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22階層で行き止まりの場所を見つけ、そこでご飯を食べ睡眠を取った。
方法としては、唯一の入り口を生活魔法の土系統で魔物が入らないように塞ぎ、さらに、寝る場所の四方に土壁を作って、万が一魔物が入ってきてもすぐに攻撃されないようにする。
その後は湯船を作り、生活魔法の火と水系統を使い、お湯を作って風呂に入った。
はぁー、染みるわー。風呂サイコー。
というわけで、気力、体力ともに回復したので、蜂蜜集めに精をだすことにしよう。
ひたすらハニィビーを探しては狩り続ける。が、物欲センサーというやつだろうか、魔石は落ちるが蜂蜜は出ない。
全然出ないというわけではないが、10個ほど手に入ったところで飽きた・・・。
てわけで、23階層を目指そう。さて、生活魔法の風を使って、下層の降り口はと・・・。ん、なんだろう。足音が近づいてくるな。
するとすぐに左の通路から銀髪でその髪を左右で括った女性が飛び出してきた。そして、オレを見つけるとすごい勢いでオレに向かってくる。
「お願い助けて!!」
「えーっと・・・、とりあえず、どういうことか聞いてもいいか?」
「仲間が魔物に襲われて危険なの!?貴方の他の仲間はどこなの!?お願い、急がないと皆が死んじゃう・・・」
よく見ると目の前の女性に所々に傷があるな。
「わかった。オレがいこう」
「貴方1人じゃダメよ!魔物はいっぱいいるの。数が必要だわ」
「んー、すまんが、オレは個人でここに来てるんで、他に仲間はいないんだ」
「嘘でしょ・・・」
銀髪女性の目からハイライトが消え絶望的な顔になる。なんだろう。オレは悪くないはずだ。なのに罪悪感があるな。
その銀髪女性が決心した顔で口を開いた。
「わかったわ。悪いんだけど、貴方は他の冒険者を呼んで来て欲しい」
「君はどうするんだ?」
「私は戻るわ。仲間を放っておけない!」
合理的に考えたら、二手に別れて冒険者探した方が良い気がするけど、突っ込んだらダメかな。すごい格好いい事言ってますって雰囲気だし・・・。
さてさて、生活魔法の風系統はずっと使い続けてるんで、この銀髪女性の仲間がどこにいるのかわかっている。魔物がすごいたくさん集まってる場所があるのだ。恐らくそこだろう。ていうか、人が動いてるんで気流がすごい乱れてるしな。
「なあ、君の仲間がいるところって、この先を進んで、左に曲がって、右に曲がって、もう一回右に曲がって、まっすぐ進んだ場所かな?」
「えっ?そ、そうだけど、貴方何で分かるの?」
当たったな。ちゃんと確認するのが仕事でミスをしないコツなのだ。場所がわかれば、さっさと行こう。思いの外時間を食ってしまった。
「まあ、そういう技能だ。てわけで、助けにいってくる。君は他の冒険者を探して助けを呼ぶといい。あと、傷だらけだから、ほら、ポーションやるよ」
オレはポーションを投げると同時に、銀髪女性の仲間がいる場所へ走り出した。
「ちょ、ちょっと!貴方1人が行ってどうなるのよ!待ちなさい!!」
オレに声をかけるが、すでにオレは通路へ入っているため、その声はオレに届くことはなかった。
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探知した場所へ向かい迷宮内を走っているが、片手に剣を持ったままだと走りにくいな・・・。一旦、亜空間に剣を仕舞うか。
剣を仕舞ったことでオレの速度はさらに加速し、あっという間に目的の場所へ着いた。
目の前に蟻型の魔物、ウォーアントがたくさんおり、3人の女性冒険者が襲われている。
「ポリーナ!大丈夫!?すぐに回復する!」
