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いつもお読みいただいてありがとうございます。


今話のヒーロータイムです。


オレは今、メイヒムの港に来ている。この世界に来て初めての海。前世では(じか)に海を見たのはいつだったか。

ここに来たのは、例の大型の魔物が見えないかと思ってきたわけで。見えるかなあとか思ったら、見えてたわー。その大きさから、港からでもイカみたいな形の魔物が見える。ゲームとかでもクラーケンってモンスターがいたな、それに似てる。


今、沖合には船はいないが、クラーケンは沖合で足をバシャバシャさせている。威嚇(いかく)のつもりだろうか。それとも人類に対する怒りだろうか、ゴ◯ラ的な。まあ、この世界に放射能的(ほうしゃのうてき)なものはないだろうし、この世界の人類が海を汚すことはないはずなので、威嚇(いかく)してんのかね。

ちなみに、クラーケンに対して神パワーは感じないので、ただの魔物か。でも、露店のおっちゃんは初めて見る魔物って言ってたし、どこから来たのかな。

しばらく見てると、クラーケンが海に(もぐ)っていった。


「海に潜ったな。何かあるのか?」


そう思った矢先(やさき)に、遠くから船が1(せき)見えて来た。あれは、貿易船か?もしや、船が来てたからクラーケンは海に潜ったのか。だとしたら、マズいな。

オレの予想が当たり、港へさらに近づいて来た船の下から、10本の足が海の中から突き出し、船に巻きつき始めた。メキメキと音が聞こえそうな感じで、クラーケンの足が船を締め付け、そうして船をバラバラに粉砕(ふんさい)してしまった。

船体や運ばれてきた貿易品などはそのまま海の藻屑(もくず)と化してしまう。船に乗っていた船員達は、バラバラになった船の残骸(ざんがい)にしがみつくことで、なんとか(おぼ)れることを回避していた。


クラーケンはそのまま船員達を襲うのかと思ったら、船を壊して満足したのか、船員達には反応せずにプカプカ浮かんでいる。うーん、一体何がしたいんだろうか。魔物の考えてることはわからんな。

しかし、海の上の船員達を助けないといずれ溺れてしまうな。どうしたもんだろと思ってたら、小舟が数隻(すうせき)、船員達の方へ向かっていく。クラーケンは小舟にも反応していない。大きいものに反応してるのかな。そうして、船員達は無事に小舟に回収されていった。さすがに、あんな小舟でクラーケンとは戦えんな。

まあ、オレは船で戦うつもりはないけどね。とりあえず、宿に戻ろうかな。決戦は明日の朝だ。




時間は夜明けの少し前、あと少ししたら日が登るかな。

今オレは、港に来ている。まだ街の人は眠りついている時間であり、こんな状況のため、船も出せないので周りに人気(ひとけ)はない。

あれから船は港へ来ていない。しかし、遥か遠くで船が1隻停泊(せきていはく)しているのが見えた。どうやら、クラーケンがいることに気付いて、距離を取っているようだ。

クラーケンも街から一定の距離を(たも)っている様子で、その船まで近づくことはしていない。

さて、クラーケンには悪いが、君がいたらメイヒムに来た意味がなくなるのでね、退治させてもらうぞ。ただ、大きすぎるのとさすがに海にいたんでは、普通に倒すのは無理なので、奥の手をだそう。


オレは亜空間から青に輝くコインを取り出した。


オレはコインを右手に持つと、左手を腰に()える。すると腰にベルトが現れる。そのベルトのバックル部分にあるプレートを右から左へスライドする。

スライドしたそこには、コインをはめる穴があり、そこへコインを挿入(そうにゅう)すると、今度はプレートを左から右へスライドする。その瞬間、プレート部分から無機質(むきしつ)な声が流れる。


『リヴァイアサンフォーム』


声が流れた瞬間に、青く輝く半透明の龍に酷似(こくじ)した海蛇(うみへび)が表れる。そして、オレの足元を中心に直径2メートルの水の(うず)が生まれ周囲に水の(まく)を吹き上げる。あらゆる攻撃を防ぐ絶対領域だ。続いて、オレの体を黒いスーツが(おお)い、半透明の海蛇がオレの全身を包みこむ。そして、腕・胸・腰・足に鎧という名のアーマーが装着される。最後に、龍のような形をした上顎(うわあご)がオレの(ひたい)部分を覆い、下顎(したあご)が変形してオレの口元を覆う。目元のみをマスクが装着されて完了。

