第1話 エピローグ
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これにて第1話終了です。
エピローグ
あれから10日以上経っているが、メイア達がオレを探してどうのこうのといことはない。そして、メイアの他、サーヤやウルカもポーションで助かり、5人とも無事ということだ。
オレは、相変わらず冒険者として依頼をこなし、日々生活している。
ちなみに、街ではメイア達が森での演習中に、大きな狼の魔物に襲われた。それを、メイア隊で討伐したとされている。
何故オレが、あれだけ派手に立ち回ったにも関わらず、メイア達に事情の説明など求められないかというと、オレは神の力を使った場合、それに関係した人からオレの記憶を消すという機能を追加した。
これにより、オレが変身する前後に関わった人から徐々にだが、オレが関係した事柄が記憶から抜けていく仕様だ。さらに、オレが神の力を使った時に近くにいる人は、特に強く作用しオレの事を忘れやくなる。一部例外はあるが、最終的には誰かがいた気がするが、それが誰かはわからない。みたいな感じになるはずだ。
そう、日曜のヒーローは普段は日常に溶け込んでいて、周りはそのことについて触れない。それでいい、この世界では平穏に生きようとオレは決めたんだから。
「こ、ここがシュンさんのお家なんですね。」
「そ、まぁ、汚い家だけど、どうぞ入って。」
「お邪魔します。」
そして、今日はエリスをオレの家に招待する日だ。
大狼に向かう前に、エリスをオレの家に招待するという約束をした。悲しそうなエリスを見て咄嗟に言ってしまった事ではあるが、あれから、エリスが冒険者組合にいく度に、「いつにしますか?私はいつでもいけます!」と、尻尾をブンブンと振りながらフンスフンスと言うものだから、その可愛さに負け、今日招待するに至った。まぁ、別にエリスだったら家にきてくれていいんだけどね。
「全然汚くないじゃないですか。素敵なお家ですね。」
「そう?それならよかった。とりあえず、椅子に座って待ってて、お茶を入れるよ。」
オレとエリスがいるのは、居間にあたる部屋になる。
入り口のドアを抜けると、台所が隣接した居間になる。この部屋にはテーブルが1つに椅子が4つあり、エリスにはその内の1つに座ってもらった。
「でも、シュンさんが買うって言ってたお家って、庭つきとはいえ、街のはずれにあってボロボロだって聞いてたんですけど、全然そんな事ないですね。」
「ああ、オレが買った時は確かにボロボロだったよ。さすがにそのままじゃ住めないんで、職人に頼んで建て直したんだよ。」
「ああ、なるほど。それで綺麗なんですね。」
ちなみに、職人には頼んだが、それはあくまで外側の補強と補修だけだ。その後に、生活魔法の土系統の力を駆使してさらに家の周りに塀を作り、壁を強固にし、部屋の中や間取りも改造している。庭にはちょっとした畑があり、地下室も勝手に作った。倉庫兼、オレの工房になっている。
「はい、お茶。ご飯までもう少し時間があるから、お茶でも飲んで待ってて。その間に下ごしらえするよ。」
「シュンさんが作るんですか?」
「ん?そうだよ。オレは普段外食とかせず自分で作ってるんで、変なものは作らないつもりだよ。」
「私も手伝います。シュンさんに全部してもらうなんて悪いですし。」
「いいよいいよ。エリスはお客さんなんだし座っててよ。それに、ある程度準備はしてあるし、すぐに終わるからさ。」
エリスが立ち上がろうとするが、それを手で制して準備を進める。ほどなくして、準備が終わったんで、料理を始める。オーク肉をメインにした料理を作って皿に盛り付ける。
「せめて、テーブルに運ぶくらいはお手伝いします。」
「わかったお願いするよ。」
料理を並べ終わったらさっそく食事を始める。オーク肉は久しぶりだな、自分で作っておいてなんだが、美味いな。
「こ、これはオーク肉?」
「ああ、この前の依頼で討伐したんで、せっかくだしエリスに食べてもらおうかなって思って。」
「ありがとうございます!うんん、おいひいです。」
すんごい笑顔だな。前にも思ったけど、エリスは美味しそうに食べるねえ。とりあえず、その顔を見れば本当に美味しいと思ってくれてるようで何よりだわ。まずい!!とか、海で原のようなおっさんみたいに言われたらどうしようかと思った。
「シュンさんて料理が上手なんですね。」
「そうか?普通だと思うが。まあ、依頼を受けた際に、街に帰れない時は自分で料理するから腕が上がっていったのかもな。」
森で暮らしてたから自分で作るしかなかったとは言えんわな。そんな感じで、しばらく会話を楽しみつつ、和やかに時間は過ぎていった。
「それにしても、シュンさんと知り合ってから3年くらい経つのに、こうしてゆっくり話をする機会って中々なかったですよね。」
「そうだな。普段は組合でしか話をしないしな。エリスと2人で出掛けたのって、この前の食事の時が初めてじゃないか?」