「ありがとうお姉ちゃん。っく!!ダメ、数が多すぎる」
「アリックス!回復はまだいけるのか!?ポリーナ、危なくなったらアリックスと一緒に後ろに下がれ!」
「でも、それだとリンカさんが孤立しちゃいます。盾を持ってる私が、皆を守らないと!!」
22階層に蟻型の魔物がいたのか、全然会わなかったがどこにいたんだろ。
ちなみに、ウォーアントは体長が50センチくらいの蟻だ。
襲われている冒険者を見ると、見たことのある奴だった。酒場で絡んできた黒髪Dカップの女冒険者だ、リンカって呼ばれてたな。リンカの近くには犬人族か、頭に垂れ耳がついた金髪のボブカットで盾を持った女性がいた。その後ろに、同じく犬人族で垂れ耳の金髪ゆるふわ、長さがミディアムくらいの女性がいる。確か、アリックスと呼ばれていたかな。ボブカットのほうがポリーナか、2人の顔立ちが似ているので2人は姉妹だろう。
リンカが懸命に剣を振るってウォーアントを倒しているが、1匹倒す間に、2匹が足下にまとわりつこうとする為、連続してウォーアントを倒すことができないでいる。そうして、リンカをすり抜けたウォーアントは盾を持ったポリーナへ向かっていく。
ポリーナは盾をうまく使って、ウォーアントを押し戻すが数が多すぎるため、腕や足に噛み付かれ出血してしまう。
その傷にアリックスが技能の回復魔法を使うが、限界が近いのだろう、顔色が真っ青だ。魔素酔いが始まっている。
その時リンカがポリーナに声を飛ばす。
「ポリーナ上だ!!」
「え?きゃああああああ!」
リンカの声が届いた時には、上からウォーアントが1匹降ってきていた。恐らく壁を伝って上まで登ったのだろう。上を気にしていなかったポリーナは反応できず、ウォーアントに噛まれる未来を想像したのか、悲鳴をあげて身をすくませた。
「っく!どきやがれ!!」
リンカはポリーナを助けようとするが、ウォーアントの数に圧倒され、逆にポリーナとアリックスから離れてしまう。
オレとしては酒場の一件に思うところはあるが、襲われそうになっているポリーナという女性に罪はなかろう。
オレは亜空間に仕舞ったナイフを取り出して、上から落ちてくるウォーアントに投擲する。一直線に飛んでいったナイフは見事にウォーアントの頭に刺さり、その命を刈り取る。
「きゃあああああ・・・・・、あ、あれ?」
落ちてきたウォーアントが死んでいることに気づいたポリーナは間抜けな声を出す。ポリーナの無事を確認したオレは、うじゃうじゃいるウォーアント達と戦闘を開始する。
しかし数が多いな、剣で攻撃してもいいがまとわりつかれたら面倒だな。
というわけで、今回は打撃でいくとしよう。
オレの技能【武芸全般】は、あらゆる武器を扱え、戦いに関する動きができる。それは、格闘術も例外ではない。
まずは、足元のウォーアントを蹴り上げ、左拳で殴り潰す。そのまま振り抜いた勢いを利用して回転しつつ右足を上げ、ウォーアントが固まっているところに、震脚をかます!!足を上げすぎないのがポイントだな。
震脚が決まった周囲のウォーアントが衝撃で吹き飛んでいく。
仲間が倒されたのがお気に召さなかったのか、他のウォーアント達がオレに向かって来るが、足元に来た奴は踏み潰し、飛び跳ねてオレに噛み付こうとしたやつを、下から貫手で首を突き、時に裏拳で吹き飛ばす。ウォーアント達はオレに取り付くこともできず、その姿を黒い煙に変えていく。
わははは、震脚、裏拳、震脚、震脚、貫手、裏拳、右フック!みるみるとウォーアント達は数を減らしていく。
「す、すごい・・・」
ポリーナが呆然としながらオレを見ていた。その横ではアリックスが顔を青くしながらしゃがみこんでいた。
「うぅ・・・」
「お姉ちゃん!?大丈夫?」
「気持ち悪い・・・」