全てのアーマーが装着された瞬間に渦は消える。そして、全身に青に輝くアーマーを着たオレが現れた。

腕は龍の(うろこ)を集めた形、足はつま先に爪があり龍の鱗模様(うろこもよう)のブーツ、胸は龍の爪が両方から被さるような装飾がついた形、腰は水の流れをイメージした形になっている。


「さあ、イカ退治といこうじゃないか」


そう言って、オレは港の桟橋(さんばし)から海へ歩き出す。このフォームになれば水の上を歩くことが可能である。また、水中での呼吸も可能となる為、水中戦もできる。


「良い感じだな」


問題なく海の上を歩けることを確認したので、オレは水流を操って滑るようにクラーケンへ近づいていく。徐々に速度を上げ、ジェットスキーのように水しぶきを上げながら海上を進んで行く。


クラーケンが近くにつれて、改めてその大きさに驚く。これ、何メートルくらいあるんだ?海の上に見えてる分でも、相当な大きさだ。首をすんごい上に向けて見上げる。昔、スカイツリーを下から見た時にもこんな感じだったなー。

オレが近づいてもクラーケンはオレを無視している。オレとしては好都合だな。

ちなみに、この姿のオレはあらゆる水魔法が使える。


「んじゃ、先制攻撃させてもらおうか。【水龍撃(すいりゅうげき)】!」


これは、水を龍の形にして敵を攻撃する。単純な水量による衝撃(しょうげき)もあるが、水で作った牙によって、相手を食い破る。

ちなみに魔法は叫ばなくても出せる。叫ぶのは気分だな。

1匹の水龍がクラーケンの頭に噛みつく。噛みつかれたクラーケンは、すぐさま水の中から足を出して水龍を(つか)み、そして締め上げていく。そのまま、さらに足を追加して水龍を粉砕した。

クラーケンもさすがに自分を攻撃した相手は敵として認識したのか、オレの姿を見つけると、そのまま足を振り下ろしてくる。

とはいえ、オレは水の上を自由に動けるので難なくクラーケンの攻撃を(かわ)す。

さっきの攻撃で少しはダメージを与えれたかな。しかし、直接攻撃しようにも、あの足が邪魔だな。オレは水を手に集めて片刃剣(かたばけん)を作る。

攻撃を躱されたクラーケンは、攻撃する足の本数を増やして、さらにオレに振り下ろしてきた。


「ちょうどいい、お前の足を全部切らせてもらうぞ」


オレは剣を構え、振り下ろされる足に合わせて剣を横薙(よこな)ぎする。その際にオレは剣の長さを自由に変えれるので、一気に剣を長くして足を切り飛ばす。

切られた足が、オレの上を通り過ぎ、背後へ飛んでいき盛大(せいだい)に水しぶきをあげる。オレは剣の長さを戻して移動し、海面に出ている足を次々切り落とす。

さらに再び【水龍撃(すいりゅうげき)】をクラーケンに放つ。クラーケンが防御の為に他の足を水中から出したところを狙って、さらに足を切る。

全ての足を切り終えたところで(とど)めといこうか。

オレは、【水龍撃】を解除し、水魔法の【水流陣(すいりゅうじん)】でクラーケンの動きを封じる。この魔法は、水を紐状(ひもじょう)にして敵を(しば)る。

水の紐に縛られたクラーケンは【水流陣】から逃れようと必死にもがくが、逃げることは敵わない。


オレは、自分の足に力を集中したところで、水の柱を作り、自分を空中に飛ばす。

空中に飛んだ瞬間に腰のベルトから無機質な声が流れる。


『ファイナルアタック』


そのまま、空中で体を(ひね)り、キックのポーズを取ると一直線にクラーケンへ向かっていく。

水が右足に集まり龍の形を作り、さらに水が螺旋(らせん)(えが)き体を覆う。


「はあああああああ!!!」


そのまま、クラーケンへ蹴りを放つと、クラーケンは大きく海上を(すべ)るように吹き飛んでいく。そして、爆発して四散した。

うむ、やはり爆発こそ美学よ。って、そんなこと考えてる場合じゃない!

