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さて、塩は手に入り、魚も買ったほうを宿屋で調理してもらって食べることができた。海で釣ったのはお土産だな。
できれば、もっと立派な魚をお土産にしたいが、そこは漁が出ることを期待しよう。あとは、貿易品で香辛料とかが無いか見たかったんだが、貿易船が来ないのでどうしようもない。
というわけで、船が来るかどうかの様子見をかねて、もう少しメイヒムに留まるとしよう。
海で釣りもいいんだけど、せっかくなので、不壊の剣が気になるから迷宮にいくことにしようかな。その為に、まずは情報収集だな。てわけで冒険者組合に行こう。
「やあ、迷宮について聞きたいんだけど、今いいかな?」
冒険者組合にて、再び赤毛のおさげな受付嬢に話しかけた。
「はい。どうぞ。迷宮のどのようなことを聞きたいんですか?」
「迷宮の場所と、迷宮に現れる魔物の種類は何系か。それから、階層主と迷宮主について。あと、迷宮主から手に入る物って不壊の剣で合ってる?」
「順番にお答えしますね。まず、迷宮の場所は、メイヒムの街の東側にあります。ここからなら、建物を出て、向かって右側へ歩いていけばわかると思います。次に、メイヒムの迷宮では、ゴブリン系と昆虫系の魔物が多いですかね」
「なるほど。蜂とか蜘蛛が出てくるのか?」
「そうですね。蟻もいますよ。ちなみに、階層主は15階にレッサーマンティス、30階層にノワルアントがいますね。メイヒムの迷宮は全31階層なので、迷宮主は31階層のゴブリンナイトです。このゴブリンナイトですが、取り巻きにゴブリンマジシャンがいますので、注意してください。そして、ゴブリンナイトからは不壊の剣が手に入るそうです」
「迷宮主から取れる物がわかるってことは、過去に迷宮主を倒した人がいるってことだよな?」
「そうですね。記録では、過去3回の討伐があり、13年前が最後みたいですね」
「そうなのか?その剣って、ある程度の傷も直すって聞いたけど、ホントならすごい剣なのに、あまり倒されてないんだな。もしかして、倒すのを禁止しているのか?」
「いえ、そういうわけではないんですが、31階層まで行って、宝物が剣1本だと、皆さんあまり行く気がしないそうで・・・。剣も武器屋で買えますしね」
「ふむ、そういうものか。オレとしてはすごい性能だと思うけどね」
「とはいえ、そのおかげで迷宮主が頻繁に倒されることもなく、メイヒムは今も迷宮の恩恵を受けていますから、これはこれでいいと思いますよ」
「確かにな。ありがとう。じゃあ、準備をして迷宮に行くことにするよ」
「はい、無茶をしないでくださいね。それと、仮に迷宮主を倒したら報告をお願いいたします」
「ああ、わかった」
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組合を出て、迷宮の前まで行くと地面から盛り上がった洞窟が見えてきた。
洞窟を囲うように木の柵が作られており、洞窟の前に見張りが2人立っている。
「やあ、ここがメイヒムの迷宮の入り口でいいのか?」
「うん?冒険者か?そうだ。ここが迷宮の入り口だ」
「合ってたか、良かった。迷宮に入りたいんだ。このまま入っても大丈夫か?手続きとかが必要か?」
「いや、手続きは必要ないが、あんた1人で迷宮に入るつもりか?」
「ああ、パーティーを組まず、1人で冒険者をしているんでな」
「そいつは危険すぎる。冒険者組合でパーティーの募集をしたほうがいい」
「ああー。まあ心配してくれるのは嬉しいんだが、よその街からきて、知り合いもいないんでね・・・。ちょっと、どんなところか様子見をするだけだから、大丈夫さ。それに、ほら、これでも個人で☆4の冒険者をしている。準備はしてきたから入れて欲しいんだが」
そういって見張りに組合証を見せる。
