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いつもありがとうごじゃります。
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さて、エリスの故郷に行った時は出番を取られてしまったしな。今回は速さ重視でいきたいからこいつだな。
オレは亜空間から緑に輝くコインを取り出した。
オレはコインを右手に持つと、左手を腰に添えた。すると腰にベルトが現れる。そのベルトのバックル部分にあるプレートを右から左へスライドする。スライドしたそこには、コインをはめる穴があり、そこへコインを挿入すると、今度はプレートを左から右へスライドする。その瞬間、プレート部分から無機質な声が流れる。
『フェンリルフォーム』
声が流れた瞬間に、緑に輝く半透明の狼が現れる。そして、オレの足元を中心に直径2メートルの円を描いて緑の竜巻が巻き起こる。これは、あらゆる攻撃を防ぐ絶対領域だ。
続いて、オレの体を魔法繊維でできた黒いスーツが覆い、半透明の狼がオレの全身を包みこむ。すると両腕を包むように緑の手甲が生まれ、その甲の部分には2本ずつするどい爪が付いている。次に、足には脛まであるブーツが出現すると、左肩に狼の顔を模した肩当てが生まれ、続いて胸の部分にはガード、右肩には尖った尻尾を思わせる肩当てが装着される。
最後に、狼を模した上顎のようなアーマーがオレの頭部に被さり、顔の前面を覆うマスクが装着されて変身が完了する。
変身の完了と同時に竜巻は消え、全身が緑に輝くアーマーを着たオレが現れた。
「人助けこそヒーローの本懐ってか」
オレはそう呟くと、地図で10階層へ降りる階段の位置を確認する。確認が終わると地図を亜空間へ仕舞い、目にも止まらぬ速さで一気に階段まで駆け抜けた。
オレは右へ左へ曲がりながら9階層を進んでいく。その速さに罠の発動が追いつかず、罠は全てオレが通り過ぎた後に作動していく。そして、時に目の前に冒険者がいれば、壁を走り天井を蹴って彼らを跳び越え、魔物に襲われているピンチの冒険者が入れが手の甲についた爪を長く変形させて、それで切り裂いて倒していく。助けれらた冒険者は何があったのかわからずに、ポカンとして緑の風になったオレを見送った。
うむ、ルドルフを助けなければいけないというのに、つい人助けをしてしまうとは・・・。まさに、これは僕が最高のヒー・・・げふんげふん。ふざけてないで急ぐか。
そうしてオレは10階層へたどり着いた。
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オレがプ◯スウ◯トラしている時、突如10階層の広間へ転移させられたルドルフは、辺りを見回し、自分1人しかいないことを確認すると、自分の身に起きたことを理解した。
(イルムお嬢様が無事ならそれでいい)
転移の直前にイルムを突き飛ばし、今ここに自分しかいないのなら、ひとまずイルムは8階層にいるのだろう。それならば、ヨーナス達が後はイルムをフォローしてくれるだろうと考える。
そんなことを考えていると、周りにサバントサル達が現れルドルフを囲んでいく。
(イルムお嬢様、後は頼みます。必ずお父上をお救いくだされ)
ルドルフは剣を構えると、サバントサル達へ向かって行った。
ルドルフが近くにいるので、サバントサル達は同士討ちを避ける為に投擲ができず、長い手を振り回しながらルドルフに攻撃をしていく。ルドルフは卓越した剣技でサバントサル達を攻撃をつつ、時には剣でサバントサルの爪を受け止める。
ルドルフの剣は1匹、また1匹とサバントサルを倒していく。技能である剣術が発揮され、ルドルフの攻撃をサバントサル達は避けることができない。
しかし、ルドルフに対してサバントサルの数は多く、少しずつ彼も傷を増やしていく。そうして、ついには持っていた剣が折れてしまう。その頃にはルドルフの体力も削れ、すでに息が上がっていた。
ルドルフは折れた剣を捨てると、両拳を上げ構える。武器を失った人間に脅威を感じなくなったのか、サバントサル達が嫌らしい笑みを浮かべる。
「ふっ、笑うかサル共よ。我はルドルフ、元はモンジュラ騎士団長だった男よ!例えここで果てようとも、その瞬間まで貴様らを1匹でも多く道連れにしてやろう!!」
そう笑いながら叫ぶとルドルフは身を丸めて瞬時にサバントサルの1匹へ接近すると右ストレートを顔面に食らわせる。油断していたサバントサルに見事にクリーンヒットし、サバントサルが後ろへ倒れる。
その様子を見た他のサバントサルが怒りを現しルドルフへ総攻撃を開始した。
(さすがに、これは無理ですかな・・・。だが、しかし!最後まで足掻いてみせようぞ!)
ルドルフは自分に喝をいれると目に力を宿してサバントサル達を迎え撃った。
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オレは10階層につくとすぐ様地図を取り出して、階層全体へ風を行き渡らせて10階層を探った。すると、迷宮の1番左の広間で気流が乱れ、多くの生き物がいることがわかった。
まさかの一番左・・・。11階層へ降りるの階段がある部屋に繋がっているわけでもないし、迷宮の端っこであるため、誰かが偶然通りかかるなんてことはないだろう。そんなところに転移する罠っていやらしいな・・・。
オレはすぐ様地図を仕舞うとその場所へ駆け出した。フェンリルフォームの速さなら一瞬で到着できるので、すぐにルドルフがいるであろう広間に到着する。すると、ルドルフが拳でサバントサルを殴り飛ばしてるのが見えた。
エイドリ○ーーーーン!!すげえな、あの人。
しかし、その一撃を合図に他のサバントサルが一斉にルドルフへ攻撃を仕掛けたので、オレは瞬時に走り出して、ルドルフを掴むとサバントサルから離れた。
「ぬお・・・、一体何が起こった・・・!?」
オレはルドルフを離すと、サバントサル達へ向き直り両手の甲についた2本の爪を長く伸ばす。
「お主は一体・・・?」
「助けに来ましたよ、ルドルフ殿」
「その声、まさかシュン殿か!?」
「ええ、少しだけ待っていてください。すぐに終わりますから」
オレの姿がルドルフの前から消えると、次に現れた時はサバントサル達の向こう側だ。それと同時に、サバントサル達が全て細切れになり黒い煙となって消えていった。オレは両手の爪を元の長さに戻すと、ルドルフの元へ歩いていく。
「ご無事でなによりです。ルドルフ殿」
「あ、ああ・・・。助けていただいてありがとうございます。その姿は?」
「んー、申し訳ないですけど、詮索不要ということで」
オレがそう答えると、ルドルフはちゃんとした説明を聞きたそうな顔をしたが、オレの雰囲気を察したのか、その後は何も聞いてこなかった。
「さて、じゃあイルム様達のところへ戻りましょうか」
「そうですな。もうダメかと思いましたが、無事に生きていられるならそれでよいでしょう」
そう言ってルドルフは笑顔を作る。
「ですね」
オレはそう言いながら、ルドルフを肩に担ぐ。
「・・・シュン殿。一応聞きますが、どうされるおつもりかな?」
「いえ、お疲れでしょうし、こっちのほうが早く戻れますから。じゃあ行きますね。しっかり掴んでおきますから安心してください」
「最後のほうは何か言葉がおかしいいいいいいいいいい」
ルドルフが最後に何か言ったような気がするがよく聞こえなかった。なぜなら、オレ達は風にになったからさ!
そうして少しの間、10階層では不気味なじじいの声が聞こえてくるという噂が流れたとか流れなかったとか。
今回の変身シーンの変更に伴い、
1話の17の変身部分を変更しておりますが、
話には影響いたしません。