クラーケンの吹き飛んだ方向に停泊(ていはく)していた船があった。そして、クラーケンの爆発により大きな津波が起こってしまい、このままでは船が飲み込まれる恐れがあった。


「いっかーーーーん!!!」


オレは急いで船のほうへ向かった。


船上では、クラーケンが何者かに攻撃されているのを船員達は遠巻(とおま)きにみていた。その中に黒髪に(かんざし)をつけ、着物を着ている女の子もいた。


「クラーケンが攻撃されている?」


「そのようです。姫、何が起こるかわかりません、船内へお戻りください」


「船までかなりの距離があります。大丈夫でしょう」


「またそのような事を、何かあってからでは遅いんですぞ」


「じいの小言は耳にタコができます」


そんな事を話していると突如クラーケンが吹き飛び、爆発を起こした。


「な、何が起きたのですか!?」


「わかりませぬ!しかし、先ほどの爆発で大波が発生したようです!このままでは船が飲み込まれてしまう!皆の者!急ぎ船の出航を!!」


「ダメです!間に合いません!」


「っく。せめて姫だけでも・・・。姫!何かに捕まりくだされ。あの大波では、船内に避難(ひなん)しても無駄でしょう」


「わ、わかりました。神よ、どうか御加護(ごかご)を。私達をお守りください・・・」


というような会話をしていたようだが、オレが知るはずもなく。オレは必死に船の方へ向かっていた。そして、大波を追い越して船の前に立つ。

両手を前に突き出し、魔素で無理やり海を操作して大波(おおなみ)とオレの間に高さ10メートル、横幅(よこはば)20メートルの半円のような形の水壁(みずかべ)を作った。

その瞬間、壁に大波が当たるが、大波は半円の壁に沿うように左右に流れていく。

海面が大きく波打ち、オレの背後にある船が()られるが、大波に船が飲まれることはなかった。


「ふう〜。間一髪か・・・」


いやー、調子にのってイカを吹っ飛ばしたら、船も吹っ飛ばしたとかなったら笑えないわ。船も無事みたいだし、よかったわ〜。


「姫、ご無事ですか!?」


「はい、私は無事です。皆は、他の船員の方々は無事ですか?」


「は!突然表れた水の壁が波を防いだ為に、船ともに被害はありません」


「そうですか、よかった。それより、なぜ、急に水の壁が?」


姫と呼ばれた黒髪の少女が船の(はし)により、海面を(のぞ)くと海の上に青い鎧を着た人がいる。


「あれは人・・・?あの!貴方が助けてくださったのでしょうか?」


おお!?船から少女がオレに話しかけてきた。さて、なんと答えたものか。そもそもオレのせいなのだが・・・。いや、正直に話すか。といっても、どうせ、この事はいずれ忘れるんだから、話したところで意味はないんだが。


「いや、助けたというのは語弊(ごへい)がある。そもそも、オレが君たちを巻き込んでしまったようなものだ、すまなかった」


「いえ!港の付近に魔物がいて、困っておりました。退治していただいて、ありがとうございます。良ければ、お礼をしたいのですが!」


話し方とか見た目に気品を感じるな。どこぞの貴族かな。めんどうなことになりそうだし、さっさとお(いとま)しよっかな。


「気にしなくていい。気持ちだけいただいておく。それでは、失礼する」


「お、お待ちください!!せめて、お名前をお聞かせください!」


はっはっは、待ってと言われて待つ奴はいないのだよ。さらばだ、明智君!オレは少女の言葉を無視して、さっさと船から離れ、街へ向かう。

リヴァイアサンフォームの速度に追いつける船など存在すまい。しかし、念には念をいれて海に潜って戻ろう。そうして、オレはメイヒムの街に戻っていった。


「姫、あまり無闇(むやみ)に声をかけるのはお(ひか)えてくだされ。もし、不埒者(ふらちもの)だったらどうなっていたか。しかも、あのような面妖(めんよう)な格好で海の上に立つ人など、(もの)()(たぐい)やもしれませんぞ」


「じい!そのような発言は許しません!あの方から、神の力を感じました。不埒者どころか、私達を守ってくださったのですよ」


「なんと!?それは、失言でございました。申し訳ありません」


「いえ、私も言いすぎました。じいは私の身を案じてくれただけなのに。しかし、お礼もできず、名前も聞けませんでした。また、お会いできるでしょうか」


「我が国の巫女たる姫が望めば、必ず願いは聞き届けられましょうぞ」


「だと良いのですが」


という会話があったことなど知らないオレは、早起きしたので、早々に宿のベッドで二度寝するのだった。

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