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空母 双龍 東へ  作者: 銀河乞食分隊
燃えるミッドウェー
6/62

新たな力

双龍に何か装備されるようですが


8/4 一部修正 行間を空けました

 訓練の日々は続いた。


 相変わらず九十六戦は、バルーン効果によって着艦に苦労している。改修で良くなっているとのことだ。もう少しで解決すると言っていた。


 九十六艦爆は、可も無く不可も無く平凡につきた。平和な時代にふさわしい。


 九十六艦攻は、魚雷を抱くと発艦もままならない。


 あの事件から1年あまりが過ぎた。

 あの搭乗員は結局、教官配置となった。飛行甲板で死にそうになって、空母が少し怖くなったようだ。着艦は出来るが、発艦が出来なかった。発艦姿勢でスロットルを押せないそうだ。

 陸上基地から発進して着艦はきれいに決めるのに発艦はだめだった。無理は言えなかった。


 戦隊司令部の人間達は、司令は結局予備役編入を選んだ。今更、左遷先で苦労するのはいやだったようだ。作戦参謀以外の参謀達は、僻地の守備隊の司令になったり鎮守府付きになっていた。作戦参謀は、引取先が見つからず退役した。嫌われたものだ。それ以外の将兵は、各地に散っていった。


 平和な日々だった。結局軍が暇な時が1番いいのだと思う。国家にとって少々高いオモチャそれでいい。俺もそろそろ定期異動で、どこかに行くのだろう。この船とは艤装員長を拝命して以来長い付き合いだ。自分でも良い船に仕上げたと思っている。


「艦長、報告があります」


「飛行長か、どうした」


「再来月新型艦攻が配備されます。九十七艦攻です」


「ようやくか。長かった気がする。で、どっちだ」


「足付きです。二号艦攻です。中島は陸上基地に配備するようです」


「そうか。一号の方が引込脚で先進的だったのにな、残念だ」


「私もそう思いますが、あの機体ではいつ事故が起きるか判りません。陸上ならともかく艦上での運用は出来ないでしょう。カタパルトを使用しないと発艦もおぼつかない機体です。赤城も加賀もカタパルトが着きました」


「そうだな。特に本艦はカタパルトと大型エレベーターのおかげで発艦時間が早いからな。カタパルトが使えない機体では仕方が無い」


「それにあの機体は引込脚が目立つだけで、後の性能は変わりません。本艦で栄エンジン搭載機でテストしていた限りではですが。それに機体強度に問題が出て結局カタパルト使用禁止になったじゃ無いですか。正式採用の量産機では馬力が少ない分、攻撃過荷重での飛行性能に問題があります。同じような機体で三百馬力違うとかなり違ってきます」


「中島はエンジンが悪いのか?」


「新型が間に合わなかったそうです。それで現行の光を使ったと」


「新型は使えるようになりそうか」


「さあ、伝聞に寄りますと小型化を目指したために大分苦労しているようです。問題は小型化した分馬力も無いそうです。それが問題になっています」


「そうだな、同じ機体規模で馬力の差で飛行性能に差が出るのではな。君たちだって馬力がある方が良いのだろう」


「もちろんです。馬力が有ればなんとかなります。馬力が無ければ何も出来ないと言っても良いでしょう」


「そうか。新型の搭乗員はどうなる」


「現行搭乗員は艦攻の搭乗員のみ、新型への転換訓練のため来週より移動します。その代わり、ひよっこが親鳥に引き連れられてやってきます」


「ひよっこか、楽しみだな飛行長」


「そうですね、鍛え甲斐があります」


「ほどほどにな」


「了解しました」



 十試艦攻だが、競争試作となったのは中島と三菱で両機とも全金属製低翼単葉であるが、中島が引込脚採用の先進的な外観を持った意欲作、対して三菱は固定脚で古くさく見えるものであった。


