新型機
新型機登場
順番から言えばね
8/4 一部修正 行間を空けました
8/11 速度を下方修正しました。下げないと次の奴が大変なことになってしまうためです。
火龍は新艦長の下、二号艦攻を中心とした訓練に余念が無かった。
カタパルト発艦が出来るのが現状では二号艦攻しか無い。カタパルトの運用技術向上のためにも二号艦攻を中心にするのは仕方なかった。他の空母でも同様だった。
面白くないのは艦戦乗りと艦爆乗りだが、ついに笑う日が来た。艦爆乗りに。艦戦乗りはすねた。すねても無い物は無いのである。
十一試艦爆である。量産試作機を実際に運用して、問題点の洗い出しをするためにやって来た。
思えば十試艦攻の時は散々であった。初めてのカタパルトで有り、機体側も艦側も問題が山積みだった。
もちろん十一試艦爆にはそのノウハウが伝えられ、機体側の問題は少なくなっていた。
十一試艦爆
正和十一年に正式発注された次世代艦爆である。航空本部の要求は、きつかった。
九十六式艦上爆撃機に変わる次世代艦上爆撃機として発注
基本要求性能
速力 二百五十ノット
航続距離 攻撃過荷重で発艦、戦闘行動半径二百五十海里
攻撃過荷重での爆弾装備 五十番一発
備考として
十試艦攻と同等の防弾装備であること。別紙参照
戦闘行動半径は、爆装で巡航二百五十海里進出、全速二十分戦闘、帰還時巡航二百五十海里
攻撃方法は急降下爆撃であるが、降下角八十度でも攻撃できるよう考慮すること。
対空砲火の発達により降下速度が遅いと被害が増える恐れがあり、降下速度を上げること。海軍では三百ノット以上での爆撃を考えている。
カタパルト発艦に耐える構造であること。
上記を満たしていれば、後は発注先の自由にして良い。初飛行は正和十三年中を希望。
発注先である愛知航空機では、自由で良いと行っても基本条件や備考が厳しすぎると悩んでいた。
速力であるが一気に百ノット近く上げる。エンジンが実質金星のみであり、現在最強の光より三百馬力しか増えない。中島が開発中のエンジンはまだ公開されていなかった。
五十番積んで戦闘半径二百五十海里、どれだけ燃料積めばいいの。
防弾するとかなり重くなるよね。
何この降下角と降下速度。これで爆撃できるようにしろと。
カタパルトって何?水偵じゃありませんよ。
検討の結果、全金属製低翼単葉とした。もう布張り複葉機の時代では無かった。
主脚は引込脚にしたかったが、経験も無く技術的にも不安が多かったので固定脚とした。
愛知としては初めての全金属製低翼単葉である。
速力二百五十ノットは可能である。
防弾に関しては、海軍の協力を仰ぐ。
急降下角度と急降下速度が困った。こんな要求をしてくるのだ、テストはしているだろうから海軍に聞こう。
カタパルトは海軍に聞こう。
始めてづくしだった。海軍に聞いても判らんの一言の時もあり、開発は難航した。
エンジンが金星一千馬力である。機体形状の洗練と相当の軽量化をしないと速力が出ない恐れがあった。
ハインケルを参考にした主翼形状は風洞実験でも優れた結果を見せた。
胴体であるが、金星に合わせて成形された。尾翼の位置や形状が迎え角を取った時に主翼後流や胴体の影響を強く受ける事が判明し、再設計と言うこともあった。
問題は降下速度であった。速力を出すために主翼には速度制御用のダイブブレーキを付けなかった。どこにダイブブレーキを付けるかで問題になった。
ダイブブレーキが無ければすぐに速度が上がってしまい安定した降下速度で投弾できない。
投下タイミングが取れないばかりか命中率も下がるだろう。速度超過で空中分解や引き起こし不能も考えられる。難しい問題だった。
機体の軽量化に関しては、住友からESDアルミ合金が提供された。エクストラ・スーパー・ジュラルミン。設計し直した結果、機体重量が2割近く軽くなったが、新材料で有りカタログを鵜呑みには出来なかった。
結果主桁等の特に強度が必要な部分は、元の断面積のままとし形状も工夫して強度の確保を図った。この時主翼の平面形は同じとしたが、断面形状を改めて空力特性の向上を図った。
ダイブブレーキであるが、意外な所から意外な発想があった。誰の趣味か知らないが会社に番傘が用意されていて雨振りに使われてた。