「ああ・・・、魔素酔いだね・・・。ごめんね、私に回復魔法を使いすぎたから」
「大丈夫。ポリーナが無事ならそれでいいわ」
しばらくして、オレは周囲が静かになったのを確認し、あたりを警戒する。どうやら、粗方片付いたようだな。
周りには魔石がたくさん転がっていた。うむ、壮観だ。逆に言うとそれだけ数を倒したということだが。
落ち着いたので生活魔法の水系統の力を使い、水球を作って手を洗う。素手でいくと手が汚れるのが難点だな・・・。さて、手も綺麗になったところで、ナイフを回収しにいこうかな。
オレはポリーナとアリックスのところへ歩いていく。
「ちょっと失礼するよ。無事か?」
「あ、はい。ありがとうございます。これ、貴方のナイフですよね?」
ナイフを回収してくれていたポリーナがオレに返事をして、ナイフを返そうとしてくれる。
それを受け取ろうと手を伸ばした時に、ポリーナが視界に入った。
その姿は所々ウォーアントに噛まれていて、鎧は欠け、インナーが破れており、Bカップのお山やふとももが露出しそうになってて艶かしい。
って、いかん。年頃の女性が肌をだすもんじゃない。
オレは瞬時に視界を腰のポーチに移し、魔法袋から取り出すフリをしつつ亜空間から白い布を取り出し、ポリーナの肩にかけて体を隠してやる。それが紳士の嗜みさ。
「っわ!あ、あれ?これは・・・?」
「ああー、ちょっと気になったんでな。それと、ナイフありがとう。返してもらうよ」
「ありがとう、妹に気を遣ってくれて」
「どういたしまして」
「あ、ありがとうございましゅ」
噛んだな。ナイフを受け取って、腰のポーチへ直すフリをして仕舞う。
「そういえば、貴方をどこかで見た気がするんですが・・・」
「そうだな。酒場で君んとこの黒髪女に絡まれたことがある」
「ああ!!あの時はすいませんでした。ウチの仲間が迷惑をかけまして・・・」
アリックスが青い顔をしながら、頭を下げてくる。
この子苦労してそうだな・・・。
「ところで、どうしてここに・・・?」
「君の仲間に銀髪の女性がいるよな?その子に会って、助けを求められ・・・」
「てめえ!!アタイの仲間に何してやがる!!」
オレがアリックスに事情を説明しようとした矢先に、大声が響き、リンカがオレに向かって拳を振るってきた。
これが脳筋ってやつか?まず殴るみたいな?オレが助けに入ってきたのがわからんのかね・・・。
「ちょっと!?リンカ!?」
「だ、だめです!リンカさん!!」
犬耳姉妹が声をかけるが、リンカは拳を止める気配が全くないな。なら、迎撃させてもらおう。これは立派な正統防衛だ。攻撃を受けてないけど。
リンカは右ストレートをオレに放ってくる。オレは右から来た攻撃を後ろへスウェーして躱し、目の前を通り過ぎるリンカの手を左手で掴む、右手は掌底の形にしてリンカの腹を打ち、そのままリンカの右手を掴んだまま下に引く。
リンカは回転して背中から地面に叩きつけられた。その地面は亀裂を作り、リンカが受けたダメージを物語る。
「ぐがあ!!」
「リンカ!」
「リンカさん!!」
「ふう・・・。それでな、君んとこの銀髪女性に助けを求められてな。だから、ここに来たんだ。その銀髪女性はまだ他の冒険者を探してるんじゃないかな」
「えーっと・・・、普通に話を進めるんですね」
アリックスが若干引き気味にオレに返事をする。
「大丈夫だ!殺してないから!」
オレはにこやかに返事をしてやった。
こういうやつは1回お灸をすえないといかん。それが年長者としての責務と言えよう。
なにはともあれ、全員無事(?)でよかったよかった。
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