 軍としては先進的な外観を持った中島を採用したかっただろうが、中島の社内呼称(栄)に問題が続出。調子の良い時でも三菱の固定脚に最高速度で劣ると言う結果になった。栄は小型化した分馬力が出ず、予定出力でも三菱金星に劣るという直径が小さいしか取り柄のないエンジンと見られた。


 一部のG少佐は防弾をやめれば性能は向上すると言った。当たり前だ、軽くなるからな。お前は配置転換だ。そんな考え方ではもう飛行機には関わらせない。


 WWⅠで、ヨーロッパ各国ほどでは無いが日本も多くの血を流した。


 その結果が飛行機には防弾装備が必要と言うことになった。7.92mm弾で射殺される搭乗員、一連射で火を噴く機体、多くの仲間を失った。


 それを空で体験し地上で見ていた者も多かった。搭乗員の養成は短期間で出来るものでは無い。金と時間を掛けて養成した搭乗員をできるだけ失いたくなかった。

 

 海軍も陸軍も日清戦争後の騒ぎで人員確保に困り人員を大切にするようになっていた。


 今まで馬力不足という理由で防弾装備を見送ってきた。一千馬力級エンジンが実用になった今、両機に防弾装備を要求した。ただ重くなるという現実には逆らえず、7.92mm弾防御は前面ガラスと燃料タンクと操縦席後部に防弾板程度だった。

 それでもかなりの重量増になり性能の低下は免れなかった。しかし、海軍は譲らなかった。多少の性能低下には目をつぶると。

 

 三菱の機体が正式採用になったが、海軍の引込脚を採用したい(アメリカでTBDデバステーターが引込脚を採用した世界初の金属製低翼単葉艦上攻撃機という名誉をさらっていた)と言う思いと、中島の政治力が合わさり、中島の機体も採用された。


 海軍上層部の見栄のために中島の機体が一号、三菱が二号となった。これには三菱が文句を言ったが新用途新型戦闘機の単独指名という飴でごまかされた。


 中島の一号であるが、栄の熟成不足はいかんともしがたく量産機は光装備となった。これによりただでさえ二号に対して遅かったのに、更に四十ノットも速度が低下してしまった。

 二百馬力以上の馬力低下と光の直径の大きさとエンジンカウリングによる空気抵抗の増大が原因で、おまけに前方視界が悪くなると言うとどめを刺された。

 空中性能の低下も大きく、当然搭乗員からの評価は悪かった。


 あまりの性能低下に海軍も頭を抱え、結局防弾装備の撤去をして二十ノットの速力低下にとどめ空中性能の低下もある程度にとどめたのである。

 ただし、一線部隊で在る空母や航空隊への配備は無しとされた。主に九十六式以前の旧式艦攻に変わる訓練用の機体とされた。整備員が小型単葉機の引込脚に慣れるための訓練機材でもあった。屈辱の中島である。

 彼らは今後高性能エンジンの開発にさらなる力を入れるのだが、またやってしまうのであった。


 また、栄はアメリカの会社との特許係争になってしまい、負けた上に相手が怒り特許の使用許可が得られず海軍も採用を諦めた。今後小型機は全て三菱金星が採用されるのだった。三菱はきちんと特許の使用許可を取っていた。また独自特許や技術についても似てはいても類似では無いとの証明を取りアメリカとの技術上の権利争いは無かった。


 後年、金星エンジン装備の三号艦攻が出るのであるが、二号との性能差が無く採用されたものの生産はわずかだった。この屈辱をバネに十三試艦攻で傑作機と言われる機体を出すのであった。


 本邦初のカタパルトであるが、十試開発中に出来てしまったため両社とも中途で対応を迫られ機体強度の向上や取り付け方法の確認などで開発期間が伸びてしまった。


 二号艦攻も最初はトラブルの続出だった。水上機のカタパルトは経験があっても陸上機のカタパルトは始めてであった。

 計算上は大丈夫の筈だったが、思わぬ所に力が掛かり主翼がゆがむとかリベットが飛ぶボルトが切れるとかいろいろ問題が出た。

 それらを解決し空母に配備された頃には制式化予定の正和12年を過ぎ正和13年になっていた。

  

