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凛として外道のごとく 『ワレ、異世界ニテ特殊部隊ヲ設立セントス』  作者: 振木岳人
◆ ランペルド・マルヴァレフト公爵 編
22/157

22 概要「公国の五大貴族」


 アムセルンド公国は、その名の通り王がいない。

 王様が何かしらの理由で存在せず、公爵や侯爵・伯爵などの爵位を持つ貴族が国家運営をする国を『公国』と呼び、このアムセルンド公国は、五大貴族と呼ばれる五つの名家を頂点とした貴族合議制により政治が行われている。


  その五大貴族の内訳とは以下の通り

 五大貴族の頂点にあり公国金印を所持するのが、アレクシス・ヘイデンスタム大公率いるヘイデンスタム家。爵位の最上にある公爵(デューク)の称号、その公爵の中でも最上級を意味する『大公(グランド・デューク)』の位をもつヘイデンスタム家は、王国時代より最古の歴史を持ち、政財界全ての分野に多大な影響力を持つ公国中最大最強の名家である。


 それに続くのが、『若き闘牛』との異名高き、フェリクス・ヤーズフェルト公爵率いるヤーズフェルト家。古くから武門の家として名を馳せたヤーズフェルト家は、何名もの騎士団長を排出して今に至る、自他共に認めるガチガチの武闘派である。公国となった今では、公国陸軍に一番の影響力を持つ軍派閥の筆頭である。


 そして、財界に影響力を持つナンバー3とナンバー4が、ディーデリック・ライル侯爵を筆頭とするライル家と、エサイアス・ローセンプラド侯爵を筆頭とするローセンプラド家。

 双方とも波風を立てないような中庸路線を取る事から、風見鶏やコウモリ貴族と揶揄されるも、五大貴族の一翼を担うだけの実績を持って今に至る事から、不気味であるとして警戒する貴族諸侯も多いのは事実。

 尚、ライル家の当主であるディーデリックは、長年の病で床に伏せたままであり、近年においては侯爵夫人が代理として貴族会議に出席している。


 最後の五人目がランペルド・マルヴァレフト公爵を当主とするマルヴァレフト家である。

 ヘイデンスタム大公家に匹敵する巨大なマルヴァレフト家は、二百年ほど前までは西の小国マルヴァレフト王国として君臨していた。しかしアムセルンド王国の侵略戦争に敗北して併合された過去がある。

 本来であるならば、敗戦国の王族は一族郎党処刑されて完全に血を絶やされるのだが、その統治能力や人望を買われたのか、マルヴァレフト家は貴族として受け入れられ今に至るのだ。

 王国、そして公国の貴族として絶大な地位を築くも、やはり外部から取り入れられた家系として古参貴族の反感は買い続ける。

 『敗残の王族』『アムセルンドに弓引いた者』『亡国の徒』などと、貴族社会の中でも長年陰口で揶揄されて来たのだが、もちろん面と向かって言う者はいない。ーーマルヴァレフトが大公家に対抗出来るほどの権力を持ったからだ


 ……これが五大貴族

 伯爵や男爵や子爵などの中流以下の貴族が、これら五つの名門貴族の旗の下に集い派閥を作る事で、五大貴族自体もその発言に多大な影響力が生まれて来る社会となっていた。


  ◇  ◇  ◇


 アムセルンド公国の首都バルトサーリの南西の郊外。首都を囲む山々の裾野にある、木々に覆われた自然豊かな場所に立派な屋敷がある。

 見るからに貴族の所有物であると言えるような、手入れの届いた立派な庭そして立派な建物。華美な装飾を排除して質実剛健さを現しているこの屋敷こそ、五大貴族の一つであるマルヴァレフト家の屋敷。当主であるランペルド・マルヴァレフトの住処(すみか)である。


 晩夏のカラリと乾いた気候の午後

 強い陽射しと涼しげな風がマルヴァレフトの屋敷と庭園を包む心地良い時間帯に、屋敷の正門からではなく、裏口の通用門に一人の訪問者が現れた。

 その姿は名門貴族の家を訪ねて来たと言うには、あまりにもみすぼらしい姿。紺色のスラックスに黒い羊毛のサマーセーターを着て、頭には鹿撃ち用のベレー帽を深く被った青年だ。

 まるで訪問者と言うよりは、屋敷に出入りするお抱え業者のよう。「こんちゃ〜す、ご注文のパンとワイン届けに来ました」と言い出してもおかしくはない様相だ。


 だが、その若者が裏口に訪ねて来ると、執事頭とメイドが慌てて屋敷から出て来て、逆に何度も何度も頭を下げる。

 そしてメイドが屋敷の入り口に案内する中、先に屋敷に戻った執事頭は、当主のランペルドにこう報告したのであった ──ランペルド様、ただ今オレル・ダールベック中佐が見えられました と



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