第15話 エピローグ
これにて15話の終わりですん。
全体的に短い話になりましたが、一つ一つは少し長めに書いた気がします。
16話へ続きます。
エピローグ
「何と言うことじゃ・・・」
戦いが終わり、神樹のあった場所は荒地となって広い空き地となっていた。
最後の爆発が終わると様子を見に来た長老が膝から崩れ落ちた。また、長老の他にも多くの森人族がこの空き地を見て呆然としている。
オレは変身を解いてからアダルさんの側に行くと、2人で長老の元へ歩いて行った。
「長老」
アダルさんが長老に声をかけると、長老はアダルさんの顔を睨んだ。
「アダルよ、お主にまかせるとは言ったが神樹様を消失させるとは何事じゃ!!」
あまりの出来事に感情を抑えきれなかった長老が持っていた杖をアダルさんへ振り上げた。
いかんな。
オレはその杖を受けようとした時、アダルさんの前にアドンさんが現れ、その杖を掴んだ。
「父上」
「アドン!そこをどけ!」
「おやめください長老。アダルを打ったところで何も変わりません。それに、父として娘が傷つけられるのを見過ごすわけにはいきません」
その姿を見たアダルさんは思わず涙を流しそうになっていた。
険悪なムードが流れそうになった時、アダルさんが持っていた花が白く輝くと、幼い姿のイオヌ様が姿を現した。
「し、神樹様・・・」
その顔は長老の行いを責めるように険しい顔をしていた。
「長老。話を聞いてもらえますか?」
アダルさんが静かに長老に声をかけると、長老も杖を下ろしてアダルさんの言葉に耳を傾けるのだった。
「イオヌ様からこの花が新たな自分の体になると言われました。神樹が無くなってしまったのは残念ですが、あの黒い樹を放置していたらきっと村にも被害がでていたでしょう」
「いや、それなら神樹を消してしまったのはオレの責任ですよ」
「いや、私と君の責任さ」
オレを守るためだろうか、あくまでアダルさんも共犯だということらしい。
そんなオレ達を見たイオヌ様がフルフルと顔を振ると、空き地の中心に移動して指で地面を指し示した。
「そこへ植えろということですか?」
オレがそう言うと首を縦に振るイオヌ様。オレはアダルさんに声をかけて一緒にその場所まで行くと、アダルさんは花をそっと地面へ植えた。
花を植え終わると、イオヌ様はオレを見て両手を地面につける。
「あー、力を注げということですかね?」
オレがそう聞くと、満面の笑みで頷きながら、ミニイオヌ様はその姿を消してしまう。そういうことならばと、オレは地面に両手をあてて神の力を注ぎ込む。
割と本気で力を注ぐと、すぐに花が枯れて種を作り、その種が地面へと落ちて地中へと埋まっていった。すると地面から地鳴りが始まり、種の埋まった場所から木が生え始めた。
生え始めた木はみるみると成長していき、オレ達の目の前まで迫ってきたので、慌ててアダルさんの手をとって後ろへ下がる。
「た、退避ー!」
しばらくして成長が止まると、以前の神樹ほどではないがそれなりに大きい樹へと成長していた。
そして、その樹から以前と同じ姿をしたアダルトイオヌ様が姿を現した。
「おお・・・、神樹様」
長老がイオヌ様の姿を見て安心したように呟いた。オレはアダルさんにイオヌ様が無事に現れたことを教えようと、アダルさんの方を見る。すると、アダルさんが涙を流していた。
「シュン君・・・。これは奇跡なのかな。私にもイオヌ様のお姿が見えるんだ・・・」
オレは何と言うべきか少し悩むと、
「良かったですね」
と、言った。
「うん」
そう返事したアダルさんは目を弓にして優しく笑うのだった。
『皆、私の声が聞こえますか?』
「こ、これは・・・!!神樹様のお声が」
長老が驚きの声をあげ、この場にいる森人達もざわざわと騒ぎ出す。
『どうやら聞こえているようですね。私の名はイオヌ。神樹イオヌです。この度は、皆に心配をかけました。前の樹の寿命が来た為に、新たな体となる樹を作る必要があったのです』
イオヌ様の説明を聞いて長老達はアダルさんを見る。
神樹様と呼んでいた存在から、イオヌという名を告げられことから、アダルさんの言っていることが嘘ではないということが証明されたわけだ。
『アダル・・・。私の声しか聞こえないばかりに、辛い思いをさせたわね・・・』
