第2話 エピローグ
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エピローグ
迷宮攻略からさらに10日ほどメイヒムに滞在した。その間に少しだけ貿易船が来て街には貿易品が出始めた。メイヒムの港の魔物騒ぎは、領主が海の沖合を見張る為の兵士を編成し、警戒することを他国へ説明したらしい。それならばということで、船が来るようになったそうだ。ただ前のように戻るには少し時間が必要だろう。そして、貿易船の他に漁師も少しずつだが漁へ出る人もでてきた。そのおかげで新鮮な魚料理も堪能できたのでよかった。
オレは貿易船から、胡椒や砂糖が手に入らないかと思って探してみたが、残念ながら胡椒は手に入らなかった。しかし、色々探し回った結果、大豆、てん菜のようなものを発見することができ、すぐさま購入した。これで、醤油や砂糖が作れるかもしれない。
今回の旅は、結果として塩も手に入れたし、迷宮も楽しめて魔石で儲かった。メイヒムに来たのは大成功と言えよう。
そうして今、クリオールへ帰る為にのんびりと道を歩いている。
帰りは馬車を使わずに歩いて帰ろうと思ったのだ。異世界の風景を楽しみつつ、1人だからこそ感じる日常のしじまを楽しみながら穏やかな時間を過ごす。若い頃には考えもしなかった時間の使い方だな。
ゆったりとした時の中、クリオールの街が見えて来た。
クリオールよ、私は帰って来た!
クリオールの門番のおっちゃんと久しぶりに話をして、今は、我が家の前に立っている。ドアを開けようと、鍵を差し込み回してみるが手応えがない。
「あれ?開いてる?」
ドアを開けて家に入ると、久しぶりの我が家に心が落ち着くのを感じる。居間のテーブルや台所などに埃はなく、エリスが掃除をしてくれていたんだと思い感謝する。
けど、鍵が開いてるってことはエリスが家にいるのかな。今日は組合の仕事が休みってことか?とりえあえず、いつのまにかエリス部屋になってしまった部屋に行ってみるか。
部屋の前に立ちノックをする。
「おーい、エリスいる?ただいまー」
ノックをしてしばらく待つが返事がない。仕方なくドアを少し開け中を見てみるが誰もいなかった。
部屋にいないってことはどこだ?もしかして、オレの部屋か・・・?別に部屋の中にやましいものはないが、エリスがオレの部屋にいる理由も検討がつかんな。まあ、部屋にいってみるか。
オレは自分の寝室兼私室のドアを開け中に入る。すると、ベッドの上にこんもりと盛り上がっている物体を見つけた。近づいてみるとエリスが丸まって寝ていた。
待ってる間にうたた寝したのかな。その場所がなぜオレのベッドの上なのか問い質したいが・・・。
久しぶりに見るエリスの顔は相変わらず美人だ。窓から入ってくる日差しがエリスの髪を照らし、綺麗な薄紫色を際立たせる。
寝ているからか、いつもより幼く見えるな。さて、いつまでも眺めているわけにもいかないし、起こすとしようか。
「エリス、ほら、起きて。今帰ったよ」
何回かエリスの体をゆすり声を掛ける。耳がピクピクしてエリスの目がゆっくりと開いて、オレを見つける。すると、エリスが起き上がってオレの胸に飛び込び、両手を背中に回して、ガッチリとホールドした。
「シュンさん、シュンさん、シュンさん」
オレの名を呼びながら、オレの胸に顔をグリグリと擦り付ける。
「た、ただいまエリス。ちょっと、落ち着いてくれ」
「落ち着けません。一体何日いなかったと思ってるんですか」
オレの胸に顔を埋めながら答えるエリス。
それを言われると何も言えんな。クリオールの街を出る前にエリスに説明はしたけど、いざ離れるとなると余計に寂しく感じたんだろう。
「えーと・・・、ごめん。寂しい思いをさせちゃったみたいで」
「そうですよ。本当に寂しかったんですから。せっかく恋人になったのに、すぐに何日もいなくなちゃうんなんて・・・」
オレはエリスの頭を撫でながらエリスの好きにさせる。しばらく無言の時間が流れるが嫌な空気じゃない。ただし、オレの胸のあたりで妙に生暖かい空気を感じ、スーハースーハーという息遣いが聞こえる。
「あの、エリスさん。何かハスハス聞こえるんですが。何をしてらっしゃるんで?それと、そろそろ離してくれてもいいんじゃないかな」
「駄目です!まだシュンさんの匂いを堪能できていません!何日ぶりだと思ってるんですか!?シュンさん分を充填しないといけないんです」
オレの知らない間に、オレ分という新たな成分が誕生してしまったようだ。ていうか、オレの匂いって大丈夫だろうか。加齢臭でないことを祈ろう・・・。
「でも、ずっとこのままでいるわけにもいかないだろ?別にエリスとこうしてるのが嫌って言ってるわけじゃないからさ。な?」
「では、寂しくさせたお詫びとして、お願いを1つ聞いてください。それで離れてあげます」
「わかった。で、そのお願いとは?」
「一緒にお風呂に入ってください」
「・・・オレ、風呂は1人でゆっくり入りたいんだけど・・・」
「さっき、わかったって言いましたよね?言質はとりましたが?」
「ワカリマシタ」
というわけで、エリスと2人でお風呂場へ移動する。オレが魔改造した風呂は、4人は入れる広さとなっており、水とお湯が出る蛇口に、シャワーもどきも再現したこだわりの風呂だ。
初めてこの風呂を見たエリスからは、貴族でもここまでのお風呂があるかわかりませんよ、というくらいだった。
お風呂でオレは背中を流してもらい、お礼にエリスの背中を流したあと、尻尾を洗っている。
「シュンさん尻尾洗いがお上手ですね。絶妙な力加減ですー」
「喜んでもらえてなによりだよ」
「尻尾って自分で洗うと根本とか洗いづらいので、洗ってもらえると助かります」
という会話をしつつ洗い終わってから湯船に浸かっている。そして、なぜかエリスはオレの上に座り、背中をオレに預けている姿勢でいる・・・。
この姿は精神衛生上良くない。今日も理性さんフル稼働だ。しかし、エリスはオレとお風呂に入ることに恥ずかしさとかないのだろうか?オレはちょっと恥ずかしかったりするんだが・・・。エリスは平然としてるし狐人族では割と普通なのかな。
その後、のぼせないうちに風呂から上がり、食事をしながらメイヒムの街での出来事を話しつつ、迷宮や冒険者組合の話でエリスに若干睨まれたりした。
何もなかったよ?
後は寝るだけになり、オレも久方ぶりの自分のベッドに横になりゆっくりする。
明日からも色々したい事があるな。まずは、石鹸を売り込みにいこうかな。
という具合に色々考えていたら、オレのベッドへ乱入者が現れた。
「フフフ、シュンさん。一緒に寝ましょう」
「エ、エリス!?」
エリスの目は捕食者のそれであった。そして、オレはそれに抗えるわけもなく、夜は更けていくのだった。
翌朝、冒険者組合にて、つやつやとしたエリスさんがいたとかいなかったとか。
これにて、2話は終了です。
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