16話 エピローグ
これにて16話の終わりですん。
そして、いつも誤字報告してくださる方、
ありがとうございます。
助かっておりまする_:(´ཀ`」 ∠):
エピローグ
「この度は誠にありがとうございました。私の代で長年に続くお役目から解放される日が来るとは・・・」
ここはプティーの家、初日にザイドさんに挨拶をした当主の間だ。
お礼を言いいながらザイドさんは深々と頭を下げた。
「顔を上げてください。こちらとしても助かりました。それに、お役に立てたなら幸いです」
今回の戦いは巨体同士が暴れ回ったのだが、いつも通り人々の記憶には残っておらず、何かしらの戦いがあったという風になっている。
一部地形が変わっているが、それは封じられていた邪神との戦いの余波なのだと人々には認識されている。
ちなみにプティーは追放神が封印を壊した時の衝撃で気を失っていたので、オレの戦いを見てはいなかった。
「今日はめでたい日だ!宴を開きましょう。シュン殿も是非一緒に祝ってくだされ」
そんなわけで飲めや歌えの宴会が始まり、その日はザイドさんや屋敷にいる人全てで騒いで夜が更けていった。
宴会から数日は、エリス達と街を観光しながらお土産などを物色していった。
その間もザイドさんが屋敷にいてもらって構わないと言っくれたので、ご厚意に甘えさせてもらった。
「もう島があんなに遠くなってますね」
小さくなるオステンエストを見ながらエリスが話しかけてきた。
ここはクリオールへと帰る船の上だ。
オステンエストでの目的を終えたオレ達は、数日観光を楽しんだ後、ザイドさんに頼んでメイヒムへ向かう商船に乗せてもらった。
プティーは学園が休みの間、家族と一緒に過ごすということでオレ達だけ船に乗っている。
「そうだね。オステンエストはどうだった?」
「めずらしいものがいっぱいで楽しかったです。私が冒険者の頃はここまで来る機会もなかったので新鮮でした」
「そっか」
エリスが嬉しそうに笑うので、オレも釣られて微笑んだ。
オレとエリスはしばらく流れる景色を見て静かに過ごしていると、エリスがいるほうとは反対の腕に体温を感じたので、顔をそちらに向けるとアーティが少しむくれた顔でオレの腕を掴んでいた。
「2人だけいい雰囲気だなんてずるいです」
「・・・そういうわけでもないんだがな」
アーティの可愛いやきもちに苦笑しつつ、アーティにも今回の旅のことを聞いてみる。
「アーティはオステンエストは楽しめたか?」
「はい。ただ、お土産を買いすぎちゃったんで、また依頼で稼がないと」
「そっか。メルト達が喜んでくれるといいな」
「はい」
そうして穏やかな船旅が続き、無事にクリオールの我が家へと帰ってくることができた。
「さて、さすがに今日は疲れたし、ご飯は買ってきたもので済まそうか」
「そうですね。とはいえ、まだ夜まで時間もありますし、まずはお茶でも飲んで一休みしましょう。用意してきますね」
「ああ、それなら私も手伝うよエリス君」
「じゃあ、アタイらはお土産やらをサクッとアリックス達に渡しにいこうかね」
「ですね。私もリンカさんと行ってきます」
エリスとアダルさんはお茶の用意をしに台所へ、リンカとアーティはお土産を渡すために家を出ていった。
アーティとリンカは元気だな。船旅や馬車移動での疲れもなんのそのという感じか、これが若さというやつか・・・。
オレは自分の荷物を部屋に置きにいってから居間へ戻り、エリスとアダルさんの3人でまったりとお茶を飲んでいると、アーティ達も帰ってきたので皆で夕食を食べて各々部屋に戻った。
部屋に戻ったオレは追放神から渡された黒い水晶を眺めていた。
これを使えば、追放神の本体のある場所にいけるということだが、そうすると、これは一種のワープアイテムみたいなものなのか。
おそらくこれを使っていけるのはオレ1人だけだろうし、エリス達になんて説明しようかな・・・。
とりあえず、今すぐって話じゃないし後で考えるか。
オレはあくびをしながら考えるのをやめると、眠くなってきたのでベッドに寝転んだ。すると、扉をノックする音が聞こえてきた。
「どうぞー」
「失礼するよ」
オレが返事をするとアダルさんが部屋に入ってきた。服装はメイド服を脱いで寝巻き姿だ。
寝巻きといってもこの世界にパジャマなんてものはないので、ワンピースのようなものを着ている。オレは上半身を起こしてベッドに座り直す。
さすがに寝転んだままというのは失礼だしな。
「隣にいいかな?」
「ええ、どうぞ」
オレの隣に座るアダルさん。座ったものの、そこから俯いて動きを止める。
オレがチラッとアダルさんの横顔を見ると、若干耳が赤いような気がする。
オレはアダルさんが話し出すまで待とうと思ったので、お互い無言のまま沈黙が部屋を支配する。
しばらくすると、アダルさんは寝巻きの裾をぎゅっと握りながら口を開いた。
「シュン君・・・。その・・・、はしたないと思われるかもしれないけど・・・。どうか、私も愛してもらえないかな・・・?」
そう言ったアダルさんは俯いてはいたが、その手は顔、耳も真っ赤に染まっていた。
据え膳食わねばなんとやら・・・。
もし断ってしまったら勇気を出したアダルさんに失礼だという気持ちと、現在3人も恋人がいる中で、さらに増えるというのは人としてどうだろうかという理性が働く。
いや、3人いる時点で何もいう資格なんてないか・・・。
「ちなみに、エリス達は・・・」
「了承済みだよ」
なるほど、外堀もお埋めになられておられましたか・・・。
「オレみたいなのでいいんですか?」
オレは顔を近づけながらアダルさんに問いかける。
「君だからいいんだよ・・・」
アダルさんはそう呟いて目を閉じると、オレはアダルさんに唇を重ねた。
艶っぽい音が響くと、静かにアダルさんをベッドに寝かしてそのまま夜を過ごした。
翌日、テカテカとしたアダルさんが台所で上機嫌に朝食の準備をしており、その姿をみたエリス達3人は、若干やきもちを焼いたのか今日の夜は自分だと激しく主張していた。
君たち・・・アダルさんのことは納得済みじゃないのかね・・・?
などと言ってしまえば、藪蛇になるので、オレは何も聞こえないふりをして、お茶を飲みつつ朝食の準備ができるのを待つという、平和な朝を満喫するのだった。
次話が最終話となります。
それでは、ここまで読んでいただいてありがとうございます。
遅筆にて更新時期が未定なのは申し訳ないです。、
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