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ここはクリオールにある乗合馬車の発着場だ。
ここに来る前にエリスに鍵を渡し、約束通り肌着はおいはぎにあってきた。久しぶりに綺麗な肌着を着て、改めて綺麗な服というは素晴らしいと感じるよ。
メイヒムには歩いていってもいいんだが、折角だし馬車で旅もしてみたいと思ったので、乗合馬車を探して、乗せてもらうことにしたわけだ。
メイヒムにいく馬車を探してると、ちょうど、メイヒムに行商にいく商人がいたので、一緒に行かせてもらうことにした。もちろん、お金は払ってるぞ。
そして、その商人というのは、偶然にもエリスと行ったお店の会長、レインさんの馬車だ。
そう、あくまで偶然だぞ。
「レインさん、すいません、急なお願いをしてしまって。今日からよろしくお願いします」
「いえいえ、大丈夫ですよ。こちらこそ、お願いします。今回の護衛の冒険者を紹介しますね。パーティ名、”同朋”のお二人です」
「メルトです。シュンさんお久しぶりです。よろしくお願いします」
「アーティです。今日はよろしくお願いします」
メルトとアーティ、2人は兄弟で”同朋”というパーティーを組んでいる。パーティーの階級は☆6だが、人柄の良さで護衛依頼の人気が高い。もちろん、冒険者仲間なので、オレも2人とは知り合いだ。
メルトは剣士だ。剣士と言えば屈強な男というイメージがあるが、目がぱっちりした童顔のイケメンだ。髪が茶髪でボブっぽいショートカット。可愛い顔をしているが剣士として順調に力をつけている。
アーティーは、弓士で斥候も兼ねている。髪はメルトと同じ茶髪で、ポニーテールにしている、ほどいたら腰までありそうだ。兄弟そろって目がぱっちりした可愛い顔立ちをしているな。あと、どこがとは言わないが、Cカップくらいありそうだ。
ちなみに、護衛が2人で大丈夫なのかという疑問があると思うが、港町のメイヒムまでは街道が整備されていて、盗賊や魔物がほとんど出ないそうだ。整備されているといっても、地面を整地してならしているにすぎないが・・・。
「さて、では行きましょうか。シュンさんも準備はいいですか?」
「大丈夫です、レインさん。ちなみに、オレはどこに乗せてもらえばいいですか?」
「すいませんが、メイヒムに行く前に1つ村による予定でして、その村で荷を少し下ろせば馬車の中に座れる場所ができるはずなんですが、それまでは私の隣でもいいですか?」
「ええ、構いませんよ。お世話になります」
そうして、オレのメイヒムまでの旅が始まった。レインさんは自ら馬を操りながら道を進んでいく。
レインさんの商会は、昔からクリオールに店を構えているので、人を雇ったりしないのかと思ったが、これまでずっと親族経営をしているということで、今は息子さんが見習いとして店で働いてるらしい。
もう少ししたら、行商にも連れていくことになるそうな。仮に子供がいなければ、親戚から人が来ることもあるらしい。そうやって、堅実に店を続けている。
それはそれとして、道はのどかで何事もなく、途中で馬を休ませるために休憩したりしながら順調に進んでいた。
「今日はこの辺りで夜営にしましょうか。この調子なら明日には村に着けるでしょう」
「やったー。明日はベッドで寝れそうだわ」
「アーティ、喜ぶのも良いけど、夜営の準備をしようか」
「はーい、お兄ちゃん。じゃあ、魔物除けを周りに設置してくるわ」
「よろしく。じゃあ、レインさん、俺はテントを張ってから食事の準備をします」
「はい、わかりました。私は馬をつないでおきますね。シュンさんはご飯はどうされるんですか?」
「オレは自前のがありますんで、大丈夫ですよ」
「そうなんですか。軽装に見えましたが、もしや魔法袋をお持ちで?」
「はい、この腰の小さい鞄のヤツですね。ここに食料とか入れてるんです」
