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うむ・・・、成り行きとはいえ、いや成り行きなのか?とりあえず、勇者に模擬戦(もぎせん)を挑まれるとはな・・・。


勇者ことカロルは半ズボンにブーツ、上は動きやすい服を来ている。武器はショートソードだ。


まあ、まだ小さいしショートソードじゃないと上手く扱えないか。とはいえ、カロルからは騎士達とは違う何かを感じる。


まあ、勇者に選ばれたくらいだし、神から加護の1つでももらっているだろう。


オレは念のため、体に魔素を循環(じゅんかん)させ身体強化を(ほどこ)す。


身体強化という技能(ぎのう)をオレは聞いたことはないが、オレは自分の魔素量を増やす訓練をしている時に、魔素を常に体に循環させることで身体能力を向上させれることに気づいた。


それで技能が発生したわけではないので、これは技能ではなく一種の技術扱いなのだろう。まあ、相手は勇者だ。油断せずにいこうじゃないか。


「いいでしょうかー?」


「おー、始めようか」


間延びした感じでカロルがオレに声をかけてきたので、オレもつられて返事をする。


「では!」


カロルは足に力を込めると、一瞬でオレの前に移動して素早く剣で切りつけてきてきたので、オレはカロルの攻撃を剣で受け止める。

しかし、その小さな体のどこにこれだけの力があるかと思うほど、その一撃は重いものだった。


これが加護の力ってやつかい・・・。身体強化しておいて正解だったかな。


「すごい!全力の攻撃を防がれたのは初めてです!」


攻撃を受け止められたのに、どこか嬉しそうに笑うカロル。正面からの攻撃をオレに防がれたので、今度は横から剣を振ってくるが、オレはそれをさらに防ぐ。


すると、カロルは小柄な体躯(たいく)を活かして足元から切り上げたり、後ろに回り込んで突きを繰り出したりと、様々な攻撃をしかてきた。


「ほ、っと、それ、ほい」


オレはその攻撃に対して体を(ひね)ったり剣を使って攻撃を()らして(かわ)し続ける。


「まさか、カロル様の攻撃が見えてるのかよ・・・」


「俺、そもそも本気のカロル様の攻撃なんて受け止められないぞ」


その攻防を見ていた騎士達から思い思いの感想が口から()れた。


「はあはあ・・・、すごいですねお兄さん。全然当たらないや」


「いや、オレも結構ギリギリだよ。さすが勇者様だ」


「それだけ強いなら、騎士達との訓練なんて必要ないんじゃないのか?」


「いえ、僕は剣を扱ったことがなかったので、騎士の皆さんに教えていただいてたんです。それに、村にいた頃は畑を耕すくらいしかしてなかったので、色んな経験が足りてません」


「へえ、努力家なんだな」


「そ、そんなことないですよ」


オレの言葉に照れるカロル。しかし、次の瞬間には息を整えて、オレに言葉を投げてくる。


「それでは、最後にとっておきを見せます」


カロルはそう言うと、剣の刃が顔の正面に来るように縦に構え精神を集中して、すっと目を閉じた。そして、すぐに開くとその目がうっすらと金色に輝いていた。


「行きます!」


次の瞬間に常人では目で追えないほどの連続の突きを放ってきた。


こ、この高速の突きは、まさに◯ガサス流・・・。いや、剣を使ってるから◯ガ刺すかな・・・。


オレはそんなアホなことを考えつつ、カロルの全力に応えるために体に力を込めて迎え撃った。


カロルの突く攻撃に対して、オレはその攻撃に剣の先端に合わせるように同じように突きを放つと、お互いの剣が何度もかち合い、金属の音を幾度(いくど)(かな)でた。


そうして、カロルの攻撃が止むまで突きを繰り返すと、最後にはお互いの剣が砕け散ってしまったので、ここで模擬戦終了となった。


「う、うぎゅー・・・」


模擬戦が終わるとすぐにカロルが大の字で倒れ込んだ。


「カロル大丈夫ですか?もう!まだその力は上手く扱えないんですから無茶しちゃだめじゃないですか!」


「えへへ、ごめんなさーい」


エヴァがカロルに近づいて介抱を始めた。


聖女と勇者か絵になる風景だな。


「それにしても相変わらずシュン様は出鱈目(でたらめ)ですね」


「出鱈目とは?」


オレはエヴァの一言に首を(かし)げる。


「勇者の力を使ったカロルの攻撃を防ぐところがですよ」


「それは、年の功ってやつかな」


「それで勇者の攻撃を防げたら苦労しません!やはり、シュン様は私達と一緒にくるべきだと思います」


「それは無理な提案ですね。生憎(あいにく)オレはオレでやることがあるんですよ」


「それはわかってます。言ってみただけですよ」


そう言いいながら少し頬を膨らますエヴァ。


ふむ、美少女は何をしても可愛いので困るな。でもまあ、わざわざオレが一緒にいかなくてもちゃんとしたパートナーができたじゃないか。

そもそもオレはエヴァの父であるクーノ様とほぼ同じ歳だしな。おっさんが、若い子に混じるのは色々と辛いものがある・・・。


「それに、オレが一緒に行かなくてもカロルがいるじゃないですか。数年もすればきっとお似合いの二人なりますよ」


「え?」


「はい?」


「うん?」


カロルが呆け、エヴァが疑問符を浮かべ、オレが聞き返すという構図。


「シュン様・・・、まさかと思いますけど・・・、カロルのことを男の子だと思ってませんか?」


「え・・・?勇者って男が選ばれるんじゃないですか・・・?」


オレの発言にカロルが少し涙ぐんで呟いた。


「そ、そうですよね・・・。僕って小さいですし男みたいですもんね・・・」


「いや!そうじゃないぞー。ほら、僕っていうからてっきりさ?それに勇者は男が選ばれるっていう先入観があってだな?」


「シュン様・・・。さすがにそれはひどいと思います・・・」


エヴァが若干引いた感じでオレに言った。


ちゃうねん・・・。おっさんになると10代前半なんて皆おんなじに見えんねん・・・。


「良いんですエヴァ様・・・。僕とか言っちゃってますし、男の子みたいな名前ですし・・・勘違いされてもしょうがないです・・・」


必死に笑おうとするカロル。その口は笑顔になりきれておらず若干涙目だ。


「えーと・・・。ごめんな」


オレはそれしか言えなかった。


許して◯ヤシンス。

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