嵐の中出かけた事務のお姉様が折りからの強風で傘が破れてしまいびしょ濡れになって帰ってきた。彼女曰く、破れた傘でも強い風で飛んでいきそうになりました。もういや。布の傘にしてもらう。
ちょっと待て、破れた傘でも強い風で飛んでいきそうになりました。だと?空気抵抗だよな。それから、様々な試験を行った。
彼は同僚から変な奴と思われた。あの姉ちゃんに気でも有るんだろ。
そうか、ああやって気を引くんだな。よし、俺も。
その彼から提案があった。ダイブブレーキが見つかった。これを見てくれと。
そのダイブブレーキは、胴体後方、尾翼の前に花びらのように開く物だった。
彼曰く、胴体に埋め込めば空気抵抗になりません。抵抗板の大きさや角度の調整で、速度調整が容易に出来ます。
尾翼への影響も抵抗板の大きさ・形状・設置位置などの研究で大きく減らすことが可能と思われます。
重心位置より後方ですので、直進安定性も良いはずです。
採用 全員意見が一致した。
会社の方は胴体に付けるエアブレーキは世界初じゃ無いかと思い、特許がどこかで出ていないかの確認作業に入った。特許を取るつもりだった。
新設計のエアブレーキを取り付けた風洞実験では非常に良い結果が出た。垂直尾翼・水平尾翼への影響が少なく、方向舵・昇降舵への影響も少なかった。
設計も完了し荷重試験機も良好な結果でいよいよ試作機となった。
問題は速度である。せっかく軽くなった重量もダイブブレーキへと消え、断面形状を変更したことによりいかにも空力特性の良さそうな主翼、すらりとした胴体、それら空力的洗練を一発で見た目ダメにする固定脚。
地上走行、ジャンプ飛行と続き、いよいよ速度試験である。
最高速力 二百二十ノット
三十ノット足りなかった。海軍側も良い顔はしていない。
エンジンやプロペラ周りには最新技術を提供してもらい使っている。残るは機体側だった。やはり足だろう、それしか考えられん。
テストを見ていた社長の一言「引込脚にする」
それしか無いですよね。
しかし難航が予想された。主翼断面形状の変更でおそらく主脚を収容できない。
もう一度設計である。
全く経験の無い機構を開発しなければならない。予備研究くらいはしていたが、製造となるとどうなるか判らない。
そんなとき海軍から、中島に話してみる。少し時間をくれ。言われた時には何を言っているのか判らなかった。
その後、海軍の主導で引込脚は中島が設計することになり、愛知は中島から引込脚を買うと言うことになった。
いろいろな裏話があるようだが、そこは想像して欲しい。中島が十試艦攻の成功を信じて設備投資をしてしまったとか、主脚製造工場が暇してるとか、考えてはいけない。
引込脚を採用し見た目スマートになった機体が再び速度試験をした
最高速力二百三十ノット
十ノット向上したがまだ二十ノット足りない。
海軍側は、これでいいでしょう。後は細かい所を詰めましょうと言った。「え、いつもは少しでも要求性能に届かないとブツブツ言ったじゃ無いですか。どうしたんですか?」とは心の中で言ってみただけである。
元々要求性能に無理が有ったことは承知している。二百二十ノットで十分と思っていた。でも努力していい結果を出してくれた。上等です。
何かおかしい、海軍がこんな殊勝な物じゃ無いだろ。
いろいろ当たった結果、中島の十試艦攻がこけたらしく、艦上機として不適当とされてしまったらしい。
そして、合格になった三菱は固定脚だった。アメリカですでに引込脚の艦上機が稼働している現状で、海軍は引込脚の艦上機がぜひ欲しかったみたいだ。
細々とした問題を潰していき、ついに正和十四年正式採用であった。
九十九式艦上爆撃機十一型
全幅 13m
全長 10.5m
全高 3.6m
自重 2.7t
全備重量 4.1t
発動機
金星44型 1070hp
速力 220ノット
航続距離 800海里
武装
機種7.7mm×2 後方7.7mm×1
爆装
五十番×1 六番×2
乗員 2名
主翼折りたたみ機構
折りたたみ後幅7m
和製ドーントレス?爆誕? 爆撃機の誕生だから爆誕
高速化を狙って主翼面積を減らし、高翼面荷重になっています。史実比
防弾で重くなった分、速力は思ったより出ませんでした。更にテスト中にいろいろあり二百三十ノットに落ち着きました。
スカイレーダーより先に胴体にエアブレーキ装備をしました。
次話は、アレすか?
あれでしょうね。九十七・九十九となれば。