実際はオレの亜空間の力であって、これは魔法袋ではないのだが。しかし、ごまかすのも面倒だし、今度、自分で作れないか研究してみよう。
「それはそれは。商人にとって羨ましい限りですな」
「レインさんもお持ちじゃないですか」
「私のは店に受け継がれているものですよ。それに容量もそこまで大きいものではありません。だから、もう1つ手に入れたいと考えてまして。それに、魔法袋ならいくつあっても困りませんしね」
「なるほど。とはいえ、魔法袋は中々市場に出回らないんですよね?」
「そうですね。魔法袋は大きい商会や貴族に人気なので、すぐに買われていまいます。冒険者の方も手に入れたら自分で使うので、市場に出にくいですね。迷宮でしか発見できないというのも要因の1つかもしれません」
「なるほど。それは中々手に入りませんね。オレも偶々手に入ったものなんですが、これが手に入ったのは幸運でした」
「それは幸運でしたね。おっと、あまり長々と話しては、シュンさんが夜営の準備ができませんね。これは失礼を。明日は、日の出とともに出発しましょう」
「わかりました。では、オレは少し離れたあの辺で夜営しますので」
そういって、オレはレインさん達から離れた場所へ移動する。さて、寝床を作って夕ご飯の準備をするか。オレは生活魔法の土系統の力を使って立方体のブロックを作る。そして、その中身を空洞にして入り口をつければ、屋根と壁だけの簡易的な家の完成。後は、中に入って地面を平たく固めて、すみっこに長方形に土を盛り上げて、固めてベッドを作る。外から見ると四角い箱のようだから、箱家ってとこかな。
さて、オレの使った魔法だが、生活魔法と呼ばれる種類のもので、人によって火が得意とか、風を起こすのが得意とかあるが、基本的には、この世界のほとんどの人が使える。一部に身体強化しかできない種族もいるが、そういった人は、力技で火も起こせるし、それはそれで問題ない。
ただし、皆が使えると言っても、オレのように使える人は、多分いないだろう。何故なら、生活魔法とは、あくまで生活が便利になる程度の威力なのだ。
しかし、オレは、2年という歳月を森で過ごしたときにひたすら生活魔法を使った。使って使って使いまくった結果、生活魔法(極)というものに進化したのだ。そのおかげで、火や水などを操作する力が格段に上がり、大抵なことができるようになった。
そして、そんな使い方をすれば周りは驚くのも当然ということで・・・。
「シュンさん、これ・・・なんですか?」
近くにきたアーティが驚きながらオレに聞いてきた。
「これはな、魔法で作った簡易な家?いや、テントの代わりだな」
「テントの代わり・・・、いやいやいや家っていうか、こんなの魔法で作れるとか、シュンさんて何者なんですか?」
「何者と聞かれても、ただの冒険者なんだが?」
「ただの冒険者・・・?私、冒険者でこんなの魔法で作れる人なんて見た事ないですけど・・・・」
「なら、今後も冒険者として活動してたらそのうち出会うんじゃない?」
「え・・・?そうなんですかねえ・・・」
「それよりも、メルトの手伝いをしなくていいのか?」
「それはそうなんですけど・・・」
何か思うところがあるのか、じーっとオレの建てた箱家を見ているアーティ。
「ほれ、オレも飯の準備をするから、行った行った」
「はーい。あの、後で中を見に来てもいいですか?」
「・・・いいよ」
「なんですか今の間は?」
「気にするな」
「むう、では、またあとで」
「はいはい、わかったよ」
アーティのあの反応、めんどくさいことになりそうだな。
アーティが戻った後、メルトとレインさんが騒いでいるのが見えた。多分、オレが作った箱家のことをアーティから聞いてるんだろう。
まあいいか。とりあえず、オレも飯の準備をしよう。生活魔法(極)を使って、土からかまどを作り、薪をセットしたら火をつけて鍋を置く。鍋の中に水を出して、干したきのこを入れて、戻しつつ出汁をとる。さらに、香草で香りをつけつつ、メインとなる鳥の魔物肉を入れて煮る。途中で灰汁がでるので、また、こまめに取り除いて、野菜を少しいれたらもうちょい煮込んで完成だ。