「とんでもありません。そのおかげで多くの経験をして良い人たちに出会えましたよ。それで、どうして私にもイオヌ様のお姿が見えるようになったのですか?」
『ふふ。それはね、少し元気をもらいすぎたからでしょうか』
オレをチラッと見て悪戯っ子のような顔で笑うイオヌ様。
こっちを見られても困るな・・・。オレとしては加減がわからなかったので、適当に力を注いだつもりだったんだがな・・・。
『でもそのおかげで、これからは皆にも声を届けることができるわ』
昔から話していたからだろうか、アダルさんと話すイオヌ様は随分気安く話すように見えた。
色々とあったが、イオヌ様のパワーアップにより、アダルさんもイオヌ様の姿が見えるようになったし、長老達も声が聞こえようになって結果としては最良の終わりではなかろうか。
こうして神樹の森でのイベントは終わり、オレはクリオールの街に戻ったのだった。
ちなみに、神樹の森を出る前に、長老達はアダルさんに正式に謝罪をし、アダルさんはそれを受け入れた。
そして、アダルさんは何故かオレと一緒にクリオールに戻ることしたのだが、当然長老達はアダルさんを引き止めた。
しかし、アダルさんはしたいことがあると長老達を説得して、神樹の森を出た。
神樹の森を出るときにイオヌ様が
『アダルをよろしくね』
と言ってきたのだが、一体何のことだろうか・・・?
という説明を家に帰ってきたオレは、エリスとアーティ、リンカにしていた。
「それで、どうしてこうなったのか今一よくわからないんですが・・・」
エリスが困惑した顔でオレを見る。いや困惑して顔をしているのはアーティとリンカもだが・・・。もちろんオレも同じ顔をしている。
「それについては、オレにもわからないんだよね・・・」
そもそもオレ達がこんな顔をしている理由なのだが、オレの後ろでニコニコと笑っているメイド姿のアダルさんがいるからだった。
「それは私から説明しよう!神樹の森を救ってくれたシュン君の為に、私は生涯を捧げようと決意したんだよ!」
「はあ・・・。それでその格好は?」
「ふふ、いい質問だねエリス君。これからこの家に住み込みで働かせてもらおうと思ってね」
「あの・・・、組合には戻られないんですか?」
「組合にはカディア君がいてくれるし、それに君もいてくれるから安心だよ」
「シュンさんはいいんですか?」
「いいと言われると困るな・・・。オレも今初めて聞いたしね」
オレは思わず苦笑してしまう。
「君達の邪魔はしないようにするよ。ダメかい・・・?」
アダルさんが不安気にオレを見つめてくる。
その顔は卑怯ですよアダルさん・・・。とはいえ、オレだけで決めていい話じゃないしな。
「エリスやアーティ、リンカはどう思う?」
「私はシュンさんが決めたことなら文句はありませんよ」
「私はシュンさんにお任せで」
「アタイはどっちでもいいねえ」
結局最後はオレが決めるのか・・・。
「・・・わかりました。とりあえず、しばらく様子見で働いてもらいます。とはいえ、家の管理とかはあまり必要ないので、アダルさんも冒険者の依頼をしてもらうことになると思いますが・・・」
「それでも構わないとも。ありがとうシュン君!」
オレがそう言うと、アダルさんは笑顔になってオレに抱きついてきた。そして、オレの耳元でこう囁くのだった。
「もちろん君が望むなら夜のご奉仕も問題ないよ?」
「なっ・・・」
オレがその発言に驚いていると、いつの間にか背後にエリス達3人が立っていた。
「っは!殺気!!?」
「シュンさん・・・、それはまだ許してませんよ?」
「私との約束もまだなのにダメですよ?」
「住み込みはいいけど、それはやりすぎじゃねえのかね?」
3人とも口は笑っているが目は笑っていなかった。
その後、3人のご機嫌をとるハメになったのだが、まあ、もはやこれもオレの中の日常の一部だろう。
「改めてよろしく頼むよ、シュン君」
「よろしくお願いしますねアダルさん」
やれやれ、これからも楽しい毎日が続きそうだ。
などと思いながらも苦い笑いをするオレだった。
16話に続きます。
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