「そうですよ。もっと気軽に誘ってくれてよかったのに。」
「いや、無茶を言うなあ。エリスと話すだけでも、他の男冒険者からすごい目で見られるし、オレみたいなおっさんが若い子を誘うっていうのも、なんとなく憚れるんだよ。」
「前にも言いましたけど、シュンさんなら大丈夫です!他の冒険者さんはいつも私の胸を見ながら話す人が多いですけど、シュンさんはチラっとみても、すぐに私の目をみて話してくれるから、他の人とは違います。」
おう、バレてーら。いや、頭ではわかっていても、どうしても目がいってしまうんだよ。やましい気持ちがないわけではないが、これはオスの本能なのだ。悲しい性なんだよ。それに、チラっとよ?ほんのコンマよ?てか、それを言われてどうしたらいいんだ?オレ、涙目よ。
「ソ、ソウデスカ。何かすいません。」
「あ、いえ、その、別に悪いと言ってるわけじゃなくて・・・、シュンさんなら大丈夫というか・・・・。」
「あー・・・、その、エリスはどうしてオレの事をそこまで買ってくれてるんだ?」
「それはですね・・・。もう3年前になりますかね。シュンさんが初めて冒険者に登録した時、私も組合の仕事をし始めたばかりだったんですけど、当時は私も知らないことが多くてよく怒られてたんですよ。」
「へえ、今のエリスを見ると想像できないな。それに、オレからしたら、エリスはちゃんと仕事をしてるよう見えたけどね。」
「実は怒られてたんです。その事で落ち込んだときもありましたけど、そんな時に、組合のことや冒険者のこととか、何も知らないのを馬鹿にされても気にしないシュンさんを見て、すごいなって思ったんです。」
「ああ、実際何も知らなかったし、別に馬鹿にされたくらいで、実害があったわけじゃないから、気にしてなかったな。そんなことより、とにかく色んなことを知りたくて必死だっただけだよ。」
まぁ、ザ・異世界って内容が面白くて色々調べるのが楽しくて、周りを気にしてなかったといのが正しいが。
「そういうところです。シュンさんの誰に何を言われても動じず、自分の芯があって、ひたむきに頑張る姿を見て、組合の仕事が上手くいかない時や、落ち込んだ時に、私も頑張ろうって元気をもらえたんです。」
「そうなの?何か照れるな。それにちょっと持ち上げ過ぎじゃないか?」
「そんなことないですよ。それに今では、私以外の受付嬢も、シュンさんの事、褒めてますよ。」
「え?本当?モテ期きちゃった?」
「シュンさん?」
「ナンデモナイデス。」
だから、笑顔で圧をかけるのやめてください、エリスさん。
「だから、このままだと他の人に取られちゃうと思ったんです。シュンさんは・・・、私の事、どう思ってますか?」
エリスが笑顔から真剣な顔になって、オレに聞いてきた。
これはちゃんと答えないといけないやつだな。
ふと昔を思い出した。
まだ中学の頃、顔は思い出せないが、ある女の子から告白されたことがあった。けど男ってやつは照れなのか見栄なのか、告白されてもちゃんと返事をせず、あまつさえ、告白されたことをブランドのように考えてしまい、宙ぶらりんの状態を続けたことがあった。
女の子からしたらたまったもんじゃないだろう、勇気を出して告白した返事が中々こないなんて、精神的にもいいはずがない。
しばらくして、オレにも好きな人ができた時、告白する立場になって、自分がいかに最低なことをしたのか気づいたわけだ。
だからこそ、エリスが言ってくれたことをちゃんと考えないとな。
しかし、オレはこの世界にきて神の力を押し付けられた。年はとっているが、見た目があまり変わらない。不老なのかもしれないし、老化が遅いだけなのかもしれない。まだまだわからないことだらけだ。
が、深く考えても答えが出ないことも事実だし、気にしてもしょうがないか。
結局、人生なんて予想通りにいくことなんてないしな。
それに、今世は好きに生きようと思うわけだ。
「オレは、エリスの事を少なからず想ってる。でも、自分の身の上とか、今は話せないことがある。それは、自分自身がどう話して良いかわからないからだ。ちゃんと整理できたら話せると思う。それまで、エリスにはある意味で隠し事をした状態になる。それでもいいのか?」
「シュンさんが、普通じゃないのは、なんとなくわかります。それでも、私の事を大切に想ってくれてるのは、今の言葉でわかりました。私は、シュンさんを信じます。」
エリスさん、普通じゃないと思ってたの?ていうか、この世界の人って、他人に大して、ちょいちょい失礼だよね。オブラートって誰か発明してくれませんかね。
ま、まあ好意で言ってくれるんだと信じよう、うん。
「そっか・・・・。エリスがオレを信じてくれるなら、オレもエリスを信じる。エリス、好きだよ。」
「・・・・うれしいです。私も、好きです。シュンさんのこと大好きです。」
そうして、オレは、この世界で彼女ができた。
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