「どれどれ、ほお、個人で☆4とはすごいな。え?39歳!?嘘だろ・・・。オレより年上じゃん・・・」
そっちかーい。
まあ、目の前の見張りは27、8歳って感じに見えるが、オレの方が若く見えたんだろうな・・・。
「う〜ん、まあ、いいか。ほら、組合証を返すよ。気をつけていってきな。それと、あんまり下層にいかないように」
「了解。じゃあ、通してもらうよ」
迷宮の入り口を通り抜ける瞬間に、肌にピリっとしたものを感じた。迷宮との境目ってことかな。洞窟の中は、壁自体がやんわりと輝いており、松明といった明かりは必要なさそうだ。暗ければ、生活魔法で明かりを出そうと思っていたが、これなら大丈夫だな。
道の幅は、大人が横に2人くらい歩ける程度。入り口から少し歩いたところで人が6名くらい入れそうな場所にでた。どうやらここが階層主を倒したときに生まれる、転送陣を使用する時の出入り口みたいだな。
その場所を通り過ぎて、さらに道を歩いていると分かれ道が出てきた。
ふむ、目的は階層主なので、サクサクと進んでいきたいな。
オレは、意識を集中して生活魔法の風系統の力を使い、風をこの階層に行き渡るように流していく。風が通り抜けず滞留する場所をいくつか感知しつつ、1箇所だけそのまま風が流れていくのを感じた。
「見つけた。よし、洞窟だとこの方法で探知していけそうだな」
オレはニヤリとして、感知したその場所へ歩みを開始した。洞窟を進んでいくとゴブリンと何回か遭遇したので、剣で切り倒していく。素材はでなかったが、魔石をいくつか手に入れる事ができた。
魔物は魔素が集まって生まれると言われている。
地上の魔物は、倒しても姿形がそのまま残る為、魔物の皮などの素材を剥ぎ取ることができる。しかし、迷宮で生まれた魔物は、倒すと黒い煙になって消えていく。これは、迷宮で生まれた魔物は死ぬと魔素となり迷宮に還元され、再び魔物を生み出す為に使われるようだ。
ただし、地上の魔物と違い、迷宮で生まれた魔物は結構な確率で魔石を落とす。これが、迷宮をメインとした冒険者の収入源である。素材を剥ぐ手間もなく、高価な魔石が手に入るので、迷宮は冒険者に人気なのだ。
といっても、素材が全く手に入らないわけでもない。どうやら、迷宮の魔物は発生した時に近くの物や生物なども吸収しているらしく、倒した魔物のベースとなっている生き物の素材や、それに関連した素材が出ることもあるらしい。なので、魔物の肉であったり皮が手に入ることもある。
その後も順調に進んで行き、今は道がカーブしていて少し先が見えづらくなっているところを進んでいる。オレは、生活魔法の風系統の魔法で索敵しながら進んでいるので、多少見えづらい道でも、何かいればわかるので問題ない。
そして、道の先に3匹の魔物が固まっているのを感知した。
警戒しつつ接敵すると、ゴブリンが3匹、3匹ともナイフを持ってこちらを睨みつけてきた。
なるほど、小柄なゴブリンなら3匹並べるほどの道幅か、オレは1人だからいいが、複数パーティーで前に2人に立つと、後ろの人が攻撃しづらいかもしれない。中々いやらしい作りになっているな。
3匹のうちの1匹がこちらへナイフを持って走ってきた。オレは剣を構えてそのゴブリンへ横切りの1撃を腰へ入れる。
そのまま前へ出て2匹のうちの1匹へ蹴りを放ち後方へ吹き飛ばす。もう1匹がナイフでオレを攻撃しようと飛びかかってきたので、ナイフを剣でいなして、体勢を崩したところへ後ろから背中を切る。
すると、遠くからナイフが飛んできたので、身を低くして躱し、ナイフが飛んできた方向へ走り、剣を切り上げてナイフを投げてきたゴブリンを切る。3匹とも魔素化したことを確認したら、周囲を警戒する。うん、問題なさそうだ。
魔石を3個を拾ったら、近くに下層へ降りる階段を見つけた。
よし、このままサクサクと迷宮攻略といこうか。
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