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いつもお読みいただいてありがとうございます。
それでは、第2話の始まりです。
よろしければ、またお付き合いください。
1
今日も今日とて依頼をこなし、生活費を稼ぐ日々。無理をせずマイペースに日々を過ごせるってことは幸せなことだ。
とはいえ、エリスと恋仲になり、エリスと過ごす時間も増えたわけだが。
最近は、エリスがオレの家にちょくちょくお泊まりしている。その度に、エリスの私物が我が家へ持ち込まれ、オレの家が徐々に侵食されていっている。つっこむべきかどうか悩んでいるが、部屋は余ってるし、まあいいか。
ちなみに、エリスは普段は寮に住んでいる。組合の職員は、社員寮のような職員専用の住居が貸し与えられる。そっちのほうが、冒険者組合に近いんだが、エリス曰く、
「少しでもシュンさんと一緒にいたいんです」
だそうだ。
可愛いやつめ、そこまで言われては何も言えないな。否、何かを言うなど無粋というものよ。
そして、エリスと恋仲になってから冒険者組合でも変化が起きた。男冒険者からは、殺意のこもった熱い視線を注がれ、受付嬢からはアプローチを受けるようになった。
このことについてエリスに聞いてみたが、オレはどこかとっつきにくいところがあり、そこそこ稼いでるし性格も悪くなさそうという事で、仲良くなりたいが、そのきっかけがなかったそうな。いや、君たち、最初はオレの事、馬鹿にしてたよね?
しかし、エリスと恋仲になったことで、その垣根がなくなったと思われ、アプローチを受けるようになったとの事。
オレも男なので、女性からのアプローチは素直に嬉しい。が、エリスが嫌がるのではないか?そう思ったので、エリスに聞いてみたら、
「良いオスにメスが来るのはしょうがないですから。少しくらいは大目に見ます。ただし、私を一番に考えてください。そうじゃなければ・・・・・・・フフ」
なんともワイルドな意見が返ってきた。それにしても、怖いわ〜、エリスさん怖いわ〜。大切にするからね?その圧はやめようね。
そんなこんなで毎日を過ごしていたが、そろそろ前から計画をしていたことを実行しよう思う。それは、塩を大量に手に入れるという計画。そう、塩を作りにいこうと思う。
2
「メイヒムに行くんですか?」
「そそ、港街のメイヒムは貿易で栄えてるから、珍しいものとかありそうなんで、見に行きたいんだ。」
我が家でエリスと食事をしている。もはや、半分当たり前の風景になりつつあるな。
「ちなみに、メイヒムで何が見たいんですか?」
「一番は、香辛料。あとは、塩を安く買えないかなって思ってる」
買うというよりは、作りにいくんだが。
「塩ですか、確かに、この街では滅多に手に入りませんね。香辛料は何のために?」
「もちろん、料理に使いたいんだよ。塩もそうだし。砂糖も手に入れば、さらに嬉しいんだけどね」
「なるほど。メイヒムだと片道5日ほどですよね。何日くらいこの街を離れるんですか?」
エリスがじと目でオレを見ながら話す。
「そうだな。往復で10日で、向こうで何日過ごすかわからないから、20日くらいは離れるかな」
「そうですか、その間、私は1人寂しく、この街にいるわけですね」
「う、そこは悪いと思ってるよ。でも、そんなに長く組合を休めないだろ?お土産はちゃんと買ってくるからさ、許してくれ」
「むう。しょうがないですね。その代わり、シュンさんにお願いがあります」
「いいよ、オレにできることなら聞こうじゃないか」
「出発は、今日から3日後でお願いします。それから、今着てる肌着を着替えずに、3日間過ごしてください」
「・・・なんとなく考えてることがわかるけど、敢えて聞こうか。何故、肌着を着替えず過ごせと?汗とかかくから、同じ肌着をずっと着続けるのは遠慮したいんだが」
「3日もあれば、シュンさんの匂いがしっかり移りますから。シュンさんが帰ってくる間、それで寂しさを紛らわせます。なんなら、下の肌着でも」
「それは断固として断る。できれば、3日も同じ肌着を着るのも」
「それは譲れません」
「よろしい、ならば戦争だ」
「って、そうじゃない、確かに寂しい思いをさせるのは申し訳ないが、3日じゃなくてもよくない?1日着たやつでもいいと思うんだけど。それに、エリスって冒険者が報告に来た時、不潔な匂いがきついって言ってなかった?」
「確かに、清潔にしてない冒険者の人達の匂いは悪臭です。が、シュンさんは別です。そもそもシュンさんて、割と頻繁に洗濯しますよね?だから、悪臭どころか、服に匂いが移りづらいんです。私が冒険者さんから聞いた話だと、洗濯なんて3日か4日に1回くらいですよ。なので、シュンの場合だと、1日だと匂いが移りませんから、3日は着てもらわないと駄目ですね」
「オレが変みたいに言っているけど、清潔にするのは良いことだよね!?・・・まあ、オレのわがままを聞いてもらうわけだから、そこが妥協点か。しょうがない、3日の肌着で手を打とう・・・」
「ありがとうございます。あと、この家の鍵を貸してください」
「・・・何故?オレがいない間、寮から通うんじゃないの?」
「恋人ですから、シュンさんのお家の管理もするのが仕事です。20日も開けるなら、ちゃんと掃除しないとですよ」
「それは、助かるな・・・、わかった。出発日の前日に渡すよ」
「これで、シュンさんのベッドで寝れますね」
最後のは声が小さすぎて、エリスが何を言ったのか聞こえなかった。
「何か言った?」
「いえ〜。何も言ってませんよ」
すんごい笑顔ですね、エリスさん。背後に邪念を感じるけど、気にしないことにしよう。掃除してくれるのは、確かにありがたいし。ま、入ってほしくないところは、別で鍵を作っとけばいいか。
しばらくエリスに寂しい思いをさせるけど、野望のためには仕方あるまい。
てことで、オレは、港町メイヒムへ向かうことにしたのだ。
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