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凛として外道のごとく 『ワレ、異世界ニテ特殊部隊ヲ設立セントス』  作者: 振木岳人
◆ ランペルド・マルヴァレフト公爵 編
24/157

24 交渉成立


 ランペルド・マルヴァレフト公爵に協力を求めたオレルは、諜報部員候補として現役の警察官を紹介される。オレルの推察通り、紹介する人物は獣人であるとの事。殺人課の刑事であったのだが警護隊に配置換えされてしまい、火が着いた闘争心のやり場に困った本人は、悶々とした日々を送っているらしい。

 近日中に本人と接触出来る機会を作ると言う事で、オレルの第一の懸案事項である諜報部員の補充については目処(めど)が付いた。


 もちろん、諜報部員一人体制が充分である訳が無い。

 政界や財界、公国陸軍や街の世情など、様々な分野にアンテナを伸ばして情報収集を行う必要性がある以上、たった一人のエージェントに全てを任せる訳にはいかない。

 更には、一人のエージェントが多方面に渡って出入りして顔を覚えられると、擦り合わせが行われて不審人物だと特定される可能性もあるーー三課が敵にするのは、未だ全体像の掴めない闇の組織。どこで繋がっているか分からないのだ

 オレルとランペルドは継続して諜報部員の数を増やして行く事で確認。全ての活動資金はマルヴァレフト家が捻出する事で確約が取れた。


 諜報部員以外の懸案事項としては、もう二点ほどこの会談でランペルドの約束を取り付けている。


 一つは、首都バルトサーリ内において、二件目のセーフハウス (隠れ家)を確保する事。

 非正規戦メンバーや諜報部員など、自分たちの立場を秘匿しなければならない者たちにとって、その正体を明かそうとして必死に喰らい付いて来る敵は厄介な存在であり、いつか必ず追跡されるケースに直面するとオレルは言う。つまり敵も諜報部員を投入して三課の情報を掴み、セーフハウスの場所が割り出される危険があると言うのだ。


「その際はもちろん、一件目のセーフハウスを放棄して撤退戦を行いますが、再結集の場所が無いと反転攻勢出来ません」


 その説明を聞いたランペルドは、そう言う状態に陥っても戦って勝つ積もりなのかと大笑いしながらオレルを讃え、そして二件目のセーフハウス確保を快諾した。


 そして、オレルから要求されたもう一つの依頼が、自動小銃を秘密に製造するにあたり、軍の工廠ではなく民間の工場を紹介して欲しいと言う内容だ。

 自動小銃と言っても、近代戦における軍用突撃銃「アサルトライフル」の事を指しているのではない。

 今この世界の戦場において、主力兵器となりつつあるライフル銃を改造した、カービン銃の製造を目論んでおり、三課の兵士にのみに極秘支給したいと言うのだ。


 アムセルンド公国陸軍で配備が始まっているライフルは、銃口から銃床までが長くて屋内戦は不向きである。そしてコッキングレバーを毎回ひねって装弾を行う単発式である事から、やはり一気に敵空間を制圧するには火力が足りなくなる。遠くの敵を狙って射抜く点制圧ではなく、非正規戦はあくまでも近距離の面制圧なのだ。


 オレルの本心を言えば、消音装置を銃口に取り付けたアサルトライフルを導入したいと言うのが本音。しかし、この世界のライフルは第一次世界大戦当時の水準である事から、断念せざるを得ない。

 アサルトライフルの実戦投入は第二次世界大戦のナチスドイツであり、オレルがこの世界で導入してしまえば、時代にそぐわない奇跡の発明として、異世界転生人ギルドからペナルティが課される可能性もあるからだ。

 だからと言って、自動拳銃と拳銃弾を使った短機関銃だけの装備では心許ないのは事実。ーー拳銃弾よりも威力のあるライフル弾を非正規戦に実戦投入したいと考えたオレルは、知恵を絞った末に閃いたのである。

 現用ライフル銃を極限まで短くして、自動装填で単発射撃が可能となるカービン銃、つまり「騎兵用小銃」を密かに開発しようと。


 この構想にはランペルドも驚いた。オレルの素性については、ノルドマン准将から事前に聞いていたはずなのだろうが、さすが転生人だとは騒がずに、オレルの構想そのものを純粋に驚いたのだ。


「敵が回転式拳銃を一発撃つ間に、威力のあるライフル弾を三発も撃ち返せると!こりゃあ凄い」

「突入時の制圧力向上は、兵士の生存確率を上げる意味もあるのです」


 かくして、ランペルド・マルヴァレフト公爵は、オレル・ダールベックを全面的に支持し、彼が持ち込んだ依頼を全て快諾したところで会談は終わった。

 五大貴族の一翼を担う公爵と、陸軍情報部中佐との異色の会談は、雑談を一切排除して淡々と進められながらも、非常に熱量の高い意義ある会談となったのだ。


 去り際、固い握手を交わしたオレルが応接間から出ようとした時、何かに気付いたランペルドが呼び止める。


「中佐、なかなかに用心深そうな格好だが、私は世の中から何と言われようが気にしないよ。次は軍服を着て堂々と正面口から入って来なさい」


 ──五大貴族の屋敷に、得体の知れない軍人が出入りしている──

 そう言う噂が広がったとしても、しょせんこの公国は貴族を筆頭とした派閥社会なのだから、責められたところでどうとでも言える

 それがランペルドの真意であり、彼に投げかけた言葉であったのだが、オレルはイエスともノーとも答えずに、口元に笑みを浮かべて頭を一つ下げ、そのまま応接間から出て行った。


 オレル・ダールベックの名前は、底知れぬ闇の中で静かに広がり出しているはず。

 ならば、公爵家が三課のパトロンだと闇の者が気付けば、ランペルドがいかに豪胆な性格であろうと、一発の凶弾に沈む。


 今それを彼に言うべき時ではない。いたずらに心胆寒からしめるよりも先に、私が不安要素を片っ端から潰してやろう

 ……オレルの笑みには、そう言う理由があったのだ



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