次に、もう一品メインを作る。かまどの隣に土を盛り上げて、まな板を取り出して置く、その上にスープにも使った魔物肉とは別の部位の肉を置き、ブロック状に切っていく。鍋をちょっとどかして、鉄板をおいたら、肉を焼いていく。調味料はないから、軽く塩をふるだけなのが残念だなあ。胡椒が欲しい。
出来上がった料理を皿に盛り付けて、椅子っぽいのとテーブルっぽいのを土で作って並べて、さあ、食べるか・・・、と思ったんだが、誰かが近づいてくる足音が聞こえてきたので、そっちへ振り向く。
「シュンさん・・・、それ美味しそうですね」
近づいてきたメルトがオレのご飯を見てそう言ってきた。
「まだ食べてないし、味付けも適当だから美味しいかどうかわからんぞ」
「いえ、匂いでわかります。こっちまで良い匂いが漂ってきました」
「・・・鼻がいいんだな。で、何の用だ?」
「いやあ、あまりにも美味しそうなので、俺達も少しいただけないかなー、なんて・・・、ダメですかね?」
「はあ、わかったよ。レインさん達を呼んできたらいい。ただし、金かそっちの食料と交換だぞ」
「わかりました!!すぐ呼んできます!!」
そう言ってレインさんとアーティを呼びに走って戻っていった。
しょうがない、もう少しスープと肉を用意するとするか。
戻ってきた3人と一緒に夕食を食べる。3人とも美味しいと言って料理を食べつつ、メルトやアーティから、夜営だと基本は干し肉とか携帯食で済ますことが多いのに、こんな簡易な建物を作ったり料理したりとシュンさんは異常だとか言われながらご飯を食べる。そんなことは知らんがな。オレは夜営だろうとなるべく快適に過ごしたいのだ。
そして、ご飯を食べたあと、3人が箱家を見たがったので中を見せてやった。
「なにこれ!?地面が平ら!ベッドらしきものもある!すごい!」
「ほお、これはすごいですね。見事なものだ」
アーティとレインさんが声を出して驚いている。メルトは珍しいものを見るように中を見学している。
「いいなあ、いいなあ。羨ましいな〜」
「羨ましいって、アーティにはテントがあるだろ」
「だって、テントってすきま風とか入ってきて、時期によっては寒いんです。これなら風とか入ってこなさそうですし、布で出来てるテントより安全そうですし」
「確かにこれはテントよりも安全に見えますよ。素晴らしい魔法ですな。私もできればここで眠りたいくらいですよ」
「レインさんもそれは言い過ぎでしょう。簡素な作りをしてるだけのただの箱ですよ」
「ちなみに、これを作るのは大変なんですかな?」
「まあ、それほど労力はかかりませんね。けど、今日のところはメルトがテントを張ってくれてますし、レインさんもそちらで休まれては?」
という具合に牽制しておこう。せっかくメルトが頑張ったんだし、それを無視するのも気が引けるしな・・・。ぶっちゃけ、今から作るとなったらめんどくさいし。
でも。気持ちはわからんでもないがな。3匹の子豚ではないが、誰だって安全なところで寝たいだろう。
「そうですね。いや、ご飯まで分けていただいて、さらにわがままを言うものではありませんな。申し訳ない」
「いえいえ、明日以降ならできる限りで協力はしますよ」
「それは嬉しいお言葉ですな。では、そろそろ戻りましょう。お休みなさいシュンさん」
「ええ、お休みなさいレインさん。ほら、メルトもアーティも戻んな」
「そうですね。では、お休みなさいシュンさん」
「自分だけずるいですー。お休みなさーい」
メルトとアーティもオレに挨拶をして、3人で戻っていった。
はあ、やれやれ。最後に気疲れしたな。とはいえ、誰かと旅をするならこういうこともありえるか。ま、騒がしいのもたまには悪くない。
さて、今日のところはオレも寝ようかね。
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