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先日手に入れたグリーズツリーの素材を使って暖房の魔道具を作ろうと思う。

グリーズツリーは木の魔物ながら火に強いので、熱にも強いと思う。なので、オレが考える魔道具に適していると思ったのだ。


()の月(夏)の冷風機に続いて、今回も2種類の魔石を使うことにする。まずは、魔石に魔素を()めて、1つは火属性の『発熱(はつねつ)』の文字が刻まれ、もう1つには風属性の『送風(そうふう)』の文字が刻まれた。


その魔石を4つほど作ってから、次に魔石をセットする為の箱を作る。形のイメージはファンヒーターだな。何種類か厚みの違う箱を作ってから、まずは『発熱』が刻まれた赤い魔石を置いていき、魔石から出る熱に耐えれるか見てみる。


魔素を注ぐと赤い魔石は火傷してしまうほどの熱を帯びるが、グリーズツリーが焦げることはなかった。しかし、薄く作った箱だと、箱その物が熱くなってしまったので没にする。


残りの箱を確認して温度に問題なく、持った時にあまり重くないものを採用することにした。

その後は、採用した箱を基準に同じものを3つ作る。箱の中には『発熱』の魔石を下部に取り付け、その上に網状の(ふた)をする。


何かの拍子(ひょうし)(さわ)らないようにする為だな。


箱の前面はファンヒーターのように、風が出る吹出口(ふきだしぐち)を開け、背面に『送風』の魔石をセットする。そこに錬金術で作った魔素を流す(くだ)を取り付け、上部に穴の開いた蓋をする。


穴の開いた場所には管の先端が見えていて、ここから魔素を流すと、管を通って『送風』と『発熱』の魔石へ魔素が注がれる。まだ調整が必要になるかもしれないので、蓋は接着せずに今日から数日試運転をすることにした。


試運転中に何度か魔素を籠め直して3日ほど経過した。今のところ箱には異常はない。念のためもう少し様子見をして、試運転開始から7日経過したが、特に問題なかった。


うむ、グリーズツリーの火というか熱耐性はすごいな。木なのに燃えないって、結構やばいよな・・・。

後は実際使って暖かいかどうかか・・・。そこは使ってもらわないとわからんし、エリスに聞いてみるかな。


その日の夕食にエリスに魔道具が出来たことを伝える。


「もう出来たんですか?」


「ああ、一応構想はあったからね。後は実地(じっち)試験をしたいんだけど、組合で試していいか聞いといてくれる?」


「わかりました。けど皆寒いって言ってましたから、大丈夫だと思いますけどね」


「まあ、一応ね」


筋は通しておかんとね。




翌々日、エリスから是非組合で試して欲しいと言う返事を受け、オレは組合に来ていた。


「それにしてもシュンは次から次へと色んな物を作りますわね」


オレが組合で魔道具を置いているとカディアが話しかけてきた。


「まあ、趣味みたいなもんだな。これに関してはエリスに頼まれたからだが」


「そういえばそうでしたわね。確かに入り口に近い受付は冷えてしょうがなかったですし、助かりましたわ」


カディアはそう言って柔らかい笑顔を作る。


「礼はまだ早いさ。ちゃんと暖まるかわからないしな。それに、オレにとっても悪い話じゃないんでね」


これが上手くいけばレインさんに持っていってみよう。


オレは組合に3つ設置すると、使い方をカディア達受付嬢へ説明していく。


「なるほど。ではここから魔素を注げばいいのですね」


「ああ。やってみてくれ」


カディアが魔素を注ぐと吹出口から風が出てくる。最初の風は温まっていないので冷たい風がでてくるが、ほどなくして暖かい風になってきた。その魔道具から出た風は受付嬢達の足元を温めるように向かっていく。


「とりあえず、ちゃんと動いたようだな。後はそっちで自由に使ってくれ。ただ、最初は1個、寒かったら2個という感じで増やしてみてくれ」


一応実地試験なので、どれくらい暖まるのか知りたいのだ。1個稼働すればいいのか、あるいは3個稼働しても寒いままなのかなどなど、情報は多いほどいい。


「わかりましたわ」


オレはカディアに挨拶をした後、冒険者組合を出てレインさんの元へ向かった。


「こんにちは」


「あらシュンさんいらっしゃい」


オレがレイン商店に入ると、レインさんの奥さんことジェシカさんが出迎えてくれた。


「レインさんいますか?」


「悪いわねえ、レインなら王都の支店のほうへ行ってるわ」


「そうなんですか。忙しそうですね」


「シュンさんのおかげよ。最近のレインは、本当に生き生きしてるわ」


そう言ってジェシカさんが笑ってくれるのを見ると、オレまで嬉しくなってくるな。


「はは、それならよかった。けど頑張りすぎて倒れないようにしてくださいね」


「そこは私がしっかりみてるから大丈夫よ。それよりも、レインにはどんな用事だったの?」


「ちょっとした魔道具を作ったので、使い心地(ごこち)を試してみませんか?というお誘いですね」


「あら、それは上手くいけば今回もウチに(おろ)してくれるのかしら?」


ジェシカさんが笑顔で聞いてくるが、その目は商売人のそれだ。


この人も商売好きだよね。似た物夫婦だな。


「そうですね。そう考えてます」


「なら私が使ってみるわ。ここでも使えるのかしら?」


ふむ、確かに色んな場所で使ってもらったほうがいいか。


「はい、使えます。ただ、温風を出す魔道具なので、熱に弱い物は近くに置かないようにしてください。万が一品質が変わっても保証できないので、注意してください」


「へええ、そんなものまで作れるのかい、すごいねえ。わかったよ。注意しておく」


オレはジェシカさんの返事を聞くと、腰につけているポーチ型魔法袋(まほうぶくろ)から魔道具を出して、使い方を説明した後、一緒に店のどこに置くかを決めて設置した。


後は、しばらく使ってもらうだけだな。


オレはジェシカさんに別れの挨拶をしてから店をでると、のんびりと家に帰った。


そういえば、魔道具の名前何にしようかね。

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