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感恩戴徳の気持ち!

21


それはオレとエリス、リンカがフーゴの屋敷から宿へ帰った日の事だ。オレは自分の部屋で目立たない服に着替えていた。


「さて、行くとするか」


着替えを終えるとオレは夜の街へ飛び出した。目指す先はベルタン領のカスパルの屋敷だ。まずは、ベルタン領まで走っていくと、街へは空気で作った足場を使い、空から侵入した。


ベルタンの街に着くと、街の家の屋根から屋根を飛び移っていく。そうして目の前に一際大きい屋根をした建物が見えてきた。


オレはその手前の家に着地すると、生活魔法((きわみ))の光系統の力を使って、体を周囲の風景と同化する。武闘大会でも見せた光学迷彩だ。そして、出来るだけ音がでないように屋敷の屋根へ飛び移ると、空属性(くうぞくせい)の【把握(はあく)】を使い屋敷全体を探索した。


屋敷にはカスパルらしき男性を含め複数の人を確認できた。その中で、1人だけベッドにうつ伏せになっている人がいた。小柄な体型から恐らくエルゼではないかと思われる。


とりあえず危険は無いようなので、エルゼのことは頭の(すみ)に置きつつ、屋敷の構造を調べていくと、壁に仕切られた小部屋の存在を見つけた。


隣の部屋にはパスカルらしき人がいる。自分の部屋で隠すように小部屋を作っているのが怪しいな。ここを調べてみるか。


オレは屋敷へ侵入する為にエルゼの部屋から忍び込むことにした。エルゼの部屋の窓に近づくと、数度コンコンとノックする。しばらくノックを続けていたら、内側から窓が開きエルゼが顔を出した。


「どなたかいるんでしょうか・・・?」


「こんばんはお嬢さん。今日はいい月が見えますよ」


「!?・・・どなたですか?」


オレはエルゼに声をかけるとサッと部屋へ侵入する。


「っきゃ!」


エルゼにオレの姿は見えないので、突然自分の近くを何かが通ったように感じ、驚きの声をだす。


「おっと、すまない。姿を見せるわけにはいかないので、声だけで失礼いたします。私は敵ではありません。怪しい者というのは否定しませんが、フーゴ様からの依頼ということだけお伝えしておきます」


「お兄様の!?」


「っし、声を抑えてください」


「す、すみません・・・」


「エルゼ様、力を貸していただけますか?難しいことはありません。カスパルが寝るまで、私をこの部屋に置いていただきたいのです。奴が寝たら行動を開始します。そして、戻ってきたら、また窓から私が外へ出たら、窓の鍵をかけて欲しい。それだけです」


「わかりました」


それからオレは夜が深くなるまでエルゼの部屋で待機すると、カスパルが寝静まったのを確認して奴の部屋へ侵入した。

とはいえ、不測の事態を避ける為に、魔道具を使ってカスパルをさらに深い眠りに(いざな)っておく。


オレは音もなく小部屋のある方へ近づいて仕掛けがないかを確認していく。本棚の本を調べていくとボタンのようなものを発見したので押してみると、本棚がスライドして小部屋への入り口が出てきた。


オレは小部屋に入って中の物を物色していくと、そこには盗まれたはずの魔法袋や帳簿が何冊も置かれていた。その帳簿を確認すると、明らかにベルタン領に残る金額が多いように感じられた。


これは裏帳簿ってやつじゃないのかな。まあ、本来の帳簿ならこんないかにもな部屋に置いたりしないか・・・。


オレは魔法袋や帳簿を全て亜空間にしまうと、魔石を取り出して魔素を込めていく。魔石には、オレが奪った物が、そこにあるという幻覚を見せる効果にしよう。魔石へ闇属性を込めていくと『幻惑』の文字が刻まれる。


ま、見つかってもオレが取ったって証拠はないし、時間稼ぎになればそれでいい。


オレは小部屋を出ると全てを元の位置に戻して静かにカスパルの部屋を出ると、再びエルゼの部屋に戻る。


「上手くいきましたか?」


オレが部屋に入るとエルゼから声をかけてきた。エルゼには見えていないはずなので、扉が開いたのを見てオレが入ってきたのだと思ったのだろう。


「今日のところは仕込みという感じですかね。この件についてはエルゼ様は無関係を装って欲しいので、詳しくは詮索しないでくださいね」


「わかりました」


オレは窓から音もなく出るとベルタンの街の外へ出てから光学迷彩を解除する。

その後は宿に戻って朝まで寝た。



22


「今からクリオールに行くんですか?」


朝目覚めてからエリスとリンカの3人で朝食を食べている。オレは昨日の夜のことをざっくりと話してから、クリオールに一度戻ろうと考えた。


「ああ、クーノ様に知恵を借りようと思ってね」


「けど、旦那よ。今からクリオールに行くとしても、日数がかかり過ぎるんじゃないのかい?」


「それは大丈夫だ、問題ない」


オレ達は朝食を食べ終えると、宿の裏手に移動した。


「それじゃ悪いけど、今日のところは2人で街を散策しておいて。これお小遣いね」


オレは銀貨を数枚エリスに渡すと、2人から距離をとった。


「はい。気をつけて行ってらっしゃい」


「ああ、わかったよ」


エリスに返事をすると、オレは亜空間から赤に輝くコインを取り出した。


オレはコインを右手に持つと、左手を腰に()える。すると腰にベルトが現れる。そのベルトのバックル部分にあるプレートを右から左へスライドする。

スライドしたそこには、コインをはめる穴があり、そこへコインを挿入(そうにゅう)すると、今度はプレートを左から右へスライドする。その瞬間、プレート部分から無機質(むきしつ)な声が流れる。


『フェニックスフォーム』


声が流れた瞬間に、赤く輝く半透明の火の鳥が現れる。そして、オレの足元を中心に直径2mの炎の柱が生まれ、あらゆる攻撃を防ぐ絶対領域が出来る。


続いて、オレの体を魔法繊維(せんい)で出来た黒いスーツが(おお)い、半透明の火の鳥がオレの全身を包みこむ。そして、腕には炎イメージしたグローブが出現し、足には2本の爪がついたブーツが現れる。腰には鳥の尾羽のように火の羽が連なった腰ローブが装着されると胸にはアーマーが、さらに背中には赤い羽のように火を噴射(ふんしゃ)する縦長の左右(つい)となるパーツが生まれ、これにより上空を跳ぶことができる。最後に、顔に鳥の顔がマスクとなって(かぶ)されば変身完了だ。


全てのアーマーが装着された瞬間に炎の柱は消え。赤に輝くアーマーを着たオレが現れる。


「旦那!何だそれ!格好いいな!」


リンカが目をキラキラさせながら喜んでいる。


「前に話したけどこれがオレの力の1つだな。それじゃあ、行ってきます」


「ああ、行ってらっしゃい!」


オレが背中の羽から火を噴射して空へ上がると、2人が下から手を振っていたので、オレも軽く手を振るとクリオールまで一気に飛んで行った。

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