 正和13年に艦長は定期異動で軍令部に転出、作戦科に配属されるが空母に関する問題に対応させるためだった。軍令部は空母音痴が多かったのである。海が恋しかった。


 同じく飛行長は横空に定期異動。横空と言えば海軍航空の中心、栄転である。飛行時間がほとんど取れなくなったと嘆く。

 

 

 正和12年現在、海軍には4隻の空母が在った。赤城・加賀・火龍・雷龍である。


 しかし4隻では不足という声も大きかった。整備のためにドック入りすれば3隻になってしまう。早急な整備が望まれたが、軍縮条約でこれ以上大型空母を増やすことが出来なかった。


 海軍では正和15年の軍縮条約明けを見越し空母を一挙に10隻建造する計画を立てた。大型4隻、小型6隻である。


「君が火龍・雷龍の設計主務者か」


「そうです。艦政本部長」


「君は今手空きで研究要員だね」


「はい」


「では命じる。空母を設計せよ。排水量は二万四千トン隻数は4隻」


「拝命します」


 また空母だよ。うれしいね。火龍の時はほぼ制限無しで自由にやらせてもらったから良かった。艦政本部や赤煉瓦はこちら任せるという。ずいぶん評価されたな。まずは、艦隊にどの程度の空母が必要か聞きに行こう。


 軍令部に聞きに行ったら、まあ想像したとおりだが、出来るだけ積んでくれとなった。だから前作の龍驤になったのだろうと言ったら怒った。うん、やっぱり空母を知らない奴はだめだな。現場に聞きに行こう。


 赤城・加賀・火龍・雷龍の艦長や戦隊司令部の面々と話をした。やはり判っているな。


 飛行甲板は広い方が良い


 速力は三十ノット出れば良い。カタパルト装備なら二十五ノットでも可。大型空母なら最低でも三十ノット以上出せる機関が無いとそこまで加速するのに時間が掛かるからな。できるだけ馬力は付けてくれ

  

 飛行甲板の装甲が欲しい。出来れば八十番通常に耐える奴。あれに耐えられれば、大抵の部類は大丈夫な筈だ


 当たり前だ。あれ戦艦の主砲弾を改造した奴だぞ。金剛なら水平装甲を破られる奴だ


 艦橋を絶対左に付けるな。右だぞ右


 艦橋で思い出したが、今の艦橋だと戦隊の指揮は執ることが出来るが、将来艦隊の指揮を執る機会が出来ると手狭だぞ。俺は絶対そう言う機会が訪れると思う。だから大きめにしろ。高雄とまでは言わないから


 今の中央エレベーターは要らん。小さくて使いにくい。無しにして格納庫を使いやすくして欲しい


 どんな時にも舵一杯は取れるようにしてくれ


 飛行甲板の駐機スペースをもう少し広く出来ないか


 発艦と着艦を同時に安全に出来るようにいしてくれ


 おお、それはいい


 あの、皆さんの希望を叶えると今噂のA140並の大きさになると思います。さすがにそれは許可が出ないんでは


 A140を止めてこちらにその金を使えばいいだけだ


 そうだそうだ。おお、乗ってきましたな。もういい時間です。このまま水交社でも


 いいですな


 良し行こう


はい、連れて行かれましたよ。水交社。忌憚なき意見を聞かせてもらったが、ほぼ愚痴じゃ無いか。飲みたかっただけで機会を探していた所へ訪れてしまったようだ。



中島は散々です

エンジンはアメリカ製エンジンを日本が輸入したりライセンスしたりして分析されているのが気に入らなかったようで、1930年から1939年まではエンジンの相互提供をすることになりました。日本のエンジン技術水準を調べるのが目的ですが、日本もアメリカの進んだエンジン技術が欲しいので要求をのみました。

 

Gは航空関係から排除されました。

 

この後九十九、零と続けばいいな

新型空母はどうなるのか

新用途新型戦闘機>局地戦闘機です 十四試局戦かな


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