすごい技能は初めて聞きました」


「まあ、他にも色々できるけど、とりあえず、他の人には内緒でね?」


「もちろん冒険者の技能は原則秘密(げんそくひみつ)ですからね。わかってますよ」


技能の内容は、技能を持つ本人ならどんな力かを理解する事ができる。そして、他者にはその技能を知る(すべ)はないとされている。

冒険者において、技能は起死回生(きしかいせい)の一手、あるいは奥の手として利用される事が多い為、原則他人(げんそくたにん)の技能を聞いたりするのは失礼となる。ただし、本人からいうのは失礼ではなく、()えて技能を教えることでパーティーを組む為のアピールに使うこともある。まあ、それも自己申告なので、嘘をつくこともできるんだが・・・。


では、剣術や火属性魔法といった技能があるという情報はどこからくるのか?それは、国によって管理されている。自身の技能の詳細を国に報告することで、一定のお金を受け取ることができ、国は技能の種類、その内容を集めることができるのだ。ただし強制力はなく、あくまで、自主性に(もと)づいている。


技能(ぎのう)の申告場所については、冒険者組合や商業組合といった各組合、教会などで申告が可能で、技能の照会(しょうかい)についても申告可能な場所ならばどこでも行える。ただし、技能を調べるのにはお金がかかる仕組みだ。


「ちなみにここで石鹸も作ってます」


「あの石鹸ですね。あっ!石鹸で思い出しました。シュンさんに言いづらい事がありまして・・・」


珍しく気まずそうな顔をするエリス。なんだろう、いや、石鹸で思い出すってことは、石鹸の事がバレたのかな。


「わかった。居間で話を聞くよ」




夕食を食べ終えて、食後のお茶を飲みながらエリスの話を聞く。


「それで?言いづらい事って?」


「実は・・・、組合の受付嬢達に、私が使ってる石鹸の事を聞かれて、シュンさんが作ってる事を話してしまいました。ごめんなさい・・・」


予想通りか。しかし、意外に早くバレてしまったな。


「いつかは知られると思っていたし、しょうがないな。まあ、出来れば商会に持ち込むつもりだったんで、そこで知られたかったとは思うけどね」


「本当にごめんなさい・・・。受付嬢達もそうですが、副組合長のアダルさんからの圧力もすごくて、誤魔化(ごまか)す事ができませんでした」


エリスは、その時の事がよほど怖かったのか涙目(なみだ)でプルプルと震えていた。


「あー、落ち着いて。そうか、アダルさんもか。アダルさんはこういう時は、皆を落ち着かせてくれるかなと思ったけど、受付嬢側だったか・・・」


「最初は誰も気にしてなかったんですけど、カディアが私を見て、『エリスさん、貴方、最近肌の()りが違いますわね?何か秘訣(ひけつ)などあるんですの?』っていうので、そんなことないよって言ったんですが、日に日に追求(ついきゅう)(はげ)しくなり、ついに白状してしまいまして・・・」


カディアの物真似(ものまね)が地味に似てて、クオリティ高いな・・・。


「そして、カディア以外の受付嬢も、私の感じがいつもと違う事を薄々(うすうす)感づいていたようでして、カディアから他の受付嬢へと伝わり、アダルさんもそこへ参戦(さんせん)という流れで、今に至ります・・・」


「そっか、わかった。そこまで受付嬢達に()()られたら話しちゃうのも無理ないな」


そう言って、オレはふーっと息を吐いて、椅子へ深く座りなおした。すると目の前のエリスがモジモジし出した。


「それでですね・・・。シュンさん」


「ん?何?」


「明日、私と一緒に冒険者組合に行ってもらえませんか・・・?皆が石鹸のことで、シュンさんと話をしたいと言ってまして・・・」


「わかった。一緒に行くよ」


「本当ですか!?ありがとうございます。シュンさーん」


と、エリスが興奮してオレに抱きついてきたのを受け止めつつ、バレないように軽くため息をつくのだった。

はあ、めんどくさいことにならなければいいな・・・。ま、なんとかなるだろう。


ということで、オレはエリスと冒険者組合へ行くのだった。

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